第6話 7歳 10月30日 開墾地を得る

 次の日の朝親父に起こされた。

「おい、早く起きろ。朝飯食べる前に村長の家に行くぞ」

「ふわぁ」

「村長が野良仕事に出る前に会わないと。そのあとだとなかなか会えんだろうが」

「わかった」

 そして、朝早く親父と家を出ると道中サヒットと彼の年老いたお父さんにも偶然合流し、四人で村長の家に行った。村長の家は村の普通の家と同じくらいの大きさだが、違うところは前庭がかなり大きく取られてるってとこだな。この広さなら軽く五百人は集まれる広さだ。

「話はわかった。ならば、あそこの土地の最初の開墾者はサヒットとノックスだの。」

 ペッと、村長が右手のひらに唾を吐いてその手を差し出してきた。俺もサヒットも手に唾を吐いて、それぞれ村長と固く握手し、「ありがとうございます」と礼を言った。非衛生的とかいちいちうるさいぞ。

「略式だがこれであの土地はお前さんたちのもんだ。しかしあそこでの開墾か。かなり遠いよのう。それにいまさら儂が言うのもなんだが、あの土地自体も正直言ってギリギリだと思う。まあなんかあれば村から若いもんが駆け付けるが、ここからだと走っても十五分から三十分はかかるぞい」

 なんでそんなに村長の大きな牙が気になるんだ。片っぽしかないのは年だからに決まってるだろ、いいから静かにしてくれ。

「そこは俺もサヒットも分かっています」

「まあ、俺は当分は通いでいいと思ってますんで」

「そうか。あとこれはあんまり言ってはないんだが、去年王子港から来た役人との相談の結果な、もしあの向こうに新しい村なり町なりできた暁には、あの土地はもしかしたらそっちの管轄に入るかもしれん。それでもいいか。」

 俺たちは顔を見合わせてから、頷いた。

「それでもいいです」

「問題ないです」

 そんなのいったいいつになるかわからないじゃないか。大体そのさらに向こうにある土地で虎やら熊やら退治してからの話だろう。あの辺の丘に巣くってた熊とかを退治するのがどんなに大変だったかは親父からは散々聞いてるし。新しい村なんて話は俺たちの子供か孫の世代の話だわ。

「村長、それよりもノックスはあっちに住みたいので井戸を掘ったり家を建てる手伝いを」

 親父が最後まで言い終える前に村長が手を挙げて遮る。

「わかっておる、井戸掘りと簡単な家を建てるのと農地の整備などは人が集まる日を決めないとな。引っ越しはそれからだの。あと知っておろうが、税は二年後、三年目からはキッチリ払って貰わねばならん。ちなみに結婚はいつにするつもりだの」

「俺は結婚式は家ができる前に実家で済ませようと思ってます」

「出費が重なるぞ、ワルクよ」

「そのくらいの蓄えはあります」

 どのくらいになるってか? そうだな、全部で恐らく牛を二頭潰さないとな。お金で払うんじゃなく牛肉の現物支給ってやつだよ。家には牛さんが五匹いるからなんとかなるだろう。親父もこれを見越して育ててるからな。昨日牛の世話を俺と一緒にしただろう。乳牛? 牛乳なんか昨日の飯に一切出なかったろ。

「ならこれでいいのではないか」

 そして、このあと細々なことを全て決めていたら朝食の時間が無くなってしまうので、サヒットの土地には井戸と一人用の小屋を建てることを決めて、そのあと次に村長と会う日を決めてから村長の家から自宅に帰った。

 その日は普通に農作業だよ。農民は晴れの日は働くんだよ。

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