盗賊と光線銃
「どこに雇われた?王国兵団か?ジョウゴの商人連中か?」
正面の廃屋から右手に蛮刀を引っ提げた男が、取り巻きと一緒に出てきて声をかけてきた。
どうやら盗賊の
上半身裸で、たるんだ腹が憎たらしい。よく日に焼けており、ところどころに刀傷と思われる跡も見られる。全体的に太ってはいるが、腕や足にはしっかり筋肉がついているようだ。蛮刀をぶんぶん振り回している。右の腰にもマチェットを提げており、相当力に自信があるらしい。
「その三倍出す。俺たちを見逃せ」
「・・・」
「兵団にもジョウゴの連中にも金を握らせておいたんだがな。誰が裏切りやがったのか」
男はかーっと痰ををからめると、足下に吐き捨てた。
「お前を殺すのは難しかねえ。だが、これ以上、うちの連中に死人も出したくねぇ。どうだ、五倍出そう?」
こっちが反吐をはきたくなるような物言いだ。
ヤマシロは沈黙を貫いている。
「なんでぇ。口が聞けねえのか。それとも、耳が聞こえねぇええのかああ」
男は怒鳴り声をあげた。
「・・うるさい蠅が」
ヤマシロは抜刀すると、下段に構えた。
「聞こえても聞く耳がねえのかよおお」
男はまだ喚いていたが、ヤマシロが構えを解かない様子を見て
「やれ」
と短く言った。
取り巻きの男五人が一斉に駆け出した。
「俺は左の三人をやる」
ヤマシロはそう言うと、下段の構えのまま、さらに身をかがめて早足に駆けた。
マチェットを得物に走ってくる賊三人。
一人は飛び上がって斬りかかり、残り二人はヤマシロを左右から回り込んで斬りつけようとしていた。
ヤマシロは、正面の男の足下へ滑り込んで背後を取ると、下から斬り上げて、一刀のもとに打ち捨てた。
左右から回り込むはずだった二人は、ヤマシロが視界から消えたことで虚を突かれたのか一瞬、動きが止まった。
ヤマシロはそれを逃さず、左右に一度ずつ刀を振り、それぞれの首を取った。
男たちは、首を取られたことにも気づいていない様子だったが、自分の胴体から血飛沫が上がっているのを見て、死を悟ることになった。
ビョウブは、ヤマシロの舞うような戦いを見ていたい気持ちだったが、きっかり右の二人がこちらへ向かってくるのを見るや、引き金を二度ひいた。
赤い光線は微妙な角度をつけて撃ち分けられ、それぞれ男の額を抜けていった。
一瞬で脳天を撃ち抜かれた人間は死を感じることができるのだろうか。
光の速さは死の感触を凌ぐのかもしれない。
二人の男は、マチェットを構えたその姿勢のまま、後ろに倒れ込んで絶命した。
一瞬にして自分の部下五人が物言わぬ死体になったのを見て、
「・・ちょ、ちょっとマテ。話せばわかる、な」
「曲がりなりにも、戦いを糧にして生きてきたのだろう、お前も」
ヤマシロが言葉を継ぐ。
「な、なにを」
「ならば、最後まで戦え」
ヤマシロは容赦無く言うと、正面に構えて息を鎮めた。
「・・こなくそがあああああああ」と急に気勢をあげた。
そして蛮刀を振りかぶると、力任せにヤマシロへぶつけてきた。
そのまま正面で受けるヤマシロ。
金属と金属のぶつかり合う甲高い音。
「どうだあああ。そんなひょろっこい腕で勝てるわけがねえんだ。腕力なんだよ、腕力ぅうう」
「そうか」
ヤマシロは、左手を刀の柄から放した。
「はあ?お前なんのつもり・・んっ」
ヤマシロは右手一本で
するとヤマシロは、空いた左手を相手の右腰に回すと、そこに提げられていたマチェットを引き抜いた。
「・・へ?」
首の付け根から吹き上がる血。
「・・・・へ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます