第3話 嵐の前の静けさ後編

対戦車スナイパーライフルによる銃声が響き渡る。

しかし当たろうが構わず進んでくるキジュウ、まるですべてを飲み込む濁流のようだ。

キャタピラや大型のタイヤに当たると動きを止めるが、それでも戦闘が始まって4,5台しか止められていない。ネームドのキジュウに至っては車体にすら当たらない。

ネームドなだけはある。

そうこうしている間に迫撃砲の射程距離にはいり、隊員が砲撃を開始した。

爆撃には耐性が低かったのか、ネームドと一緒にいたキジュウ以外は全部破壊され残るはネームドと随伴機の3台だけとなった。

「あぁ!!??んだよ!雑魚どもがやられてんじゃねえよ!?クソが!手前等はこいつで黒焦げにしてやるぜぇ!!ギャハハハハハ!!」

そう言うとキジュウから火が噴いた。

火を噴かせながらキジュウ「サラマンダー」が随伴機と共に突っ込んできた。

「総員よけろおおおお!!」

そうSUが叫び全員が回避行動を取った。しかし、隊員の一人であるコングが火に包まれた。

「ぐああああああああ!!」

彼は火だるまになりながらも必死に火を消そうと砂の上を転がる。しかし、他の隊員が手を貸そうにもサラマンダーが近くにいる状態では誰も手を貸せない。

コングが火で苦しんでいる中、SUは判断を下す。

「っ!お前ら!今はキジュウを優先だ!!火炎放射器とキャタピラを優先して狙え!!」

隊員達は指示に従いキジュウの破壊を試みる。

「クソが!これでもくらえ!」

そうアインズがグレネードランチャーをキャタピラに向けて撃つ。サラマンダーとは別のキジュウに当たり、キャタピラが破壊され動きを止めた。

そのキジュウに対しハック、ディップがキジュウに飛び乗り銃座の砲手とドライバーの息の根を止めた。

その間にもサラマンダーは火を噴き続け隊員を燃やそうとする。

隊員達は上手く立ち回り、何とか火を避ける。

もう一つのキジュウを破壊するべく今度はハックがC4を使ってキジュウを横転させる。横転したキジュウのドライバーをアインズが引きずり出し、頭を握りつぶした。全員が残るサラマンダー一台を見る。

「こいつがラストだ!絶対破壊するぞ!!」

SUがそう大声で叫ぶ。しかしそれをあざ笑うようにキジュウは火を噴いて隊員を近寄せない。

「おらぁ!やれるもんならやってみろよ!!どうせ近づけねえだろぉ!?」

やたらめったら火を噴き続ける。

隊員が上手く近づけないままだったが、いきなり爆発がサラマンダーを中心に起こった。

「やったぜぇ!!ざまぁみろ!!」

何が起きたかわからないまま全員があっけにとられるが、一人レンチが大声をあげて喜んでいた。

彼の手を見ると作戦開始前作っていたチェーンマインの一部が見えた。どうやらチェーンマインを使ってサラマンダーの機動力を完全に無力化させたようだった。

隊員がサラマンダーに群がりドライバーを始末しようとドアをこじ開ける。

「おい!お前ら!そいつは殺すな!捕まえろ!ジョン、マイク!コングの様子を見ろ!」

「了解しました!」「おい、コング大丈夫か!」

「この野郎が!!簡単には死なせねえからなクソが!!」

「隊長!!コングはまだ息があります!!意識はないようですがまだ死んではいないです!!」

「本当か!?すぐ後方のメディックに診せるんだ!急げ!」

「「了解!!」」

「隊長!ご無事でしたか!」

「おお、ウィング良く戻ってきてくれた。そっちも大丈夫か?」

「ええ、何とか脱落者は一人も出さずに排除できました」

「それは何よりだ、悪いが補給班に連絡をいれてくれまだ色々必要になるはずだ」

顔を険しくして言う。

「了解しました。至急連絡します」

「そいつには話がある。連れてこい」

「へへへ、俺が情報を喋ると思ってるのか?」

「一つお前は勘違いをしている。俺はお前から情報を取るために生かしているんじゃない。俺はお前にコングが受けた苦痛を違う痛みで与えようとしているだけだ。何、好き勝手色んな事を叫ぼうとも誰も助けは来ないし俺はやめるつもりも無い。おい、ハマーお前の道具渡してくれ。」

「おい、おい....マジかよ!ふざけんじゃねえぞ!お前らこいつを止めろよ!!こんなの違反行為じゃねえのかよ!!」

「違反行為?なんだっけそれ?」「いや、知らねえぞ?」「俺は隊長に道具渡しただけだしな」「俺は周囲を警戒しているから何も見てないな」

「さて、お前はどんな声で鳴いてくれるんだろうな?」

「あぁ...ああああ!!やめろ!やめてくれえええ!!」

あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!

死の砂漠に一人の叫びが轟いた。

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《こちらHQ、黒備え大隊長信玄殿より直々の指令です。「先ほど来ていたのはまだ偵察隊であり、本隊はこれから侵攻してくる。鉄鬼衆は遅滞戦術にて敵の足止めを行え。敵が抑えられている所を横から他の天使教団や、企業の部隊が攻撃を行い殲滅する。殲滅が完了したらそのまま鉄鬼衆は残党狩りに移れ」とのことです。補給部隊が向かってますので弾薬等を補給後作戦を開始してください。敵の進行ルートと戦術の展開地点をそちらに送ります。ご武運を》

「お前ら、悪いな。さっき言った本番だがどうやら前座だったらしい、これから本隊が来るってよ。そんでもって次は遅滞戦闘だとよ」

「マジかよ隊長...」「これはマジで辛いなぁ...」「冗談きついぜ...」「よりによって遅滞戦闘か...」「今以上に死ぬ気でやらねぇと不味いな...」

口々に不満をぼやく。先ほどまでの戦闘でも相当疲弊しているのにさらに遅滞戦闘をこれから行うからだ。

「仕方ねえだろ、大隊長からの命令だ。補給班から物資受け取ったら移動だ。準備して置け」

「了解しました。隊長」「イエス、サー」「腹減ったぜ...」「こいつでも食っとけ俺の余りだがよ」

補給班の車が上げる砂ぼこりが近づいてきた。

「さて、生き残る為にやるか」

そうSUは口に出し自分も補給をしに行った。

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