第十五話 エメは集客をする
──ダンジョンの活動は再開しましたが、このままでは冒険者がきません。ここにダンジョンがあることを知ってもらう必要があります。
「あ、そっか。確かに、ダンジョンがあることを知らなかったら、誰も来ませんよね」
ダンジョンを
「でも、どうしたら良いんでしょうか」
──このような時には
ダンジョン管理頁の下にあった「
──
「え、それって……大丈夫なんですか……突然転送されたら、その人って困りませんか……?」
──
「ちょうど良いってなんだろう……大丈夫なら良いのかな……」
エメは口元に手を当てて考え込んでしまったが、グリモワールはエメの結論を待たずに綴る言葉を続けた。
──メテオールのダンジョンの力が及ぶ範囲は、一番近くのメテオールの村とシロシュレクくらいです。
──本来なら冒険者を
──今の
「お互いの利……そうなのかな……」
それでもまだ考え込んでしまっているエメに、グリモワールはさらに言葉を綴る。
──マスターは
「え……ダンジョンに……それは、喜ぶかもしれません……」
エメは「かも」と口にしたが、言ってから、きっと喜んで探索をするだろうなと思ってしまった。ずっと憧れていたダンジョンが目の前にあって入って良いなら、きっとやる。
──もちろん、
──どこの村にも、冒険者に憧れて自分の腕を試したいと考えている若者は一人くらいいるものです。過去のあなたのような存在に、夢を与える行為でもあるのですよ。
グリモワールのその言葉に、エメは頷いた。過去の自分のような人が喜んでダンジョン探索をするなら、そんなに悪くないと思ってしまった。
「わかった。
──はい。
頁内の「魔水晶で
──
魔水晶を10個消費して
現在の所持数 100個 → 使用後の所持数 90個
本当に
──
「はい」
エメの言葉と共に、部屋の隅に積まれていた魔水晶の光がほんの少しの間、強まったように見えた。
──
──
──見付かったようです。正面の
正面の壁一面は艶やかな黒い石だった。それは、ダンジョンの
その壁一面の石が光り出して、ぼんやりと何かが映る。その光はだんだんくっきりとしながら、人の姿を映し出した。
エメがぼんやりと壁に映し出された光景を見上げていて、グリモワールが綴る言葉を見ないので、グリモワールは宙に浮かび上がってエメの視線を遮るようにその目の前に頁を差し出した。
──この部屋では、ダンジョン内の様子が確認できるようになっています。今映っているのは、このダンジョンの
エメは両手でグリモワールを持つと、膝の上に乗せて視線を落とした。
「それで、どうしたら良いんでしょうか」
──この後、彼が
──
「ああ、ダンジョンの入場制限ってそういうことだったんですね」
──そうですね。もっとも、マスターの場合は
「あ、魔水晶も減っちゃうんですよね。さっきのヒールポーションの分」
──良い質問です。
──ですが、魔水晶が消費されるのは、人が
──今回であれば、彼がスライムを倒してドロップしたヒールポーションを手に入れた時だけ、魔水晶が消費されます。
エメは頷いて、また壁に目を向けた。その中ではちょうど、さっきの若者が
エメの膝の上のグリモワールが突然表紙を閉じて、また開いた。エメがまたグリモワールに目を向けると、
──
試しに見てみろということだなと、グリモワールの
──
〜
・New 「ダンジョン1」を
MP-62
>
──
──
壁の中では、若者が近くに落ちていた木製の剣を拾い上げて、スライムと戦っていた。実際に冒険者としてモンスターと戦ったこともあるエメから見ると明らかに戦いなれてなくて、すぐに
最後にはなんとかスライムを倒しきってエメはほっと息を吐く。ドロップしたヒールポーションを拾い上げて、やり遂げた顔になっているのを見て、エメは小さく拍手した。
──
──どのような
「そっか……わかりました。頑張ります!」
──やる気になるのは良いことです。あ、
──
〜
・New 「ダンジョン1」が
魔水晶−2 魔虹石+1
>
・「ダンジョン1」を
MP−62
>
──
「あれ、魔水晶の減る数がおかしいですよ。それに、この魔虹石
──細かいところに気付いて素晴らしいです。説明するので「
「あ、はい。えっと、ここの文字で良いのかな……
エメは「魔水晶−2」と書かれている下の「
──
〜
探索人数:1人
魔水晶生成数:+2
魔虹石生成数:+1
──
──これが、今回の探索の記録です。
「探索で魔水晶が増えるんですね」
──そうです。そして、これが
──ダンジョンは
「
──一回の探索では、通常は
「今回は、魔水晶減ってしまいましたけど……」
──そうですね。今回は、
──通常は、入手の見込み量から
「え、難しそうですね」
エメは頁を見て難しい顔をして固まってしまった。なんだかいろいろ考えることがありそうに思えて、困惑して眉を寄せる。
──大丈夫です、だんだん慣れていきましょう。
「う……はい」
エメがなんとか頷くと、グリモワールは話を切り替えた。
──では、次に進みましょう。先ほど
──まずは
エメはぽかんとしたまま、小さく「
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