第6話 揺らぐ思い

もう何も考えたくなかった。

本山先輩の口から「好き」か「嫌い」かの2択が発せられると思っていた。

だが、返答は「分からない」だった。


もし「好き」と答えてくれたなら、これからも付き合っていくつもりだ。

もし「嫌い」と答えてくれたなら、別れようと思っていた。


結局、俺はこんなことも一人で決められない。俺から告白しておいて・・・


俺は自分の情けなさに失望し、段々と考えるのを辞めたくなった。


半日ほどゲームなどで時間を潰していたが、頭の中は本山先輩のことでいっぱいだ。


「どうしようか・・・」


独り言を呟き、付き合おうか迷っていた頃。またもや脳内である言葉が浮かんだ。


『自分一人で解決できないのなら、人に聞けばいい。』


そうだ!聞こう。恋愛経験が豊富な友人から聞けばいいのだ。

彼女を振り向かせるにはどうすればいいのか。

どういったデートをしているのか。

連絡の頻度は。内容は。

もしかしたら、俺が異常で、本山先輩のように数日間も連絡が無いのが普通なのかも知れない。


「よし!そうと決まれば田辺に相談しよう。」


田辺とは同じアルバイト仲間の女性だ。田辺には彼氏がいる。サークルの先輩のようだが、付き合って1年くらい経つそうだ。田辺に聞いてみよう。

俺はすぐに電話をかけた。


「はい。山田?どうしたの?」


「あー田辺。ごめんな急に、ちょっと相談したいことがあるんだけど。」


「ん?珍しいね。山田が私に相談なんて」


「そうかな?でも俺一人じゃ解決できそうに無いんだ。話聞いてくれない?」


「うんいいよ。でもね山田。答えを出すのは自分だからね。それだけは忘れちゃダメだよ。」


「わかってるよ。電話でもいいんだけど、出来れば会って話せないかな?」


「わかった。じゃあ大学のどっかの教室で会おうか。」


「ありがとう。お願いします。」



後日、俺は田辺と、大学の214号室で話し合うことになった。

田辺は時間通りに教室に来てくれた。その顔は妙にワクワク?しているように感じた。


「ごめんな田辺こんな風に呼び出して。」


「いや大丈夫。それより相談て?」


「実は・・・」


俺は付き合っている彼女と上手くいっていないこと。どうすれば改善されるか。田辺はどのように付き合っているのかなど、聞けることを片っ端から聞いた。

ただ、本山先輩の名前は出さなかった。


「なるほどね。その彼女さんにも問題はあると思うけど、それ以上に、山田。あなたに問題があると思う。」


「うん。」


「あなたナヨナヨし過ぎじゃない?頼りない男なんて全く魅力ないと思うけど。第一、そんな状態で付き合ってお互いのためになる?私だったらすぐ別れるわよ。」


「そうか。」


俺は決心した。本山先輩と別れようと。

このまま付き合い続けるのは俺のエゴだ。

別れよう。それがお互いのためだ。


「ありがとう田辺。決心がついたよ。」


「はいはい。山田。あんたあれね、恋愛のこととなると周りが見えなくなるタイプね。」


「・・・。そうかも。」


「しっかりしなさい。後悔のないようにね」


田辺に相談して良かった。今夜電話で告げよう。別れようと。



俺は家に着いてから本山先輩に電話をかけた。


「あっ。本山先輩。ちょっと伝えたいことがあるんですけど。」


「うん。ちょうど私も伝えようと思ったことがあるの。」


「えっ。えっとなんですか?」


「私、山田君のことが好き」

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