~虹~
その円は直径、約30メートル。
秋の
秋は大太刀を動きを見切った。斜め左上から襲う巨大な
一撃の強さは
『
大蛇はその全身を〝シャボン玉〟のような丸い風に包まれた。突然に
たんぽぽの綿の如く風に流され、ふっ飛ぶ大蛇の巨体。なんとかして着地しようと、大蛇は尻尾を地面に向けてのばす——尻尾は何度か地面を
この炎は、悪魔を払う炎。生きている炎。大蛇が近づいた事を察した炎は、二倍の高さに燃え上がり、蛇を逃すまい…、と
勝負が…ついた?
秋はそう思った。
しかし、その瞬間。大蛇の〈
「弱点を、移動させやがった…!?」
「来い! 何度だって相手してやる! 何度だってお前の
小学校の近くで新聞配達をしていた中年の男性が、スーパーカブを運転しながら、大蛇のその声に振り向いた。グラウンドに広がる非現実的な光景を目の当たりにして、「う、うあっ! なんだありゃ!」と声をあげた。まだ自分は寝ぼけているのではないか…、そう思って頬をつねりながら、カブのエンジンをふかし、勢いよく逃げた。
時間は、まもなく朝の4時になろうとしている。ほんのり、
『
秋が叫んだ瞬間––––風が小さな竜巻を作りながら秋の周りに集まり、ドン…と大型の
そして——秋は今、敵の攻撃を防御する時と、敵に攻撃を加える時——その二つの瞬間だけ、両腕に
『
負けじと、何度も、何度も、大太刀を振り下ろす大蛇。
負けじと、何度も、何度も、大太刀を弾き返す、秋の炎刀。
大蛇は
根元から折れた右の大太刀をすぐに再生しようとするが、秋は、その
秋の着地の
「秋っ!」澪は駆けつけ秋に抱きつく。
「お…、おい!」秋は澪を体から離した。
「あ、ごめん…」
澪の目からは涙が垂れている。「秋…! 無事か? 大丈夫か!?」
「東子は帰ったのか? 秋くん、ずいぶん、ボロボロだけど大丈夫かい?」
大蛇は急に、
「はは。東子、蛇が嫌いだったな。そういえば秋くん、ピンクの悪魔を殺した時に、
「
「『アクマを斬らずに人間に戻す』とか
「あぁ…、そうだな。自分でも笑えると思うよ。大っ嫌いだ。悪魔なんか。人間は道を踏み外すこともある。どうしようもないクズみたいなやつだって沢山いるよ。そんなクズ
秋は、刀を真っ直ぐに大蛇の顔に向け、続けざまに声を放つ——。
「
生まれてこの方、秋が他人に対してこんなに喋ったことがあっただろうか。秋の、並々ならぬ決意の言葉だった。同時に、悪魔を人間に戻す方法があるのかわからないという
「アッ…ッハハハ! バカらしいよ、清々しいまでにバカらしいね! ニンゲンは全員クズだ! クズだって言うのにさぁっ! 皆殺し以外に道はないよ! ああ、ないね!」
すると、どこからともなく、涼しい風が吹いた。
ひらひらと
「賛成です」
「雪女!? もう、大丈夫なのか?」
「え…、
「東子。お兄ちゃん、待っているからな。おまえが〝こっちに側〟にくるのを——」
そう言い残し、西威の意識は大蛇から離れていった。西威の声を大蛇から聴いた東子は、大蛇を
「あなた面白い事、言いますね」
「何がだよ」
「『悪魔を人に戻す』だの…、
「いいだろ…別に…」
「好きです」
東子の「好きです」に、誰よりも先に
「そう言う
「あなたのお父さんです」
東子以外の全員が
しかし
秋は
「後で…、ゆっくり聞かせてもらうぞ」
「えぇ。いいですよ」
「体は? 大丈夫なのか?」
「6割は、戻りました」
「わかった。おっさん、澪、離れてくれ」
澪と須賀は、秋の言葉にしたがって、その場から離れた。大蛇を
東からだんだんと
低い空に薄くかかった雲が
朝陽は大蛇を
眩しい太陽を背負う大蛇を——
まっすぐに見る二人。
空にうっすらとかかる
それに気づいた東子が独り言をこぼした。
「
秋が、横にいる東子に話しかけた。
「…いけるか?」
東子は地面の刀を抜いた。
刀身が朝陽に反射して光る。
この刀は悪魔用の刀。
ひとひらの綿雪が舞った。
東子は、大切な仲間と想った。
「えぇ。終わらせましょう」
刀闘記
~虹~
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