第三十四話 エメはもうダンジョン探索をしない

 メテオールから一番近いシロシュレクへは馬車で二日、そこからペティラパンへは一日。冒険者タグの発行に二日かかったとして、一週間で戻るのは無理だとエメにもわかる。それでも、二週間経ってもアダンは戻らなかった。

 アダンにもらった帳面ノートには、もういくつもの設計デザインを書き溜めている。いくつ目からか、何を書けば良いのか、後から何を見返したくなるのか、少し掴めてきた気もしていた。

 それでも、やはり思ってしまう。新しい素材オブジェクトが欲しいと。

 魔虹石錬成ができないので、魔虹石召喚ガチャはやっていない。魔水晶召喚ガチャはやってはいたけれど、CコモンRレアしか出ないので満足感は薄く、却って苛々が募る。


「あー、召喚ガチャしたい、魔虹石欲しい、錬成したい、新しい素材オブジェクト欲しい」


 二週間で、エメは新しい設計デザインを一つ用意して、マップを一つ入れ替えた。手持ちの素材オブジェクトを使ってなんとか設計デザインをしてはみたものの、前に作った設計デザインを継ぎ接ぎした感じが強くて、あまり納得はいっていない。

 設計デザインの合間に、エメはアダンから預かっている冒険者カードを取り出して眺める。冒険者タグよりもずっと大きなそれは、アダンのいう通りにとても邪魔な大きさだ。

 それでも、アダンの手の大きさにも、アーさんの体温にも足りない。召喚ガチャの高揚感にはとても及ばなかった。


 エメは食事を抜くのをやめて、睡眠もとるようになった。顔色も良くなって、仕事中も元気になった。エメのお金の使い道に関する噂はなりを潜めて、今はアダンの正体とエメとの関係についての噂が人気の話題だ。

 エメが借金のかたに脅迫されているというものから、困っていたエメを助けにきた某国の王子というものまで、その内容は多岐に渡り、尾ひれどころか背びれ胸びれまで付いて、内容は新作の娯楽小説のようになっていた。

 アダンとの関係について直接に尋ねた者もあったけれど、エメはしばらく悩んだ後に難しい顔をして「師匠……?」と呟いた。それ以降、噂話のラインナップに師弟の恋というのも含まれるようになった。

 職員たちは単に娯楽に飢えているだけなのだろう。マップ情報ガイドブック担当職員のポレットが「本屋を誘致しましょう」とロイクや他の職員に掛け合っていた。人のプライベートを娯楽にするのは健全ではないと、あれこれと噂話をしていた職員たち自身も感じてはいたことだった。




 一人の冒険者がエメを尋ねてきたのは、その頃だった。エメはちょうど、お使いでメテオール内の店舗を回っているところで、不在だった。

 優しげな笑顔のその冒険者は、エルヴェと名乗った。以前にエメとパーティを組んでいたのだと伝える。冒険者タグでその記録は確認できたが、受付のギルド職員は名指しで尋ねてきたエルヴェを警戒して眺める。


「彼女……エメさんは、今も冒険者を続けているのでしょうか」


 エメについて何をどこまで伝えて良いものか、職員は悩む。気軽にエメの話をして、それが問題トラブルに繋がらないとも限らない。

 エルヴェを待たせて、職員はロイクに相談に行った。ロイクは職員を受付業務に戻して、エメを尋ねてきたという冒険者のところに自ら向かった。

 レベルは31。年は十九。職業ジョブ魔法使いソーサラー。エルヴェは平均的な冒険者だった。

 ロイクは丁寧に、特定の人物の情報を伝えることはできない、本人への伝言を預かることはできるけれどそれ以上はできない、ということをエルヴェに伝える。


「そうか……そうですよね。伝言は口頭でも大丈夫ですか?」

「どちらでも、今ここで言ってもらえたら書き取りますし、ご自分で書きたければ筆記具をお貸しします」

「いえ、じゃあ『またパーティを組みたい』と伝えてもらえますか、それとしばらく宿屋にいることも」


 ロイクは少し手を止めたけれど、すぐに何事もなかったかのように紙に聞いた通りを書き記す。


「お名前の綴りはこれで間違いないですか、エルヴェさんでしたよね」

「はい、合ってます。あの……」


 エルヴェは何か言いかけてためらった。しばらく唇を噛んだりしながら、何か悩んでいる様子を見せる。


「まだ、何か」

「あ、いえ……メテオールに彼女がいることは確かなんですよね?」

「それも、冒険者ギルドからお伝えすることはできません、この伝言ももしお探しの彼女がこの冒険者ギルドに立ち寄ることがあればお渡しできるというものです、あ、それと、伝言のお預かりの期間は一ヶ月ですのでそれもご了承ください」

「そうですね、わかりました。あとは自分でも探します」

「これは念のためお伝えするだけですが、何か問題トラブルがあれば冒険者タグの停止や剥奪もあり得ますからね、じゅうぶんご注意ください」


 ロイクの言葉に、エルヴェはショックを受けた顔をした。自分がどのように見られているのか、今初めて気付いたという顔だった。


「あ、いえ、すみません……その、そういうつもりは全然なくて、ただ本当に心配して探していただけなんですけど」

「いえ、念のため全員にお伝えしていることですよ、ともかく伝言はお預かりしました」


 エルヴェが冒険者ギルドを出ていくのを、エメは奥の部屋からこっそりと見ていた。ついさっき通用口から戻ってきたエメを他の職員が捕まえて、奥の部屋に押し込んだのだった。

 エメを名指しで探している冒険者がいる、以前にパーティを組んでいた人らしいけれど、確認した方が良い。そう言われて、エメは状況が飲み込めないままロイクとエルヴェが話しているのを眺める。

 ロイクと話しているのは、確かにあのエルヴェだった。レオノブルでエメに声をかけてくれて、親切にしてくれて、ペティラパンで別れた、あの魔法使いソーサラーのエルヴェ。他のパーティメンバーも来ているのだろうか、みんなどうしてるのだろうか。エメは顔を引っ込めると後ろで見守っていた職員の方を見る。


「あの……確かに以前パーティを組んでいた人です。エルヴェさんにもパーティの人にも親切にしてもらったし……良い人です」


 エメは首を傾けて困惑した顔になった。エルヴェが突然自分を訪ねてきた理由がわからない。親切なエルヴェのことなので、あんな形でパーティを抜けたエメを心配してやってきたのだろうか。


「何か問題のある人?」

「いえ、全然そんなことは。ただ、何しに来たのかがわからなくて……親切な人だったから、わたしのことも心配してくれてるんだとは思うんですけど」


 エメの背後で部屋のドアが開いて、エメはびくっと体を竦めて振り返った。ロイクがエルヴェの伝言をメモした紙を持って、そこに立っていた。


「お帰りなさい、雑貨店の様子はどうでしたか?」


 ロイクはすぐに伝言のことは話さず、事務的な仕事の話から切り出した。エメも頷いてそれに応える。


「新しい鑑定の人はとても良い人だそうですよ。ただ、店舗規模と取り扱う商品の種類が噛み合わないって」

「やはり、買い取りは店を分けた方が良いでしょうね、人が増えるまで、もうしばらく我慢してもらうことにはなりますが」

「宿屋は今のところ問題ないそうです。仕入れの値上がりで料金を値上げしましたけど、むしろ少し落ち着いたって言ってました。ギルド直営じゃない食堂が開店オープンしてから、混雑も緩和されて来てるそうです」

「ありがとうございます、午後はポレット女史のお手伝いをお願いして良いですか、いろいろやらせることになってしまって申し訳ないですが」

「いえ、雑用バイトですから。それに、マップ情報ガイドブック作成のお手伝い、わたし好きですよ」


 それは良かったと呟いてから、ロイクはエメに手に持っていた紙を差し出す。エメはそれを見て、困ったように眉を寄せた。

 エメの表情を見て、ロイクは心配そうに声をかける。


「何か問題のある相手であれば冒険者ギルドの方で対応しますよ、冒険者ギルドは冒険者だけでなく職員も守りますから」

「あ、いえ、問題があるとかではないんです」


 エメは慌てて大袈裟なくらいに手を振った。それから、また伝言を見詰める。


「その……親切にしてくれたパーティだったんです。でも、わたしは今の生活が気に入ってますし、もう冒険者には戻らないので、こうやって声をかけてもらったけど……困ったな、と」

「ギルド経由で伝言を伝えることもできますし、このまま何もしなくても問題はないですよ、返事をお約束したものではないので」

「いえ、でも……エルヴェさんはメテオールにいるんですよね。直接会って話します。何もしないでばったり会ったりしたら気まずいですし。それに、他のメンバーがどうしているか、わたしも気にはなっていたんです」

「わかりました、お気を付けて、何かあれば必ず言ってくださいね、お願いしますよ」

「はい、ありがとうございます」


 エメはメモを折りたたんで肩掛けバッグに入れた。今は仕事バイト中だ。仕事に集中しなくては。

 ロイクも、後ろで見ていた職員も、心配そうな顔をしたけれど、それ以上は何も言わなかった。




 仕事が終わった夕方に、エメは宿屋に行った。受付でエルヴェからの伝言を見せて、直接話をしたいと伝えて、食堂で待つ。個室を使うかと言われたけれど、エメは断った。

 少しして、足を縺れさせながらエルヴェがやってきた。エルヴェはエメが座っているテーブルの前に立って、しばらくぼんやりとエメを見下ろしていた。エルヴェが何も言わないので、エメは困って首を傾けた。


「ええっと、お久しぶりです……その、エルヴェさん、どうしました?」

「あ、いや……その……」


 エメの声に、エルヴェは弾かれたように動き出した。目の前で座って自分を見上げているのが確かにあのエメだと実感して、エルヴェは小さく息を吐いた。落ち着きなく視線をさまよわせた後に、改めてエメを見て、前と変わらない優しげな笑みを浮かべる。


「久しぶり……その、少し話をしても良いかな?」

「はい、そのつもりで来ましたから」


 食堂の奥のテーブルに、二人で向かい合って座って、適当に頼んだ食事を食べる。何から話せば良いのかと戸惑いながら、エメはスプーンを置いてエルヴェを見た。


「そういえば、他の皆さんはどうしたんですか? その、パーティは……」

「ああ……」


 エルヴェは少しだけ目を伏せた後、微笑みを崩さずにエメを見た。


「あの後、パーティは解散して」

「え、解散……したんですか……?」


 エメが不安そうな顔でエルヴェを見るので、エルヴェは殊更に穏やかに笑ってみせた。


「エメさんのせいじゃないよ。イネスがしばらく休むって言い出して。その……結婚するって言い出して」

「結婚……?」

「そう、ラウルと」

「ラウルさんと……イネスさんが?」

「そう。なんかね……タイミングを考えていたんだって。それで、パーティをどうするかって話したけど、一回解散しようってなって……俺は今は一人ソロでやってるんだ。でも、別に喧嘩別れとかじゃないし、連絡は取ってるし、たまにスポットで一緒に探索したりもするし、本当にエメさんのせいって訳じゃないから、気にしないでね」

「そうなんですね……その、次にイネスさんに会う時に『おめでとうございます』って伝えてください」

「手紙書いたら? 連絡先教えるよ。その方が喜ぶと思うけど」

「え、でも……いえ、手紙はやっぱり良いです」


 冒険者だった頃のことを懐かしく思い返せるようにはなったけれど、直接に何を言えば良いかはまだわからない。

 エメは無理矢理話を変えるために、ロイクから受け取った伝言のメモを取り出して、テーブルの上に広げた。


「エルヴェさん、これ」


 エルヴェはテーブルの上に置かれた紙をちらりと見ると、少し強張った顔でエメを見た。そして、エメが言葉を続けるのを遮って話し始める。


「あの……前に断られてしまったけど、ずっと後悔してたんだ。あの時、無理矢理にでも一緒に行けば良かったって。エメさんは、ずっと大失敗ファンブルのせいでパーティに断られ続けて、それなのに、大丈夫って言って誘った俺たちがあんな風にエメさんを追い出して」

「わたしは、自分で出ていったんですよ」

「違う、君に自分でその選択をさせてしまったんだよ。自分たちがやったことは、はお断りだって言ってる他のパーティと同じじゃないかって、俺はずっと……エメさんをきっと酷く傷付けてしまったと思って」


 エメは居心地悪く視線をテーブルに落とした。パーティの雰囲気が悪くなってからは確かにツラかったし、パーティを出て行くのも悲しかったけれど、エルヴェたちに傷付けられたという気持ちはなかった。

 何より、エルヴェたちには親切にしてもらったし、一緒に探索できて楽しかった。エルヴェたちのパーティに入れてもらったから、エメは冒険者らしい経験ができたと思っている。


「エルヴェさん、わたしは……その、うまく言えませんけど、一緒に探索ができて嬉しかったですし、楽しかったですよ。皆さんには優しくしてもらったし、わたしはそれでじゅうぶんだったんです。むしろ、皆さんがわたしのことを気にしてるとしたら……その方がツラいです」


 エルヴェはエメの言葉に溜息をつく。そして、エメがパーティ募集の掲示板の前で佇んでいた姿を思い出す。だなんて声が聞こえるからどんな人かと思って見てみたらまるで普通の女の子で、無駄だとわかっているだろうに掲示板を端から端まで眺めるその姿を見て、なんとかしてあげたいと思ってしまったあの時のことをエルヴェはいつも思い出す。


「それでも……エメさんが気にしてなくても、謝らせて欲しい。あの時はごめん、君を追い出してしまうようなことになって」

「わたしは別に……もう、本当に大丈夫ですから。それに、パーティのことを優先するのは当然だと思いますし」

「そうじゃなくて、俺は」


 エルヴェはエメを真っ直ぐに見る。エルヴェの真剣な眼差しに、エメは射竦められたように口を噤んだ。


「あの時、自分の感情を優先させておけば良かったと思ってるんだ。パーティだったらどうするとかパーティを良くしたいとかじゃなくて、ただエメさんを守りたかったんだ……後から気付いたんだけどね」


 エメにとっては、ダンジョンマスターになる前のことはもう、過去の思い出だった。けれど、エルヴェにとってはまだあの出来事は、心の中に生々しく巣食っているものなのだろう。

 エメは勝手に思い出にしてしまったことに申し訳なくなって、テーブルの上に視線を落とした。スープはすっかり冷めてしまっている。


「その上で改めて言うけれど……俺とパーティを組みませんか?」


 エメはゆっくりと首を振った。


「わたし、今はギルドで働いていて、冒険者はしてないんです」

「でもそれは、一緒に探索するパーティがいないからだろう? パーティがいれば、また冒険者としてダンジョンに」

「あの、えっと……でも、今の仕事、気に入ってるんです」

「ギルド職員でも、ダンジョン探索はできたはずだ。試しに一回、一緒に探索するだけでも良い」


 エメは眉を寄せてエルヴェから視線を逸らす。ダンジョンマスターであることは言えないけれど、探索を断る理由が他に思い付かない。


「あの……ええっとですね、もう探索はしなくても良いかなって思っていてですね」

「俺はもう、君を傷付けるようなことはしないから。だから、一緒に探索をして欲しい。俺はエメさんとパーティを組みたいんだ」


 エメは困って黙ってしまったので、エルヴェは身を乗り出してさらに言葉を重ねる。


「お願いだ、一回だけ、一回だけでも良いから、チャンスが欲しい」


 エメはもう何も言えずにただ首を俯けて横に振った。どうしてとエルヴェがなおも食い下がろうとしたそのタイミングで、ノエミが水差しを手にやってきた。


「お水を」

「ください!」


 ノエミの静かな声に、エメは助かったと大きな声で返事をして、自分のコップを差し出した。ノエミは相変わらず何を考えているかわからないけれど、きっとエメが困っているのを察して入ってきてくれたのだろう、あとでお菓子でも渡してお礼を言おうと考える。

 魔法で冷やされた水は檸檬レモンの香りがして、一口飲んでエメは落ち着いた。エルヴェも熱が入りすぎていたことを自覚したようで、椅子に座りなおして水を飲んでいる。

 エメは小さく息を吐き出してから、顔をあげて落ち着いてエルヴェを見ることができた。


「えっと、本当に申し訳ないんですけれど、わたしはもうダンジョン探索はしないって決めたんです」


 エルヴェは何か言いたそうに口を開いたけど、エメの顔を見て、何も言わずに話の先を促した。


「わたし、最近気付いたんです。ずっとダンジョン探索に憧れて冒険者になりたいって思ってたけど、わたしは冒険者になりたい訳じゃなかったんだって。ダンジョン探索は好きだけど、自分で探索する必要はなかったんです。他の人のダンジョン探索を見てるだけでも……あ」


 ダンジョンマスターだからだけで、普通は他の人の探索の様子が見えないのだと話しながら気付いて、エメは一瞬言葉を止めてしまった。言葉を止めてから不自然だっただろうかと、さらに慌てる。

 エルヴェは真面目な顔でエメの話を聞いている、気付かれてないと良いけれどと内心焦りながらエメは言葉を繋げた。


「見てるって言っても直接見てる訳じゃなくて、えっと、その……そう、マップ情報ガイドブック作ってるじゃないですか、ギルドで。あれを作るのに、いろんな冒険者の人の話を聞くんですね、それがすごく楽しくて。自分が探索してた時は自分の探索のことしか知らなかったけど、他の冒険者の話を聞くとそれの何倍も探索した気持ちになれるんですよ」


 自分が設計デザインしたマップを攻略クリアした冒険者が、ドロップアイテムを手に満足そうに戻っていく姿を思い出して、エメはふふっと笑った。

 新しい設計デザイン公開パブリックした翌日、ギルドのあちこちで新しいマップの話題が出る時、そして攻略クリアを競うように活性化アクティベートされる時、戻ってきた冒険者がドロップアイテムを手にマップ情報を売りに来る時、その話を聞く時。それらをエルヴェに伝えることはできないけれど、その気持ちだけでも伝わって欲しいなと思いながらエメはエルヴェを見た。


「だから、わたしはもう、ダンジョン探索はしないんです。だから……その、ごめんなさい、せっかく誘ってもらったのに」


 エルヴェは、しばらくエメを見たまま何か言いたそうにしていたけれど、やっぱり何も言わずに自分の手元に視線を落とした。うまく断れただろうかと、エメはそっと安堵の息を吐く。

 エメは視界の端でノエミが食堂の入り口に向かって動くのを見て、何気なくそれを目で追った。その先に、ひょろりとした黒い髪の男が立っているのを見て、エメは思わずその名前を口にした。


「アダンさん」


 エルヴェには、エメの声が弾んでいるように聞こえた。顔を上げてエメを見ると、エメはエルヴェを通り越した向こうを笑顔を浮かべて見ていた。頑なに閉じていた蕾が綻ぶような、安堵と歓喜が混ざり合った笑顔だ。

 エルヴェは振り向いて、その視線の先を見る。随分と剣呑な目付きでこちらに歩いてくる男がいた。もう一度エメを見たけれど、エメが笑顔を向けているのは確かにその男だった。

 きっと遅かったのだろうなと、エメの笑顔を見てエルヴェは思った。

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