#06 盗賊と光線銃

近づく光線銃

 倒した小鬼コボルドの総数25。オオカミは18匹いた。

 一座の者に大した怪我は無く、馬も無事だったが、荷物がいくつかなくなっていた。


 小鬼コボルドの全てを倒せたわけではなかったらしい。荷物を奪うという戦果を得た時点で、ある意味では小鬼コボルドの勝利だったのかもしれない。


 一行は、否応無く戦闘の後片付けをすることになったが、それが終わるころにはすっかり夜が明けてしまっていた。

 皆で遅い朝食を取ると、出発となった。


 ここから先は、昨晩、タマテが言っていた廃村に近づいていくこととなる。


 本来の出発時間を守れていれば、廃村近くには昼前後には着けたはずだったが、この案配だと、夕暮れにかかるかもしれない。


 人も馬も、少し疲れていた。

 昨日同様、ビョウブは戦闘の馬車に横付けするように随伴して馬を進めていた。


「なんじゃなんじゃ、皆だらしないのう」

 カモイは召喚書の中で元気そうだ。

「カモイさんはいいじゃない。絶対疲れ知らずでしょ、そこの中」

 手綱を握ったタマテが反応する。


 この旅の中で、タマテはすっかりカモイの存在に慣れている。打ち解けていると言ってもいい。

 一応、一座の他の者達にも事情を説明して、カモイの存在を明かしてはいるものの、積極的に関わろうという者は皆無だった。

 古来、死者の蘇りなどというものが歓迎された試しは無いのだ。


「いやいや、おじょうさん。儂とてこの中でビョウブを援護しておるのですぞ。戦闘中は敵の気配を探り、策を授け、夜は寝ずの番をするっ」

 カモイは胸を右の拳で強く叩くと鼻息を荒くした。


「・・いつもありがとう、じいちゃん」

 ビョウブは言わされた感がを覚えないでもなかったが、感謝を言葉に表すことは悪いことではないので、そうした。


「うふふ。仲が良くてうらやましいわ」

「そうですか?」

 だって、片方は死んでいるのだ。


「私、家族とは折り合いが悪くって、飛び出すようにこの一座に入ったから、そういう家族の感じっていうの?あんまり経験したことがないの」

「・・そうですか」

 同じ台詞を吐いたはずなのにビョウブのテンションは大きく異なっている。


「ああ、もうそんなリアクションはいいのよ。私はこの生活が気に入ってるし、これは私の選択だもの。これでいいのよ」


 旅が移動の手段でしかないビョウブにとっては、旅自体が糧であり、人生の一部になっている一座の生活は想像しにくいものだった。随行してしばらく経つが、実感として得られているものはまだまだ少ない。


 そうこうしているうちに、一行は廃村跡に近づいてきた。

 日は少し陰ってきている。

 一行は廃村に入る前にキャラバンを止めると、相談の機会を持った。

 一塊になって素早く一気に通り抜けるという案と、様子を探るべきだという意見があがった。後者はビョウブの発案である。

 その結果、村の様子を探ることとなった。


 無論、潜入するのはビョウブである。

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