第3話 魔法とは。
さてさて時は夕方。
....そう、図書館に行く時間だ。
俺は兵士の方々に声を掛けながら図書館の扉とおぼしき場所までたどり着いた。
王城の図書館何ていうからもう少し扉もどでかいもんだと思ってたけど、そうでもない様子。
178の俺が見上げても中々に余裕がある程度には大きいが、鍛えてもいない人の手で開けられるくらいには軽かったし、わりと普通の扉だ。
よくよく見ると繊細な柄などが彫られているが........どうにも神話や物語の類いらしい。
この国のことなんてこれっぽっちも分からないが、何となく小さな不穏さを感じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「........!やぁ、ヤナギ君!待っていたよ」
図書館に俺が踏み入るなり、前方から嬉しそうな声が聞こえた。お姉さんだ。
「ええ、ちゃんと来ましたよ。........それで、ステータスについて教えてくれるんでしょうね?」
馴れ馴れしい?敬語を使え?んな難しいこと言われても。
お姉さん馴れ馴れしい方が好きそうだし、俺らは呼ばれた立場。妙に態度が恭しくてもあれだろう。
一応考えたが故の馴れ馴れしさだ。
「勿論!........それに君は特別だからねぇ。他は一応勇者や騎士、魔導師の職を引き当てたようだけどヤナギ君は別格なんだよ。だって、何せ世界の勇者だもの。」
後半になるにつれ俺の方に顔を近付け、ステータスの時同様に耳元で囁かれる。
それ変な気起こしそうなんでやめてくれませんかねぇ!?
「だから、その、世界の勇者って何なんすか。お姉さん、知ってるんでしょ?だったら早く教えてください。普通の勇者との差とか。それに、役職のあれ。候補とか付いてたけど明らかに俺が次の討伐対象なんだけど???」
「落ち着いて、落ち着いて。順を折って説明して行くからねぇ?不安な気持ちは分かるけど、一先ずは私が、ヤナギ君を守ってあげるからなにも心配は要らないよ。あと私のことは出来れば師匠とか先生とかで呼んで欲しいかなぁ」
ふわふわと微笑まれても安心できねぇです、お姉さん。
そして師匠呼び諦めてないんすね、でも生憎お姉さん呼びするって心の中で決めたので師匠呼びはしません。
べっ、べつに圧の籠った笑みで言われてもしてあげないんだからね!(怯)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「....気を取り直して、私はメヒティルト・ヴィテンシュタイン。この王国で雇われた魔導師だよ。そこら辺の騎士や魔法使いより断然強いと自負してるし、教えるのも下手じゃないと思うから期待してて。長くて呼び辛いだろうけど朝方言ったように師匠とか先生とかで呼んでくれれば反応するからよろしくね~!」
いやもう俺の中で呼び方はお姉さん一択なんでそこんとこよろしくね~、です。
「顔に出てるよヤナギ君。ま、お姉さん呼びでもいいんだけどねぇ。さてさて、君の役職について、というよりも魔王についてのないしょ話から始めようか」
ふわふわと微笑みながらも声は真面目に、お姉さんは語り始めた。
昔々、あるところに生まれもって強力かつ膨大な魔力を持った青年が生まれました。
青年の種族は魔神族、魔神様により作られたとさせるとてもとても強い種族です。
生まれてまもない赤子は膨大な力を制御できず回りの大人を、子供を、町までもを巻き込んで魔力爆発を起こしました。
幸いにも被害者はでなかったものの、被害はとても大きく、周辺の建物は壊滅状態。
なにより恐ろしいのはこの状況を作ったのが他でもない、生まれたての赤子だということ。
大人は赤子を恐れはしましたが、その場で殺すなんて事はせずに、当時の魔王城に連れていきます。
魔王城ならば赤子をどうにか育ててやれると思ったからです。
ですが当時の魔王城、魔王の席は空席。
赤子を預けられた魔王城の代理責任者、執事のフェルヴェは考えました。
「この赤子を次期魔王候補として育てよう」
魔神族にとっての魔王とは魔力で選ばれる存在、故に赤子は選ばれた。
先代の魔王を最後まで見届けた老齢の執事によって。
「これが今の魔王の生い立ちだよ、ヤナギ君。彼は立派に育ったけど今も魔王城で生活しているようだ」
「ちょ、ちょっと待ってお姉さん。その生い立ちの話が俺に関係ある?今の話の流れだと魔王候補って魔力の強さで決まるもんなんでしょ?あと、その魔神族とか言う種族から。」
へるぷみー、せつめいぎぶみー。
人の国で魔王の話をするのは難しいとは思うけどもう少し俺にも分りやすく教えてよお姉さん....理解力ないの許して....。
「君の魔力はまだまだ弱いけど、育てれば私をも越える魔力量になると私は見ているし、実は魔王に種族なんて関係ないのよ。たまたま元魔王が魔神族だっただけで歴代には人も獣人もいたわねぇ」
魔王選別めっちゃ自由じゃん。
「でも自由ってほどでもないの。何故ならこの世界での役職はこの世界の神様と周りの人の認識で決められるものだからね。」
周りの認識....?
確かにそれならスキルは納得できるけど何で俺が魔王候補に。
それに世界の勇者と勇者の違いがわからない。
困惑した表情を浮かべてうんうん唸っていると、それを見かねたお姉さんが説明を施す。
「世界の勇者、それは現魔王も歴代魔王も持っていたとされる称号なの。言葉通り、世界を救う勇者様。此方は神様がそう認識したから付けられる称号。そして、勇者は人族がそう認識した相手に付けられる称号と役職。スドウ君、だっけ?あの子は役職も称号も勇者のようだけど、元の世界でも勇者のようだったのだろうね。」
うぅん、分からん。
「お姉さん、そこの差は分かった。でも俺が選ばれた理由とかが全く見えてこない」
「そこはお姉さんにも分からないなぁ~。だって神様の考えなんて人には分からないもの。君は魔王候補で、世界を救う力がある。それを支えるのが私の仕事だからね。」
自称強いお姉さんの言葉の説得力がかなり落ちたが、ないしょ話と言っていたしそれなりに大切な話だったんだろうなぁ。でも理由が分からないからには魔王候補なんてやってられない。
俺は部屋の墨でのんびり窓の外を眺めるのがしょうに合ってるタイプなんだ。魔王なんて大それたものになる気は更々ない。
「君が魔王になりたくなくても、他の子と違って君は特別なんだ。候補になった時点でフェルヴェ....魔王城の執事の持つ魔法具と現魔王には通達が行っていることだろう。出来ることならば変わってあげたいけれど、女性だと魔王にはなれなくてね、私は........ああいや、なる気はないしこの国に雇われているから魔神国の方にもいかないんだけどね!兎も角、私は君を全力でサポートしていくからまずは理由探しからでもしてみよう?どんなときも、私が支えてあげよう」
美人さんからの誘いは断れない、とかではなく単純に理由は知りたいと思った。
何で俺が。
何で須藤じゃないの。
それにお姉さんの話にはこの国が倒そうとしている魔王の悪い話は一切混ざっていなかった。語るときの声色もどこか懐かしそうだったし。
元の世界に戻ったとき、彼方では数日経ったかどうかくらいに調節してくれると聞いた。なら暫くの間この世界で理由探しをしてみてもいいんじゃないかと、そう思った。
だがそうなってくるとますます頭の中が何故、何、で埋め尽くされる。
魔王がいるからエンヴィール王国の辺境は危ないと王女様は語った。
魔物は魔力溜まりから出来るのだと謁見の間で説明を受けた。
もしかして魔王が直接的に害をなそうとしている訳じゃない....?
わからない。高校生のがきにはわかんねぇよ。
もしも魔王が悪くないと仮定しよう。
なら、ならさぁ、本当の意味で、
この世界の魔王って何なの、お姉さん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます