3 上田健三の場合①

「え?iPhoneじゃないの? なんで成瀬さん、iPhoneにしないの? 」

スマホはiPhoneに限る。動きもサクサクだし、なんでもできるから。Appleでしか使えないアプリもある。みんなiPhoneにすればいいのに。もったいな。


 俺の周りはみんなiPhoneだから、一緒にソシャゲするときに使い方をアドバイスし合えて便利だ。基本的に課金はしない主義だが、今夜のイベントでどうしても俺が欲しかったキャラがガチャで出やすくなるという情報を同僚の黒崎から聞いて心が揺らいでいる。 

「黒ちゃん、今夜9時からどう? 夜Lineすっから。山田はやんないの? これすごい面白いんだぜ。招待するからよ 」

後輩の山田は年齢が20も離れているが、年齢なんて関係ない。俺からゲームに誘うヤツの基準は、気が合うかそうでないかだけだ。

「いや、俺、スマホゲームはやんないんすよ」

「なんで? ウイイレもあるぞ? お前ずっとサッカー部だったし好きだろ? 無料だし」

「いや、まぁウイイレだったらちょっと興味あるんすけど……」

「な、一緒にやろうぜ! 招待するからよ」

「……まぁそうすっね 」

脈無しだな。でも、いったん始めたらたぶんハマってくれると思うんだよ。あいつiPhoneだし。


 好きなヤツとは同じゲームをして仲良くなりたい。最近のソシャゲは仲間で協力プレイするものが多いから、一緒に達成感を味わえる。そしたらもっと仲良くなれるだろ。子供は大学生になってから俺が話しかけても無視するようになった。そのくせ新しくスマホを買い替えたいときだけすり寄ってきやがる。そんなときはiPhoneの最新機種を買っておけば間違いない。


 どうやったら山田は一緒にソシャゲやってくれるだろう。あいつを何としても仲間に引き入れたい。いつも「山田」って呼び捨てにしてるから威圧感があるのかな。明日、「山ちゃん」って呼んでみるか。

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