第十六話 エメはSRモンスターを手に入れた?
魔虹石や魔水晶を使って
逆に、そうでなければ
──先ほど
──魔虹石
「十体じゃなくて十一体なんですね」
──はい。そのほうが契約がしやすいので、その分少しだけ効率が良くなっています。
「魔虹石を全部使うのもったいないかなって思ったんですけど、その方が良さそうですね。わかりました」
グリモワールの操作にも、エメはすっかり慣れてきた。
──
〜
魔虹石
・魔虹石モンスター
・魔虹石アイテム
・魔虹石内装
魔水晶
・魔水晶モンスター
・魔水晶アイテム
・魔水晶内装
──
──操作に関してはもう
「はい。魔虹石モンスター
エメは右の頁に詳細が表示されるのにも慣れてきたつもりだったけど、
「この絵に描かれている、これ、これもモンスターなんですか?」
──はい。ここに描かれているのは、
──どのようなモンスターと契約できるかは「契約可能モンスター」の頁から確認できます。契約確率についても、その頁でいつでも確認可能です。が、マスターの場合は表示されている確率と違ってしまっているので、後で
「待ってください。契約確率ってなんですか?」
──契約確率というのは、この場合
「それで、その契約確率の何が違ってるんですか?」
──マスターの
──例えば、
「ええっと……それって……?」
──簡単に伝えるならば、
エメは首を傾けて考える。
「それって、良いことでしょうか?」
──良いことです。これがあるから、
手放しに素晴らしいと言われて、エメは口元を緩めた。最後にこんな風に認められたのはいつだっただろうかとエメは思う。
──では早速、
──11連
「わたし、
エメは頁に大きく描かれた強そうな
──そればかりは確率なので保障はできません。多少出やすくはなっていますが、
「でも、手に入るかもしれないってことなんですよね」
グリモワールの言葉の意味がわかっているのかどうか、エメは機嫌良くそう応えた。それから「11連
「11連
エメの声に反応して、頁に確認の
──
魔虹石50個を使用して、11連
現在の所持数 51個 → 使用後の所持数 1個
本当に11連
──
エメは大きく息を吸ってから、それに応えた。
「はい」
グリモワールがエメの手を離れ、その表紙をぱたんと閉じると、静かに床に降りた。
床にある状態で、また表紙が開かれる。そこから白い光が溢れ、ぱらぱらと頁がめくられる。白い光の中から、丸い光が飛び出してきてグリモワールの上に浮かぶ。丸い光は様々な色で次々に飛び出してきて全部で十一個。銀色が七つ、金色が三つ、それから虹色が一個だ。
グリモワールが全ての頁をめくり終え、溢れる白い光が消えるとぱたんと裏表紙を閉じた。そしてまた、エメの膝の上に戻ってきて、新しい頁を開いた。
宙に浮かんでいる丸い光が、順番に弾けていって、中からモンスターが現れた。最初は銀色の光から
──十一体もいるので、確認したら部屋に送りましょう。そのモンスターの名前に触れて「部屋へ移動」と命令してください。
さっきまで何も書かれていなかったページに、「
「部屋へ移動」
そうやって残りの銀色の光から出てきたのは
エメはその姿を確認しては部屋へ移動させる。部屋というのがどこにあってどのような場所かわからないので少し不安だったけれど、あとでグリモワールに聞こうと思っていた。今は質問する余裕がない。
金色の光は
「
──
「撫でても大丈夫でしょうか……?」
恐る恐るといったようにエメはグリモワールを手にしたままソファから立ち上がって、
エメはグリモワールの返答を見る前に、
──契約モンスターなので危険なことにはなりませんが、撫でるなどのスキンシップは、もう少し信頼関係を
頁上に綴られていた言葉が途中で考え込むかのように止まる。そして、新しい文章が綴られ始めた。
──「スキンシップ」は信頼度が上がってからの機能のはずですが……いや、具体的な信頼度の数字は非公開情報でした、なんでもありません。
そのどちらも、エメは
エメの片手で支えられていたグリモワールが、エメの注意を引くようにじたばたと表紙を動かす。エメは慌てて
──マスター、今は
「あ、そうでしたね。すみません」
エメは
最後に虹色の光が弾けて、その中から人型のモンスターが現れた。
美しい青年だった。弾けた光の粒がきらきらと周囲を舞い、まるで青年自身が光り輝いているようだった。太陽のように輝く
燃える炎のような色合いの瞳が、周囲を見回す。表情はどこか自信がなさそうで、まるで迷子のように不安そうだ。神々しいまでの美しさに似つかわしくない表情に、エメは首を傾けて、それから手元のグリモワールに視線を落とした。
──ネームドモンスターなので、本来ならば名乗りがあるはずなのですが。
「名乗り?」
──いえ、話を進めましょう。おめでとうございます。
グリモワールが、突然文章の途中で綴るのをやめて沈黙した。召喚したモンスターの
エメが改めて目の前のモンスターを見上げると、目の前のモンスターは首を傾けてエメを見下ろして口を開く。
「良いにおいがします」
そのモンスターはどこかぼんやりした声でそう言うと、エメのツムジの辺りに鼻を寄せてきた。思わず一歩下がろうとしたエメの両方の二の腕をがしっと掴んで、エメの頭に唇を付ける。
「え、え……? なに……? なんですか……?」
エメの視界は真っ白いトーガを纏った胸板で塞がれている。エメは何が起こっているのかわからずに、体を強張らせたまま、それ以上動けなかった。エメの腕を掴む力は強く、逃れようとしても敵わないだろう。
不意に頭の上から重みが消えて、モンスターの体がエメから少し離れた。エメの腕を掴む力はまだ強くて、エメは動けない。モンスターは、その綺麗な顔でぼんやりとエメを見下ろしていて、炎のような色の赤い瞳が、今は熟した果物のように潤んでとろりとしている。
「あ……目、赤くなった、綺麗です……
モンスターが掠れた声を出して、またエメに顔を近づけようとしたところで、グリモワールがまるで羽ばたきのようにばたばたとエメの手の中で暴れ出す。突然のことにモンスターの手が緩んでエメの手元を見下ろした。エメもそれでようやく動けるようになって、慌てて一歩下がる。
グリモワールがエメとモンスターの間を遮るように浮かび、エメに頁を見せる。
──調査に時間がかかりました。どうやら
「そっか、移動させれば良かったんだ」
エメは慌ててグリモワールの頁に触れる。
「部屋へ移動」
これまでのモンスターは、エメの言葉と共にすぐにその姿を消したけれど、目の前のモンスターは消えなかった。慌ててもう一度「部屋へ移動」と命令するが、なんの反応もない。二度三度試しても駄目で、エメは自分が間違っているのかと焦る。
──
珍しく、グリモワールの綴りが乱れていた。グリモワールも焦っているのかもしれないと思って、エメはより一層怖くなった。
「
──見た目も表記も
エメには、グリモワールの言葉の一部しか、意味がわからなかった。わからなかったけれども、なんだかヤバイことになっているということだけはわかった。
エメは顔を傾けると、恐る恐るグリモワールの頁から顔を覗かせて、モンスターを見た。
モンスターはエメの顔の角度に合わせて首を傾けると、それからにっこりと嬉しそうな笑顔になった。まるで母親の姿を見付けた子供のように。邪気も屈託もなく、ただ目の前に大好きなものを見付けたという顔。
エメはさっとグリモワールの頁の陰に隠れて、泣きそうな顔でグリモワールに問いかける。
「それで、このモンスターは、どうしたら良いんですか?」
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