第十三話 エメは初めての報酬を受け取った
グリモワールの
「この、名前の下のレベルとかって何ですか?」
──あなたのダンジョンマスターとしてのステータスです。詳しくは後で説明します。今は
親切に、中表紙の右隅に青白い光の矢印が現れ点滅する。ここをめくれということかと、エメはその指示の通りに中表紙をめくった。
見開きの左の頁に
──この頁から、様々な機能へアクセスできます。一度
──一回やってみましょう。
グリモワールは本の中程までぱらぱらと頁をめくった。何も書かれていない頁の左上に矢印が現れた。その脇に、言葉が綴られる。
──ここに触れて「
言われた通りにエメは頁の左上、光の矢印が点滅している箇所に指先で触れる。その場所からほわりと虹色の光が丸く浮かび上がり、矢印の青白い光と混ざり合って揺れる。
「
エメの声と共に、指先の丸い虹色の光が、その光を強めながらぎゅっと輪を縮めた。
──
エメが手を離すと、指先にあった光が弾けるように頁全体に広がった。それからグリモワールは一度本を閉じて、開く。開いた頁は、さっきの
──
「あ……はい」
──では次は
言われるがままに、エメは左側の単語を読んでゆく。
──
〜
・
・
・
・ダンジョン管理
・モンスター一覧
・アイテム一覧
・内装一覧
・
・
・ダンジョンマスター情報
・ダンジョンマスターアイテム
・
・
──
戸惑っていると「
──契約書に定められた通り、本日分の報酬が振り込まれています。
「一つ上の『
──
「そっか……わかりました」
後で説明してもらえるなら大丈夫かと思ってエメは頷いた。ただ、
グリモワールの言葉は続く。
──
とにかくエメは言われた通りに
「
エメの言葉に反応して、今度は指先の光がすぐに頁全体に広がる。右の頁に綴られていた言葉が消えて、そこに新しい文字が浮かび上がってきた。
──
〜
・契約報酬(1日目)
魔水晶 100個
魔虹石 50個
>まとめて受け取る
>履歴
──
その余白に、
──
──
「ええと、ちょっとまだよくわかってないけど……グリモワールさんでしたっけ、毎日あなたを開けば良いってこと、ですよね」
──理解が早いですね。ダンジョンマスター業務を行うのであれば、
「わかりました」
そんなに難しいことを要求されなくて、エメはほっと頷いた。グリモワールは言葉を続ける。
──それらの
──
──どちらでも、お好きなやり方で
エメはそっと「契約報酬(1日目)」と書かれた文字に触れる。
「ここで良いのかな」
──はい。素晴らしいです。そこであれば「受け取り」と命令すれば、この
エメの呟きにグリモワールが応え、エメは頷いた。
「受け取り」
エメがそう声に出すと、エメが触れていた「契約報酬(1日目)」という文字に横線が引かれ、白い光が頁から溢れ出した。
そしてそれと同じタイミングで、部屋の隅にも白い光が現れる。エメがグリモワールから視線を外してそちらに目を向けると、白い光は徐々に小さくなってゆき、やがてそこに白と虹色の鉱石の山ができていた。
グリモワールから溢れた光も収まっていて、「契約報酬(1日目)」という文字が書かれていた箇所には、代わりに「受け取れる
──おめでとうございます。これで受け取りは完了です。受け取った
──今は
「あれが、
エメは部屋の隅に現れた鉱石の山をぱちくりと瞬きして眺めていて、グリモワールの綴る言葉を見ていなかった。グリモワールはエメの視界にその体を滑り込ませる。
──はい。近付いて、手に取ってみてください。
その鉱石は、魔水晶と魔虹石というのだとグリモワールは綴った。
透明な中に仄かな白い光を湛えているのが魔水晶。その色を様々に変えて輝く不思議な石が魔虹石。それぞれ使い道が違うが、魔虹石の方が
エメはしゃがみ込んで、魔水晶を一粒手に取った。親指の爪ほどの大きさだ。
──これは注意点ですが、魔水晶はダンジョン内で保管できる数が限られています。今はダンジョンのレベルが1なので、魔水晶の
「
──一時的に
「え、そんなの不便じゃないですか。なんでそんなことになるんですか?」
──魔水晶の
──もし
エメは手にした魔水晶を見下ろす。手のひらの上でほんのりと淡く白く光る石は綺麗で、それが貴重なものなのだということはわかった。せっかくこうしてあるのに溶けてしまうのはもったいないなと思いながら手の中の石を眺めていた。
「これ、数ってどうやって確認したら良いんでしょうか。数えないとわからない?」
──
グリモワールがエメの目の前にすっと入り込んできて、エメの操作を待つ。エメは言われた通りに頁を目次から一枚戻して中表紙を開いた。
──
ダンジョンマスター エメ
ダンジョンレベル 1
魔虹石 50
魔水晶 100 / 1,000
> 詳細
──
「ここで確認できるんですね」
エメの声に、グリモワールは頷くかのように頁を揺らした。
──この頁では、ダンジョンマスターとしての簡易なステータス表示を確認できます。「詳細」という文字に触れて「詳細」と命令すれば、より詳細なステータス表示を確認できます。
──より詳細なステータス表示は
「そうだ、他にも聞きたいことがあるんですけど」
──どうぞ。
エメは、グリモワールに見せるように手の中の魔水晶を持ち上げた。そうして、本当にグリモワールが見えているのかはわからない。けれど、グリモワールはまるでそれを見ようとしているかのように、本の角度を変えた。
「
──魔水晶の使い道については、この後説明します。魔虹石には
「だったら全部魔虹石にすれば良いのに」
エメの独り言のような呟きに、グリモワールは応える。
──ダンジョンは通常、
──それとは別に、魔虹石を確実に生成する方法もあります。詳細は後ほど説明しますが、どちらの方法にしても、魔虹石は貴重なものです。
エメは魔虹石の方も手に取って、魔水晶と並べて手のひらに乗せた。魔虹石も魔水晶と同じくらいの大きさだ。違うのはその色合いだけ。ほのかに光を放っている様子は、どちらも神秘的にも見える。
エメはしばらくそうして、魔水晶と魔虹石を眺めて指先で転がしたりしていたけれど、やがて満足したのか、そっと山に戻して、それからグリモワールの方を見た。
──次はダンジョン運営の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます