~翠~
「来るぞ!」
「こいつぁ…いけるぞ! 秋!」須賀は
「あは、あはは! 火! 火が、怖いのか! 怖いんだな!」田中はケラケラと笑いながら大蛇に近づく。
「これでも食らえ!」そう言いながら、田中は2発の
火を恐れ、体をSの字に持ち上げる大蛇——その足元で、メラメラと燃える
「さっきまでの
大蛇に触れんばかりに接近し松明を拾った。しかし、田中は松明を拾った
「う、うあああっ!」大蛇に体を持ち上げられ、
「ちくしょうっ––––! あのばか!」
大蛇は、田中に松明を投げられたとき、本能的にひるみ、本能的に怯えた。しかし、怯えたのは〝本能の方〟であり、実際に火に触れてみると、
「うああっ! やめろ!」大蛇は弱気な警官を松明ごと食らおうとする。須賀は3発の銃弾を大蛇の
秋は、大蛇が二足の足のように使う
大蛇の腹から
「文字通りバケモンだな…!」秋は大蛇から体を離し、刀を構え直す。須賀は「ちくしょう!」と声を荒げ、田中のおかげで無意味になった、お手製のリコーダー松明を放り投げた。
「–––––離れて!」
突然、秋の右側から声がした。須賀と田中は別の方向に
金田は銃を撃った。
銃弾はガソリンが
短い
地面が激しく燃えさかる。
すぐにポリタンクは爆発した。
爆風を浴びた大蛇の頭は
「やった…のか?」
思わず須賀が、言った。
しかし秋は、変わらず刀を構えたまま。
–––––オモイ…ダシタ……
大蛇の方から、声がする。その口は、
–––––オモイ…ダシタゾ…
そこにいる全員が、
––––オレワ…オレワ……アイツニ、チカラヲモラッタ…モラッタ…モラッタアァァッ!
その叫びから
「お、おい、なんだ、ありゃ…!」須賀は
体は蛇、脚は人の腕、両手は
「秋!」
秋の後方から、女の子の声がした。
秋はすぐに後ろを振り返る。
そこには、寝巻き姿のまま駆けつけた
「澪!? おまえ…なにして…」
「秋! って、ええ!?」
澪は、秋とその周りの景色を見た
「それで刀を擦って! お父さんがくれた!」
秋は、受け取った
「お父さんから預かったの!」
「
「秋……」
大好きな秋がボロボロになっている。
それでも闘っている。
命をかけて。
でも自分はなにもできない。
力になれない。
こんな石ころを持ってくるしか。
私にはできない。
悔しい。
もどかしい。
わたしだって闘いたい。
どうして、
どうして、
どうして——。
私はいつもこうなの。
大好きな人が命をかけている時に。
ずっと布団の中で寝ていた。
手伝いたくても何もできない。
秋が悪魔と闘う時、
その近くにいれば邪魔になるだけ。
どうしようもない。
どうすることもできない。
「秋っ! 負けない! 負けない! 絶対に負けないっ!」
澪は叫んだ。力一杯、叫んだ。それしかできないから、叫んだ。秋に——大好きな秋に死んで欲しくないから、悔し涙を流しながら叫んだ。
秋は澪の声援を聞き届けた。
大蛇に振り向き大きく息を吸う。
刀は燃えた。
刀身が全て——
緑色の炎に包まれた。
「おっさん! 離れて!〝
「秋! 負けない!」
「秋くん!」
「命だけは落とすなよ…、秋っ!」
そこにいる全員が、秋の名前を呼んだ。さながら、大きな試合に
「おい! そこの、
秋は刀を構えた。
大蛇も身をかがめた。
どちらもいつでも動ける。
秋の周りに風が吹いた。
その風は
秋はありったけの声で、ありったけの
大蛇に声を——放つ。
「来い!」
刀闘記
~翠~
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