第12話 恋深き令嬢とリアルダンジョン?
「イツキくん、足元に気を付けてくださいね! みこ、彼をよろしくね!」
「……ええ」
デラックスカーに乗せられて着いた場所は、高級車ばかりが並ぶ地下駐車場だった。
そこから上に上がってお屋敷に~なんて思っていたら、そこからどういうわけか目隠しをされて、執事のみこさんに手を引っ張られながら歩いている。
階段を何段も下りたところで、みこさんは俺にそっと耳打ちをして来た。
「イツキ様、あなた様の栄光を思い出してもらうために、今から私とパーティを組んで頂きます。直接的なダメージはありませんが、痛覚は有効に設定しておりますので私があなた様をお守り致します」
「……はい? 思い出すって何をですか?」
「このまま目隠しの上にゴーグルを装着させて頂きます……もう間もなく、戦闘開始です」
「いや、ちょっ――!?」
ダメージが無いのに痛覚が有効って、一体何を言っているんだ?
しかも目隠しされたままゴーグルって、まさか……LOR!?
「目隠しをお外し致します。しばらく経つと、あなた様から見える世界が確かなものとなるでしょう」
それほどキツく締められていたわけではない目隠しの布を、シュッと外され、目を開けると確かに視界がぼやけてしまっていて、慣れるまで時間がかかりそうだった。
地下駐車場からさらに地下に降りて来たまでは分かるのに、そこを見ることは許されずすぐさまゴーグル装着とか、中々に強引だ。
「イツキさまはエルフ……LORの世界そのままを再現しておりますので、違和感は無いかと」
「さっ、再現!?」
「それでは、開始致します」
LORもぼっちも引退したのに、何で俺復帰させられてるんだろう。
考えてみればリンが俺と別行動な時点で、さっさと気付いてもおかしくなかったのに。
しかし言っても帰れないようだし、あの頃を思い出してさっさと狩りを終わらせよう。
エルフと言われたものの、ゴーグルから見える世界では、俺の姿を確かめることが出来ない。
見えるのは奥行きのある立体的な世界と、隣に付き添っているエルフ姿のみこさんだけ。
エルフ姿のみこさんは、表示がミコさんになっていて髪の色も、俺の好きな輝く白だ。
「イツキ様、突然のことで申し訳ございません。これもリンお嬢様の望みの手段なのです。そうでもしなければ、イツキ様を狙う他の皆様とは、差が埋まらないとお考えなのです」
「そ、それはいいですけど、ミコさんもLORにいたことが?」
「……いずれお話する機会がありましょう。そろそろ小高い丘が見えて来ますので、戦うご準備を!」
「て、敵が待ち構えているんですね?」
「……」
答えにくそうにしているし、今は敵を倒すことに集中するしかない。
LORと同様のシステムなら、その敵さえ倒せば解放されるはず……というか帰りたい。
「イツキ様。リンお嬢様……リンを嫌わないでやってください」
「き、嫌いになんて、そんな……」
「あなた様が引退されてから、リンはどんな手を使ってもイツキ様に会い、好きを隠さず恋に憶病にならないことをお決めになりました」
「恋……え、じゃあ、この世界にリンが――」
「――来ます!! お下がりください!」
エルフ姿のミコさんは敵の気配をいち早く察し、俺を後ろに下がらせてくれた。
今はとにかく敵とされている相手を倒すしか、家に帰れないってことだろう。
妹には後でたっぷりと叱られるしか無さそうだ……。
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