こうべを垂れる柊木要
~頼~【上】
「お、
「おっさん、
車に乗るや否や、秋はすぐに言った。
「お?
「ごめん、
「あぁ、
須賀は車を走らせる。ふと、
(あぁ…すぐ
さらに秋は、どこか〝スッキリした顔〟をして
「
「すごく
「そ、そうか」
「
「あぁ…そうなんだな」
「ねぇ、
「少なくとも、死んだ事にはなってねぇ。だが、生きてる事にもなってねぇ」
「生と死の、
「なんつうか、死んだ事にはなってねぇが、死んだ人のように
「それは白魔も同じ?」
「同じだ。いや、今は
「だが、もし西威の存在が世に知れ渡ったら、
「
「あぁ。西威がテレビに映るような派手なマネ、しなけりゃいいんだがな」
「なぁ、秋」
「なに?」
「あんな
「今度、じいちゃん連れて、母さんの弁当、持って行く約束した。おっさんも来ていいって」
「お、そうか? いいのか?
「東子だって、じいちゃんがひっくり返ってる
今の秋のセリフでスッキリした顔の理由がわかった。この純粋すぎるくらい
「よし、それなら俺は、かみさんのアップルパイ
「あ! あれ、また食べたいな!」
「うめぇよなぁ…! アレだけはうまく作るんだよな…アレだけは…」
「他の料理はダメなの?」
「かみさんのカレーを食った時、俺の長男、なんて言ったと思う?」
「ん?」
『母さん。アップルパイだけ作ってくれれば、あとは俺、ご
(
須賀は
これからの秋の
秋の
暖かい気持ちに満たされながら、ハンドルを
*
数分後。
車は
「いらっしゃー、秋!?」
「急に
「い、いえ、そんな…あ、よかったら上がってください。今、お茶を出しますから」
秋は須賀の顔を見て、少し気まずそうな顔をした。
「おっさん…ごめん。できれば
「お、わかった。それなら、澪さん」
「は、はい」
まん丸な
「秋だけ、中で要さんを待たせてやってもらえないか?」
まん丸な
「あ、え、はい、どうぞ」
澪が秋を
「どうしたの急に。何かあったの?」
「うん、まぁ、色々と…」
この時、澪はなぜか、
秋に抱きつきたくなった。
誰かに秋をとられる。
そんな気がした。
すごく、した。
お茶を運んだお
それを胸にギュッと押し付ける。
口はへの字に。
目が熱くなる。
少し涙ぐんだ目。
その目は秋を見る。
「ん?どした?」
秋は自分の顔に何かついてるのかと思った。
「な、なんでもない…」
「あ、お茶、ありがと」
秋はそう言って、やたら
(なに!? 今の笑顔!? こんな顔、見たことない! 私の知らないところで何かあった、そう、絶対そう!)
澪の女の
「服、どうしたの?」
「え?」
「え? じゃないよ。服なんで汚れてるの?」
「あ、あぁ…。えと、道で転んだ」
(わかりやすっ! なんだこの男! 隠すの下手すぎる! 道で転んだら土とかつくでしょ! 土! でも何があったのか何故かすごく知りたくない…! 知ったら私、多分どうかなるかもしれない…)
「そ、そーなんだーへー、それは大変だったねー」
澪はそう言いながらさっさと居間から出て行った。一度、居間は静まり返る。秋は、お茶をすする。するとどこからか
「おや、秋くん! どうしたんだ?」頭をバスタオルで
「そんな、かしこまらないでよ。足、
「どうしたんだい? 何か刀のこと?」
「あ、いや、その…」
「ん? なんでも言ってごらん?」
「えと…い、いいですか?」
「うん、構わないよ?」
秋は要の顔を、
「E•A•E•C…、知ってますか?」
要の頭を拭く手がピタリと止まった。そのまま
「はい、そう…です」
「うん。わかった。いよいよ…って、感じだね」
要は、不安そうだが、嬉しそうな、
「実は、僕の、別れた妻が
「……(何となく、そんな気がしてた)」
「だから、澪は、
「は、はい……」
「それで、僕の
「新宿の、教会…」
自分の東京行きが
「澪が2歳の時だった。〝
要は
ちゃぶ台に火傷だらけの手を
「ある日の夜、このちゃぶ台に置き手紙が置いてあった。あっさりしたものだった。
「手紙には…なんて?」
要はしばらく黙った。その
教会に入ります。
E•A•E•C…
私の
もし、その
澪が
彼女に伝えてください。
あなたの力を
今まで、お世話になりました。
言いたいことは一度読めばわかる。
しかし秋はこの短い文章を——
何度も何度も、読み返した。
「この
秋は
「秋くん。お願いします」急にかしこまる、要。秋は手紙から顔を離す。「は、はい…?」
刀闘記
~頼~【上】
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