第4話
火曜日の夜九時頃、だらだらとスマホをいじっていた柚葉のもとに尚央から連絡が来た。すぐに開くのは、なんだかがっついているみたいでイヤなので、十分後くらいに開く。
――今度の日曜日、出掛けない?一緒に行きたい所があるんだ
これは!デートのお誘い!!
――出掛けたい!どこに行くの?
本当はあと5、6個「!」を付けたいぐらいの気持ちで返信を打った。尚央からの返事はすぐに来た。
――工場!
え、工場??
1ミリも想像していなかった答えが来て、柚葉は混乱した。数分間待ってみたが訂正は来ない。
打ち間違いじゃないの?わたしが知らないだけで、世間一般では工場は定番のデートスポットだった……??なにを着ていけばいいの?つなぎ??
既読がついてしまったため、柚葉はとりあえず「すごく楽しみ!」とだけ送って、電話をかけた。
「もしもし?」
「桜子!助けて!!」
デート当日、柚葉の心は弾んでいた。あの後、結局工場デートの謎は解けなかった。桜子曰く、工場は普通のデート場所ではないらしい。だが、柚葉にとって行き先はどうでもよかった。尚央とのお出掛けが楽しみでしかたない。気分は少女漫画のヒロインだ(工場でデートをしたことのあるヒロインは、おそらくそんなに存在しない)。
髪の毛は緩く巻いて一つにまとめ、口紅は少しピンクっぽいものを。行く場所が場所なだけに、服はそれほど女の子らしくできなかったが、今日の柚葉は普段から比べればかなり可愛らしい。
10分くらい早く着いたな。……ん?あれはもしかして??
待ち合わせ場所であるお店の前には尚央の姿があった。こちらに気が付くと、笑顔を浮かべながら手を振ってくる。
柚葉は、手を振り返しつつ小走りで駆け寄った。
「ごめん。待たせちゃった?」
「ううん、大丈夫。さっき来たばっかりだよ。」
なんだか恋人同士みたい。
そう思うとより一層ふわふわとした気持ちになった。
「じゃあ、行こうか。」
「うん。」
つなぎ着てこなくてよかった、ぼんやりとそう思いながら柚葉は歩き出した。
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