第7話

 コーヒーなんてもちろん頼んでいない。店員さんが、可愛らしい声と共に、甘い甘いスイーツとミルクティーを置いて行った。

「どうした?疲れちゃった??」

 先ほどと比べて気分が沈んでいるのに、尚央も気付いたらしい。

 さすがわたし。相変わらずわかりやすい。こういうところもダメなのよね。

 一度悪い方向に行くとなかなか戻って来れない自分の思考に嫌気がさす。

「ううん、疲れてないよ」

「じゃあ、やっぱりつまらなかった?」

 柚葉のテンションは、明らかに下がっているようだ。

 ヤバい。このままでは“いつか”どころか今日終わってしまう。尚央との関係が。

「違う。そうじゃないの。ただ……」

「ただ?」

「あなたといるといつも楽しくて、その、運命の人のように感じてて、なんていうか、ほら、考え方が全て同じってありえないじゃない?それで、いつか、えーと、がっかりしちゃうんじゃないかって……」

 途中から自分でも何が言いたいのか、わからなくなってしまった。

「がっかりって、君が俺に?」

「それもあるけど、どちらかといえば、あなたがわたしに」

「そっか」

 ああ、終わってしまった。あっという間に。なんだか泣いてしまいそうで下を向く。


「がっかりなんて絶対にしない」

 尚央の力強い声が聞こえたが、柚葉は下を向いたままだ。

 そりゃ、あなたの思っているわたしはそうかもしれないけど、違うのよ。わたしは、あなたが思ってるような人じゃないのよ。

「あなたが知っているわたしは本当のわたしじゃないのよ」

「本当の君だよ」

 勝手に何を言っちゃってくれているんだ。本人が違うって言ってんでしょ。

「だってお姉さん、ちゃんと笑ってくれてたでしょ。演技じゃなかったでしょ」

「それはそうだけど……」

 それはあなたが笑わせてくれたから。

「今日楽しかったってのも噓じゃないでしょ」

「噓じゃないけど……」

 そういうことじゃなくて。

「わたし、あなたが思っているような可愛い子じゃないの!」

 柚葉はぐわっと前を向いて言った。

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