第3話 意識の違い
告白の返事をもらい、互いに連絡を取り合い充実した日々を送っていた。
付き合ってからもバイト先で度々会うので、会えなくて寂しいという思いは無かったが、2人でどこかに行きたいという思いは強くなっていた。
俺は連絡を取り合ってから1週間ほど経ち、本山先輩と食事の約束を取ることにした。
「明日のお昼空いてます?一緒にご飯行きませんか?」
今思い返してもそれほど不思議な文では無いように思う。返しの返事は
「いいよー行こー。どこ食べに行く?」
「ごめんー。その日友達とご飯行く予定だし、別の日にしない?」
の、どちらかだと思っていた。しかし、今まで付き合った経験の無い本山先輩の返事は俺の想像を遙かに超えたものだった。
「何かお昼食べながら話したいことでもあった?」
だった。
別にこの返事が悪いと言っているのではない。ただ、彼氏に対しての反応がこれなのか、、、とショックを受けた。しかし、考えてみれば、本山先輩は付き合うということが初めてだし、彼氏彼女になったからと言って、急に甘えてきたり対応を変えるのには違和感がある。
俺は今、告白して勢いでOKをしてくれたのかも知れないということを理解したし、また、本山先輩が俺のことを好きになってくれた上でのOKでは無いことも分かった。
その返事をもらい、俺はなんとか本山先輩に聞きたいことを探し出し、割と時間に余裕がある日に2人で食事をする約束をすることに成功した。
「これって本当に付き合っているのか?」と何度も思ったが、これから徐々に本山先輩に好きになって言ってくれるよう努力しようと自身の励みにすることに決めた。
~デート初日~
ワックスで髪を整え、いかにもデートっぽい服装で俺は大学の校門にいた。
待ち合わせ時間ぎりぎりで彼女の声を聞いた。
「ごめんー。授業が長引いちゃって、待った?」
「いや大丈夫ですよ。俺が早く来すぎただけなんで、それより、急がせちゃいましたか?すいません。」
「ううん。なんで山田君が謝ってるの(笑)。遅れたの私だし(笑)」
「そうですね(笑)じゃあ罰としてなんか奢ってもらいましょうか」
「ええー嫌だー(笑)」
合流して他愛も無い会話をしながら、俺たちは近くのファストフード店まで歩いて行くことにした。
しかし、LINEで連絡を取っているときとはえらい違いがあるなと感じた。LINEでは正直「冷たい」と感じていたが、実際に会うとそんなことは微塵も感じない。
後々になってわかったことだが、本山先輩はこまめに連絡を取るのが苦手らしい。返しの文章を考えるのが面倒くさく、頻繁に連絡を取る人は俺と幼なじみくらいだそうだ。そういう人は一定数いることは前々から知っていたし、それに関して怒るのは違うと思う。その人にはその人の連絡の頻度というものがあるし、「付き合っているから」といってそれを強制したくはない。その点の理解はあるつもりだ。
会話をしながら、歩くこと10分ほどで目的の店に着いた。
互いに食べたいものを頼み、会計は自分の食べるもののみを互いに支払い、頼んだものを貰って席に着いた。
「いやぁそれにしても暑いですね。まだ7月入ったばかりなのに」
「本当にねー、私暑いの嫌いだからこれからの時期は嫌だなぁ」
「俺は暑いの好きですよ。というか夏休みがあるから好きなのかも知れませんが」
「私も暑いのは嫌だけど、夏休みは好き(笑)、学生の特権だよね」
「夏休みなんて学生のうちだけですからね。とりあえずあと数ヶ月授業頑張りましょ」
「うんー。はー長いなー早く夏休みこないかなぁ」
「何かしたいことでもあるんですか?」
「特にこれといってあるわけじゃないけど、何だろ1日中ゲームとかしたいかな(笑)」
「1日中ゲームかぁいいですね(笑)1日に9時間ぶっ通しでゲームする人とかいるじゃ無いですか。あれって才能だと思うんですよね。」
「えーそんなの余裕だよー(笑)」
本山先輩はアウトドア派では無いらしい、まぁ確かに肌も白いし、運動が好きというタイプには見えない。そういうところを包み隠さず話してくれる本山先輩に俺はグングン惹かれていった。
いやだめだろ。俺が本山先輩を惹きつける何かを見せなきゃいけないのに。
そう感じていた矢先、本山先輩からある質問が。
「そういえば私に聞きたいことって何だったの?話しに夢中で忘れちゃってた(笑)」
そうか、俺にとってはデート初日だが、本山先輩にとっては用事の一つの認識なのだ。
俺は本山先輩との間に大きな壁を感じた。それと同時に好きな人が目の前にいるのに、「寂しい」と思った。
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