第十九話 エメはチュートリアルを完了した
突然ダンジョンに転送させられた村の若者は、
この話が冒険者ギルドに伝わり、冒険者がやってくるまでの間に、ダンジョンを冒険者向けに作り変える必要がある。そもそも、その準備として
エメの隣では、
魔水晶
さっき魔虹石
モンスターだけではなく、冒険者が魅力的に思うようなアイテムも配置したい。マジックバッグは人気なので、是非とも欲しいところだ。武器や防具にも憧れがある。
壁や床はなんでも良いし内装は後回しにしようかなと思っていたエメだったけれど、
必要なものはたくさんあって、手持ちの魔水晶と魔虹石ではちっとも足りない。今手持ちの魔水晶は98個で、魔虹石は1個しかない。
──
毎日の
グリモワールの説明にしたがって
それから
魔虹石は11連
エメはグリモワールに相談しながら、魔水晶のモンスターとアイテムと内装、三種類の11連
一覧のページで
──初心者向けダンジョンであれば、魔水晶
──高ランクの
──ただ、現状は配置コストの
──魔虹石は他にも、最大の
グリモワールは、他にも魔水晶を使って
覚醒に必要なアイテムは、魔水晶か魔虹石との交換、あるいは
──交換の話が出たので、
ダンジョンマスター向けのアイテムや、
中に一つだけ、「魔虹石錬成」という他と少し違う雰囲気の
「錬成……?」
──魔虹石を錬成することができる
「魔虹石って、あまり手に入らないんですよね?」
──そうです。とても貴重な魔虹石ですが、錬成することは可能です。マスターは、ギルド通貨は持っていますか?
「え……えっと、はい、いくらかは」
──冒険者ギルドが発行しているギルド通貨には偽造防止のために
エメはなんの話が始まったのかも分からず、相槌もうてずに首を傾けた。グリモワールはエメの戸惑いを気にかけることもなく、話を続ける。
──そのギルド通貨、正確にはギルド通貨に使われている
「ええっと……つまり?」
──もう少しわかりやすく述べると、マスターが持っているギルド通貨を魔虹石と交換できます。
「それって、魔虹石をお金で買えるってことですか……?」
──「通貨を渡して対価を得る」という意味であれば「購入」と呼んでも差し支えはありませんし、それで普段の運営に不都合はないでしょう。
それまでエメの隣で寝転んでエメの手を握ってぼんやりしていたアポロンが、不意に上体を起こした。エメはグリモワールから目を離して、少しアポロンを見る。
アポロンはどこか不思議そうな顔をしてエメをじっと見詰め、何か言いたそうな顔で口を開いたり閉じたりしていたけれど、やがて困ったように口を閉じて俯いた。
エメがまたグリモワールの方を見ると、グリモワールは魔虹石錬成の説明を続けていた。エメはその指示の通りに魔虹石錬成の頁を開く。
──
〜 魔虹石錬成 〜
・【限定】魔虹石2個 1銅貨
残り28日 1回のみ購入可能
・【限定】魔虹石20個 12銅貨
残り28日 1回のみ購入可能
・【限定】魔虹石30個 18銅貨
残り28日 1回のみ購入可能
・魔虹石1個 1銅貨
・魔虹石6個 5銅貨
・魔虹石16個 12銅貨
・魔虹石40個 29銅貨
・魔虹石72個 49銅貨
・魔虹石155個 100銅貨
──
──1銅貨で魔虹石1個が錬成できますが、一度にまとめて錬成する方が効率が良くなります。
「この、限定というのはなんですか?」
──ダンジョンでは時折、錬成に効率の良い状態が発生します。期間も回数も限られていますが、通常よりも多くの魔虹石が手に入ります。今なら、1銅貨で魔虹石1個のところが、魔虹石2個手に入ります。実際に錬成するかどうかは、マスターの判断にお任せします。
「1銅貨なら、試しにやってみても良いのかな。魔虹石はいろいろ使うみたいだし、所持上限もないし」
エメが頁を前に悩んでいると、アポロンが両手でエメの左腕にしがみついて、必死な声を出す。
「エメさん、エメさん」
「え……なんですか」
エメは腕に感じる重みに考え事を中断されてアポロンを見る。アポロンは眉を寄せて不安そうな顔をしていた。
「エメさん、まだ終わりませんか?」
「ええっと……そうですね、この後ダンジョンの
「えっと……いえ、なんでもありません」
アポロンは困ったような顔で、それでもやはり何も言わなかった。俯いてエメの腕から離れると、エメの左手の指先を両手でそっと包んだ。エメはアポロンの様子が気になりはしたものの、それ以上のことは何もできそうになかった。
グリモワールの方を見て、なんの話をしてたんだっけと思い出しながら話を再開する。
「魔虹石錬成は、また後にします。先に
──では、全体の
「あ、はい。ありがとうございます」
──いえ、こちらこそ。マスターと出会えたことは、とても幸運でした。改めてこれから、よろしくお願いします。
「そんな。わたしの方こそ、よろしくお願いします」
目の前の
「まずは、
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