波状攻撃と光線銃

 小鬼コボルド


 森に住む鬼族の中で一番小さな種族の名である。

 体長は60cm程度。火や道具を使うことができ、石斧や簡素な弓を使って狩猟をする。

 原始的な独自の言語によってコミュニケーションをとっているようであるが、その言語を解読できた者は未だいない。

 今回襲ってきた者ののように、オオカミやイタチなどを手懐けて騎乗する者も見受けられる。

 森ごとに部族が存在しており、部族同士の抗争が発生することもある。

 積極的に人間に対して攻撃してくることはあまりないが、縄張り意識や食料目当てなどが理由と見られる襲撃もある。


 今回は、食料が目当てだったようだ。

 小鬼コボルドの狙いは、馬車を曳いている馬、それから手持ちの食料だろう。

 道行く旅行者の馬を射て、逃げ出した馬を罠にかけて捕まえる、旅行者の落とした荷物を奪うというのは小鬼コボルドの常套手段である。


 ビョウブは馬を繋いでいる場所までとってっかえそうと、そちらへ足を向けた。

 すると小鬼コボルド達は、ビョウブの行動を理解しているのか、5匹で半円上に囲むと、引いては寄せる波のように襲ってきた。


「まさしく波状攻撃じゃのう。小鬼コボルドにここまで知能があるとは知らなんだわい」


 しかし、光線銃の火力が上であった。

 弓で小鬼コボルドを相手にするとなると、そのすばしっこい動きに狙いがつけられなくなるものだが、その点、光線銃は速射性にかけては比較にならなかった。


 ビョウブは、ウロウロと動き回る小鬼コボルド+オオカミに狙いをつけると、一発で仕止めようとするのではなく、現在位置と予想される未来位置とに向けて、2〜3発ずつ発射した。


 次々と倒れる小鬼コボルド

 体が小さいためか、光線銃の射撃によるダメージはほとんどどこに当たっても致命傷になるようだ。


 5匹全てを倒し終えると、今度はテントの方から悲鳴が上がった。

 タマテの声だ。


 ビョウブが駆けつけると、テントから起き出してきた一座の者達が、ホウキやらフライパンやらを持って応戦していたが、タマテの姿は無い。


 ひとまず、目の前にいる小鬼コボルドを3匹に光線銃をぶっ放し、

「タマテさああん」

と声を上げた。


 すると、再度タマテの悲鳴が聞こえた。

 すぐ目の前のテントからだった。


 ビョウブが、幕を上げて中をうかがうと、タマテが一匹の小鬼コボルドと荷物を引っ張りあっている。こいつは騎乗していない。

 タマテ自身に怪我は無いようだ。


 ビョウブは少し安心すると、落ち着いて、光線銃を放った。

 ギャッっという短い悲鳴とともに、小鬼コボルドは絶命した。


「あ、ありがとう」

 タマテは髪を乱し、額から汗がしたたっていた。

「無事でなによりです」


 そう言うとビョウブはテントから出て、残敵の掃討へ向かった。

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