第2話 嵐の前の静けさ前編
《こちらHQ!死の砂漠外周部にて敵勢力を確認!!カーマインを随伴させたキジュウを確認!!絶対にマーレ地区への侵入を阻止して下さい!》
装備が整いマーレ地区外輪部から数キロ離れた所で待機しているとオペレーターの結月から報告が入った。
「こちら第一小隊!了解した!お前ら聞いたな!来るぞ!長距離狙撃用意!ドライバー、若しくは足を狙え!一番初めはキジュウを狙うんだ!絶対あいつを近づけるな!」
対装甲用炸裂弾を装填してある対戦車スナイパーライフルを装備している観測手以外の隊員22名が構えた。
「俺はドライバーをやる」「じゃあ俺はタイヤだな」「貫通できるだろうしエンジンを狙う」「じゃあ随伴のカーマインでもやる」
口々に狙う相手を決める。
「観測手!」
「上に5クリック!右に3クリック!」「上に2クリック!左に4クリック!」「上に1クリック!右に1クリック!」
「対象確認!」
「「「「完了!!!」」」
「総員.....撃てぇ!!!」
轟音が鳴り響く。スコープ越しに敵が音に反応したのが分かった。しかし音の正体が分からないのか回避行動などをとる様子が無い。そしてドライバー数人の胴体や車のタイヤ、カーマインのエンジンに文字通り風穴が空いた。しかしキジュウのエンジンには弾がはじかれたのか、貫通しなかったのか何も起こらなかった。
「おいマジかよ!?戦車でも貫通する弾だぞ!?」
そう叫んだのは狙撃兵のホロだった。まだ隊に入って数年だが狙撃兵故、その弾の威力は知っている。
「大戦争以前の機械だぞ!?ありえない訳ないだろ!」
そう反論したのはドットだ。慎重な性格の彼は以前、他の任務にてキジュウを見たことがあったので可能性を考えていてのだろう。
「黙ってさっさと残りを撃て!奴さん回避行動をとってるから俺らの腕だけが頼りだ!」
ドットとホロに指示を出したのがサイトだ。この隊の狙撃手として最年長のベテランだ。腕が一番上手いそして後輩思いの良い奴だ。
狙撃手以外の隊員がある程度撃つがやはり距離もあって当たらない。代わりにサイト達は偏差射撃を上手く行い敵を徐々に減らしていく。
カーマインのドライバーに弾が当たり、そのまま走行していたカーマインが突然爆破した。
「まさか....」
それを見たサイトが嫌な予感を覚えた。
「隊長!!あのカーマインは先に潰すべきです!あれは運転手倒しても爆発する奴です!!」
「本当か.....。サイトとドットはカーマインを優先して狙え!!他はそのままキジュウを狙え!!」
「「「「「了解!!」」」」」
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狙撃開始から数十分が経ち、音が鳴りやんだ。
「各自状況報告!!!」
「前方異常なし!」「作動しているカーマインは確認できず!」「キジュウは動作停止中!」
「死傷者及び負傷者ゼロ!」
「.....HQ、こちら鉄鬼衆第一小隊先ほど確認した部隊は殲滅した。念のためドローンによる周囲の確認を要請する」
《こちらHQ了解しました。ドローンによる偵察を行います。第一小隊はその場で待機、補給部隊と対空用の銃座を送ります。医療班は必要ですか?》
「了解した。医療班の必要なしだ。お前ら!補給部隊と対空用の銃座が届く!4人態勢で周囲の警戒を行え!マッドとレンチは届く銃座の固定及びMGのセットだ!今のうちに貰った携帯食料を食っておけ!敵はまだ来るぞ!」
ほどなくして銃弾等を持ってきた部隊が来た、それと一緒にカルマ、クロハ、アゲハの三人も来た。
「よう、さっき言ってた銃座と念の為迫撃砲を持ってきたぜ。すぐアゲハとクロハに設置させる」
「カルマか、助かる。マッド!レンチ!お前らも手伝え!」
「了解しました」「OK!隊長!」
「他は周囲を警戒しつつ、補給だ!急げ!」
「「「了解!!」」」
先ほどの狙撃で銃身が熱を帯び水で冷やす者、カルマから貰った携帯食料で腹を満たす者、それぞれが少し一息つけると思った瞬間だった。
《こちらHQ!!敵勢力が2キロ離れた地点で突如地面からの出現を確認!!キジュウです!!数は20!!そのうち5台は小隊がいる地点を迂回しています!!》
「クソっ!何かおかしいと思ったらやはりか!!」
「隊長!指示を!」
「ウィング!お前は8人ほど連れて迂回している5台をやれ!!残りはこっちでやる!そっちが終わり次第こっちに再度合流だ!!」
「了解!!ブラキ、アックス、ドット、ガイル、ハリウッド、エルヴィス、グラップ、スタリオン!!お前らはこっちだ!!急げ!!」
「「「了解!!」」」
「残りは現作業を中断し、キジュウを破壊するぞ!!補給部隊!!お前らはカルマ達を安全地点まで護衛だ!」
「まって!この銃座だけでも設置する!!」「わ...私も手伝う...!」「早くやるぞ!」
そうアゲハ、クロハ、カルマが叫ぶ。
「補給部隊!お前らはそのまま残ってアゲハ達を守れ!!」
「了解した!!だが早く頼むぞ!お世辞にも良い装備ではないからな!!」
敵が約1.5㎞地点に到達した辺りで目視で他と動きが違うキジュウを確認した。
「おい、マジかよ....」
そうSUが零すように言った。
「お前ら!一番奥にいる奴は絶対通すな!!ネームドのキジュウだ!!」
隊員たちに動揺が走る。それと同時に銃座の設置が完了した。
「設置完了しましたよ!」
「分かった!補給部隊!!行け!!」
「ご武運を!!」
「お前ら!!気を引き締めろ!!こっからが本番だ!!絶対敵を通すな!!来るぞ!!!!!」
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