父の遺言と翡翠の短刀
~継~
「
(ここで…終わり…?)
そう思ってもう1ページめくった。
今度は長い。
その手記は、
3日前から始まっていた。
《2010年4月10日》
お前がこれを読んでいるときは、俺がいなくなった後か、それとも秋、お前が俺と同じように
俺は一度、霊剥ぎを
自分が正しいと信じた行いでも、結果がそぐわなければ、人の
お前は今7歳になった。すくすく育ってくれた。剣術もよく覚えた。風とも仲良くやっている。こうして
今、
いいか、秋。
これは、命令でも、なんでもない。
剣術の師としての言葉とも、思わないでくれ。
一人の父親が、一人の、将来ある息子に。
お願いを、する。
立神秋。
生きろ。
何にも負けるな。
そして、守れ。
お前の命を。
お前の大切な人の笑顔を。
守って生き抜け。
お前にはそれができる。
「父…さん……」
点が、一つ、二つ。
「秋……」
秋は、
《2010年4月11日》
秋、お前は今、悪魔を人に戻したいと強く願っているかもしれない。俺は、それを止めるつもりはない。でなければ
しかし俺は、霊剥ぎのためにあまりにも大きな
それで、まだ
「東京…? なんで…要さんが…?」
秋の涙が少し落ち着いた。
再び、ページをめくった。
今までの長文から解き
刀闘記——
(あの日だ…父さんが…死んだ日……)
《2010年4月13日》
秋。
お前を息子に持てたことを。
俺は、心から誇りに思う。
生まれてきてくれて、ありがとう。
再び先ほどに増して。
秋の
まだ何か書かれていないかと、
ページを
しかし、本の
秋は本を閉じ
涙が地面に点を描いた。
今まで
崩壊したように。
父への想いが
その頬を、何度も、何度も、流れ落ちた。
「落ち着いたか?」
しばらく
「
銀次は大きく息を吸った。
「この〝刀闘記〟の、続きを書く気は、ないか?」
意を決して、孫に伝えた。
「取り返しのつかん失敗を、
長めの
本を胸に
「お前のジジとしては『霊剥ぎなんぞ考えるな』と、わしは、言いたいよ…。ただ悪魔を狩るより何倍も困難な道じゃ。危険も多い。しかしそれではお前の気が済まんじゃろうて…。
「じいちゃん」
秋は
そよ風が吹いた。
その風は、銀次が今まで感じたことが無いほど。
秋を一人前の
秋は空を見上げた。
涙は、もう頬を伝っていない。
「刀闘記の続きは、俺が書くよ」
刀闘記
~継~
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