第5話 バイト先で
「大学に行かないと・・・」
朝起きるともう2限目が始まりそうだった。今日は2限と4限のみ。
それが終わると夜はバイトだ。本山先輩と会える。
「大学か・・・面倒くさいな。一日くらい休もう。この時間を使って本山先輩と付き合っていくか考えよう。」
俺は大学を休んだ。と言うのも、頭の中が本山先輩のことでいっぱいで何も手につかなかった。
俺はそれから自問自答をし、自分の本音を出そうとした。
「まず本山先輩と付き合っていて俺は楽しいか?」
「楽しいことよりも辛いことの方が多い。今のところは」
「もし別れた場合、俺は後悔するか?」
「後悔すると思う。けど、このままの気持ちだと何も手につかないし、どんどんダメになる。けど、別れたくは・・・」
「わかった。今日のバイトで本山先輩に聞こう。それが唯一の解決策だ。」
俺の中で答えが出た。
19時になった。バイトの時間だ。
「よし。本山先輩に聞こう。俺のことが好きかどうか。それだけでいい、その返事があれば俺は答えを出せる気がする。」
俺は時間ぎりぎりになるように調整し、18時55分に入店した。
本山先輩は30分早い入り時間のため、既に制服に着替え、働いている。
俺は本山先輩が通常通り仕事をしている姿を見て、安堵した。もしかしたら、俺のように付き合うことに関して色々悩んでいるのではないかと心配していたのだ。いや、むしろ悩んで欲しかったのか。
「おはようございま~す。お願いします。」
「あっ山田君おはよう~。今日もよろしくね!」
「もちろんですよ。今日は忙しそうですか?」
「う~んどうかなぁ。今のところオーダーはあまり入ってきてないし、忙しいことはないかも。それより、大丈夫?目の下クマ出来てるけど」
「えっ。クマ出来てます?結構寝てるつもりなんですけどね」
「そう?ちゃんと寝ないとダメだよ~」
なんだろう。さっきまで悩みに悩んでいた俺が恥ずかしく思えるほど。本山先輩はいつも通りで明るかった。
ただ、俺はもう迷いたくない。こんな状態で付き合うのは本山先輩にも失礼だ。
どこかのタイミングで切り出そう。俺のことが好きかどうか。
結局勤務時間中は話すタイミングが無かった。そのまま勤務を終え、告白をした更衣室で着替えていた。
「いや~お疲れだね~あれから10名の団体が来るとは思わなかったよ~」
「そうですね。まぁ大学生はパァッとはしゃぎたがりですから」
「気持ちは分かるよね。けど、私は家でゲームする方が好きかな(笑)」
「ははっ。本山先輩らしいですね」
他愛も無い会話だ。今は店に二人しかいない。ここしかない。聞こう。
「本山先輩。」
「うん?どうかした?」
「俺たち付き合ってますけど、俺のこと正直好きですか?」
「・・・。」
本山先輩は黙ってしまった。告白の時とは違う空気感の沈黙が流れる。
「本山先輩。すみません。でも、どうしても知りたいんです。」
「山田君。ごめんね。」
「はい。」
ダメだったか。でもこれなら別れやすいし、決心もつきやすい。
俺は不思議と安堵している?
「好きって言うのがどんななのか分からないの。」
「えっ?」
「山田君のことが好きかどうかじゃあ無くて、好きって言うのが分からないの。」
「・・・。」
俺は何も言えなかった。
紛らわすように会話を挟み、店を出た。
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