爆発と光線銃(後編)

「なぁんだ。もう終わりですか。実につまらない。全く、本当に、つまらない」

 ネヒコは首をすくめて呆れ顔になっている。糸は右手から出たままだ。


「こんなつまらない相手に、なぜ皆さんが執着して、そのうえ負けてしまったんでしょう。ああ、理解に苦しみます」

 ネヒコは同じところを行ったり来たりし始めた。ぶつぶつと呟き続けている。


「大体、我が軍に生身の兵士など不要なのです。私さえいれば、私の召喚術さえあれば・・。ああ、でも死体は必要ですねぇ」

 独り言が止まらない。


「そうだ。今の兵士の皆さんには一回死んでいただいて、それから私が召喚して差し上げるというのはどうでしょうか。うーん。プリティな意見。あぁ。素晴らしいこのアイディアを王に早くお伝えしなければ・・」

 ネヒコが悦に浸りかけた時、左手に持っていた書物に無数の穴が空いた。


「ひぃっ」


 思わず、書物を取り落とすネヒコ。


 ネヒコがビョウブの方を見遣ると、すっかり糸を取り払い、立ち上がって銃口を根彦に向けている。


「あなた、どうやって!?」


「おぬしに話す必要はないのう」


 ビョウブの代わりにカモイが拒否を伝えたが


「糸を内側から焼いたんだ。指は動かせたからね」

 と、あっさりビョウブが答えてしまった。


「なんでしゃべっちゃうのかのう。世紀の大魔術的な脱出ショウだと思わせておけるチャンスじゃったのに」

 カモイは割と本気で口惜しそうだ。


 ビョウブはカモイの言明を無視すると、じりじりと引き金を絞った。

 無数の赤い粒が塊になって飛んでいく。散弾撃ショットガンだ。


 ネヒコは素早く術式を唱えると、正面に見えない壁を張った。


 ビョウブの放った赤い塊は見えない壁に当たると、飛び散って消えてしまった。


「物理障壁術式かのう。それを一瞬で詠唱できるとは」

 カモイは感心している。


 ビョウブは黙って引き金を何度もひいている。

 今度は通常の光線だ。


 赤い光が、寸分違わぬ精度で壁の一点を攻め続ける。


「ぬぬぅ」

 ネヒコは右手を開いて壁を押すような仕草を見せている。


 対して引き金を引き続けているビョウブ。

 その姿勢は一寸もズレることなく、赤い光線が銃口から吐き出され続けている。


 そして、赤い光が十本ほど刺さったかと思ったとき、

 突如として、壁は崩れた。


 ネヒコの前の空間にヒビが入り、見えなかったはずの壁に蜘蛛の巣状の亀裂が入り、霧散した。


 そして、次の光線が飛来したとき、ネヒコは瞳孔を開いてその軌跡を追っていたが、最後まで見届けることは叶わなかった。


 光線の終着点は自身の眉間だった。

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