ヤクター


ヤクターには母親がいませんでした。


職人の父と2人で暮らしています。


真面目なのも無口なのも大きな体もそっくりな2人でした。


ヤクターはよくポリキヤースの家に遊びに来ました。


ヤクターの父は仕事で帰りが遅かったので、ポリキヤースの母はヤクターに手料理をたくさん振る舞うのです。


「こんなにたくさん食べてくれて嬉しいわ。

ポリキヤースはちっとも食べてくれないから。」


母が微笑むとヤクターは、はにかみながらお礼を言います。



ヤクターがいつも家に来るので、あるときヤクターの父が挨拶に来ました。


母はまたたくさんの手料理でもてなしたので、ヤクターの父はますます申し訳がなさそうにしていました。


それを見て、ポリキヤースが声を出しました。



「庭の!小鳥の巣、壊れてる。」



ヤクターの父は、どれどれと、庭から小鳥の巣箱を取ってくると


「今日は道具は置いてきたから、修理して持ってこよう。」


とポリキヤースに言いました。


母は、「まあ!助かるわ!」

と、大喜びして、また次から次へと皿を運んだので、ヤクターの父はきっと困っていたでしょう。





ポリキヤースはとにかく不器用で、絵を描くのは好きだけれど、とても上手には描けませんでした。


それに対して、ヤクターは繊細な素晴らしい絵を描く才能がありました。



ヤクターはポリキヤースの家や庭や小鳥達の絵をいくつも描いてはプレゼントしてくれました。


そのどれもが素晴らしくて、ポリキヤースや母は大喜びしました。


ポリキヤースはいつもヤクターの絵を褒め称えました。


「す、素晴、ら、しい!

こん、こんなに、素晴らし、い、え、絵を見たのは、こ、これ、が、が、が、は、はじ初めてさ!!」


興奮しているポリキヤースの言葉はいつもにも増して聞き取りづらかったが、ヤクターは、とっても満足そうに微笑んでいました。



数日後、ヤクターの父は、たくさんの小鳥の巣箱を持ってやってきました。


壊れた巣箱はもちろん綺麗に修理されていて、それ以外にも色んな小鳥の体の大きさに合わせたいくつもの巣箱を作ってきてくれました。


「気に入ったものがあれば使ってください。」


照れ臭そうにそんなことを言うヤクターの父は、やっぱりヤクターにそっくりだとポリキヤースは改めて思いました。


母はもちろん大喜びで、全ての巣箱を庭に設置してしまいました。



そして、それからポリキヤースの家のものが壊れるたびにヤクターの父が修理に来てくれました。


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