恋愛針筵 篇
~朝~
朝5時。
立神家、寺院。
緑色の火が
「終わり、ましたね」
かすみの紺色の
「秋はいったい、何と闘かったんじゃ」
「長い闘いでした…」
「一回、終わったよな…」
「終わってから、急に火が揺れて…、それからが長かった」
「ありゃ、悪魔と闘ったわけでは、ないかも知れんの…」
「悪魔以外の悪魔?」
「〝
「さいま…?」
「となると、
「そんな…、何百年も前に
「
かすみも、なんとか身体を起こした。今は
「…はい」
「
「はい、金庫の中にあります」
「いよいよ〝アレ〟を
「アレと言うと?」
銀次は、
「
かすみの顔つきが変わった。全てを
「ひとまず、お水を飲んで、お風呂に入らないと…」
「じゃの。さすがにわしも、
「
「いや、
まるで自分の事のように銀次は言う。
「なぜ、おわかりになるのですか?」
「一回、ものすごく体が軽くなった瞬間があったじゃろ?」
「あぁ…、そういえば…」
「その時に秋の傷も
「じゃと思う。なーんじゃ、いろいろ出てきおったのぉぉ」
「いろいろ…」
「
「巫女? 何だか、あたまがグルグルしてきました…」
「それはアレじゃよ、ただの
「そう…ですね、そう、します…うぅ」
銀次は目を閉じて仏のような顔をした。この顔の時は
「あまり硬く考えんでもいい。こっちの心を
ハムスターサイズの
「は、はいぃ。今、お水を…、かぶり…ます」
「かぶるんじゃなくて、まずは飲むんじゃよ」
「はいぃ——…」かすみはフラフラと台所へ向かった。
「あんだけ
*
その頃——
「あの、すいませんでした」澪は横を向き、運転する須賀に話しかけた。「スクーター、学校に置いてきちゃって…」
澪が小学校に駆けつけた時に乗っていたスクーターは、
「俺たちみたいなもんは悪魔に
「なぁに、これくらい、
「あの時、秋の身体を
須賀と澪は、緑色の光に
「ありゃ
「そう…なのかな。確かに、体が勝手に動いたような気も…」
「何か、心当たりはないのか?」
「うーん…、父が
「ちょいと気に
「え? あ、はい」
「お
「……母…かぁ」澪の顔が
「あ、いや、すまん。
「い、いや、全然大丈夫です、こちらこそ気を
「
「はい…、私が生まれた後も、母はしばらく家にいましたけど…離婚自体は、私がまだ母のお腹にいるうちに成立してたとか…」
「要さんとは、そのことはあまり話したことはないか?」
「うーん…、深くは知らないんです」
「親としては、子供に余計な心配をかけたくない。だから理由は言わなかったのかもな」
「そうですよね、
「こらこら、自分をそんな風にいうもんじゃねぇよ。きっと『なんでおかぁさんがいないの!?』って、
「おじいちゃん体が悪くて、
「そいつぁ、
「おじいちゃんは血を吐いていたし、お父さんは
「死ぬ気で教える師匠に、
澪はふとサイドミラーを
「あ、あの…、
「お? なんだ? おっさんに分かることなら、なんでも訊いてくれ」
「え、えっと…」
須賀を人生の先輩と
「可能性はあるな。だが、あの子はどこまでが
「私には『そんな気は無い』と言いました。でも、
「澪さんは、澪さんで、東子さんがどう思おうか
「私には…、何も無い、何もできない」
「何にも無いなんて言うんじゃねぇよ。あるじゃねぇか。誰よりも負けないもんが、澪さんの中に、ちゃんとあるだろ?」
頭の上にハテナを作って澪は
東子よりも秋の事を知っている。
東子よりも秋の近くにいた。
東子よりも秋のことが、好きだって言える。
好きだって言ってやる!
澪の胸は——
「だがな…、おれぁ
「
「あぁ。俺もそんなに恋愛だのに
「私も、
「それでだ、秋は
サイドミラー越しに、
「言い切れます?」
「多分、だが、無い。
「え、想像つかない」
「もし、そっちの
「やっぱり7歳頃を
「秋自身、子供の頃から
とてつもなく高い山に登ろうとしているような——何万キロもあるマラソンのスタート地点に、たった一人でポツンと立たされたような
「……ん?…おっさん、ここ、どこ?」
「ん? あぁ、なんともない」
「そ、そう? なら、よかった」
澪は少し顔を
「あ、そう言えば澪、あれ決めたのか?」
「あれ…、って?」
日常会話の延長で。
今日は天気がいいね、くらいの
「ほら、
しん…と
「
澪は
「
「秋なんか、東子さんの家でイチャイチャしてればいいんだよ!」
澪の売り
(まずこの男の
澪の気が更に遠くなった。まいったな…、そう思った須賀の顔は
「澪、学校に好きな奴とか、いないのか? 俺は学校とか嫌いだけど…、澪はちゃんと通ってるのに彼氏いたとか聞いた事ないな……お前、モテないのか?」
須賀は、お前のことがずっと好きなんだろー! この
「いってぇっ!」「ばか! 知らない!」
刀闘記
~朝~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます