第2話 実情
横山家の朝は忙しない。カチャカチャと鳴り響く食器の音。新聞とにらめっこする父。化粧道具を片手に鏡とにらめっこする姉。バシャバシャと忙しなく皿洗いをする母。そして、テレビのニュースキャスターが感情もなく原稿をつらつらと読み上げていく様を、じいっと無表情で見つめる総理。
それはいつもと何ら変わり映えのない横山家の朝に違いないのだが、どことなくいつもよりピリピリとした空気に包まれていた。原因はおそらくニュースキャスターから無味簡素に紡がれていくとあるニュースかもしれない。それは今、日本中をじわじわと侵食している不思議な現象である。その魔の手がここさいたま市にまでついに忍び寄っている、というニュースを今まさに読み上げられているのだ。
「昨晩未明、さいたま市内の男子高校生18歳が突如自室から姿を消して、その後行方不明となりました。警察は、東京や大阪をも震撼させている‘ロスト・チャイルド現象’との関連が強いとみて、目撃情報を呼び掛けています」
「怖いね」
姉の愛理が鏡に向かって、顔を巧みに整えながら、ぼそりとつぶやいた。
いつの間にか母も居間に腰かけて、テレビ画面にくぎ付けになっていた。父が神妙な面持ちで眼鏡を押し上げる。
「ただの家出の可能性もあるから、警察もなかなか動かないのだろう。これで、実名報道もされないのだから何の解決にもならないよ。不安が煽られるだけだね」
父が新聞紙を握り締めながら総理に視線を送る。母もまた不安そうな表情で総理を見つめる。総理は画面に視線を注いだまま、卵焼きを口に運んだ。
総理はこの不可思議な現象についてはただただ自分には縁遠い、遠い世界での出来事くらいに捉えていた。しかし、今日この度報道されたのは、総理たちが居を構えるさいたま市でのことだ。初めての被害とは言え、この心配性の塊とも言える横山家の面々からしたら大事件だった。長男の総理に危害が加えられないか。冷や冷やとした気持ちだろう。その異様な空気に一人取り残されたのは総理だった。総理はこの過剰なまでの過保護な家族を疎ましく感じていた。
「総理も通学中は気を付けるんだよ。何か相談があったらすぐに私に言いなね」
愛理は子犬を見つめるかのような優しい眼差しで、ぶすっとした表情の総理を見つめる。ばっちりと化粧が終わったようだ。
総理はほのぼのとした表情で味噌汁をすすった。
「ごちそうさま」
総理は軽く両手を合わせ、食器をキッチンのシンクへとのそのそと運んでいく。
「ちょっと総理、聞いてるの」
愛理の慌てた声が総理の背中に刺さるも、総理は目もくれず、シンク横の小さな棚から歯ブラシを取り出した。気だるそうに歯を磨く自身の姿を鏡に映しながら、総理はふと思った。
このロスト・チャイルド現象は謎だらけである。
全国の高校生たちが次から次へと謎の失踪を遂げているこの不思議な現象。ある精神医療専門家の考えでは、高校生の精神疾患が何らかの理由で集団的に流行したためだとか。また、別の専門家の考えでは、これは組織的犯罪に高校生たちが無差別に巻き込まれているためだとか。憶測の域を過ぎない意見ばかりが飛び交っているのだ。
総理自身は後者の考え方―高校生たちが何らかの組織的犯罪に巻き込まれ、誘拐されているのではないかと考えている。
ただ、自分には一切関係ない。未だに遠い世界の出来事のつもりでいた。
総理は歯磨きを終え、口内を水道水で洗浄する。洗い流されていく歯磨き粉の泡を見つめて思う。
果たして、この現象がいくら近所で発生したとはいえ、自分たちの生活に影響が出てくるのかと。総理の日常はいわゆる一介の高校生に過ぎないものだが、とても失われそうにないくらいの平穏ぶりだ。
渡井美稀、赤嶺大聖といった昔からの幼馴染らと同じ高校に通い、クラスも一緒。行き帰りも一緒。大聖が突拍子もないことを言い、美稀が突っ込む。そして、総理が冷静に反応する。小学校から幾度となく繰り広げられてきた光景だ。ほぼ例外なく学校のある日はこの光景が繰り広げられてきた。しかし、総理はその光景の中にただ一つだけ、とある変化を感じ取っていた。それについては、ロスト・チャイルド現象とは何も関係のない、そして些細なことだ。
「総理、遅れるよ」
母のこれまた心配そうな声が背中に降りかかり、総理は思考を中断した。手にした歯ブラシを水道ですすぎ、手のひらに水をすくって口に運び、すすいで吐き出す。
「駅まで車で送ろうか、総理」
鏡に映る愛理が得意げな表情であった。
「平気だ」
総理は慌てて玄関まで小走りで向かい、身支度を整えて玄関を飛び出した。
「行ってきます」
「あ、駅まで送るってば。総理」
姉の声を遮るように扉を勢いよく閉めた。
小鳥のさえずりとともに太陽の光が斜めに総理に向けて降り注ぐ。
そうだ。これがいつもの朝だ。総理は誰ともなしにうなずくと、住宅街の中を颯爽と駆け抜けていった。
県庁前駅前の人通りはいつものように忙しない。まるで、河川のように次々と駅舎内に人が吸い込まれていく。その水流のような人の群れを掻き分けていくと、茶色のボブヘアの小柄な少女が手を振りながら現れた。総理はドキッとした。
「おはよう、総理」
「おお」
総理のそっけない態度に対して、快活で健康的な少女の笑顔。
そこへ、ドタバタと慌ただしく姿を現したのは赤嶺大聖だった。3人の中で最も長身でスラッとした体型。抑えめの金髪が印象的だった。
「おはよーう。はー今日も華麗に登場だぜ」
駅内の雑音に負けずとも劣らないほどの大きな声だ。大聖は走ってきたのか、肩を上下させて腿に両手をついて息を整えている。とても華麗とは相対する状況に映るが。
「全然華麗じゃないじゃん」
美稀が笑う。
「あほたれ」
総理は安堵の溜息をこぼす。そう、これが総理の、いや3人の小学生の頃から何も変わることのない日常だ。
たとえ、このさいたま市に全国を震撼させるような異変が起きようとも、この俺たちの日常だけは奪わせまい。
3人で改札を抜け、目的の2番ホームへと降り、ほどなくして到着した電車にいそいそと乗り込む。
奥の扉の前を3人で占拠し、目的地まで談笑する。
「今日は現国のテストかあ。面倒だなあ」
大聖が伸びをしながら、気だるそうにつぶやく。
「ちゃんとやらないとまた橋本ちゃんが怒るよ、大聖」
美稀が意地悪そうに笑う。大聖はぶんぶんと首を横に振る。
「いやいや、でも面倒は面倒だからなあ。やりたくねえよ。ただ担任の教科だから、ちゃんとやらないと怒られるよなあ」
美稀が思い出したようにポンと手をたたく。
「昨日、大聖が授業ちゃんと聞いてないって橋本ちゃん怒ってたよ。大聖っていつも適当だよね」
「げえええ、まじかよ」
大聖の顔がみるみる青ざめていく。ふふふと優しく笑う美稀。
「本当だよ。職員室に学級日誌置きに行った時に、橋本ちゃんが怒ってたよ。何回も机叩いてたよ。壊れるんじゃないかってくらい」
美稀が声を上げて笑う。
「うわあ。もう絶対休み時間中のお説教だけは勘弁だぜ」
大聖は頭を抱えて、がっくりとうなだれた。
「この間のお説教は昼休み丸つぶれだったもんね。あ、総理は。自信あるの?」
美稀が総理の顔を覗き込んでくる。総理はやや顔を赤らめて、心臓がどきっとする。顔を背けてつぶやく。
「余裕なわけあるか、あほたれ」
美稀が再び意地悪く笑い出す。
「ふふ、まあそりゃそうか。前の現国の小テストの解答欄を1つずつずらして書いて40点下がっちゃったんだもんね」
「古傷を抉るな。あほたれ」
と、大聖が目を輝かせて総理を抱きしめた。冷汗のせいか、何故か大聖の手が湿っている。
「そうだったよなあ、総理。良かった良かった。お前も俺の仲間だったんだな」
「お前とは過程が違うんだアホ」
「でも、試験は結局のところ点数だからね。数字って残酷だね」
美稀が再び不敵な笑みを浮かべる。と、大聖が疾走して汗まみれの手をすっと差し伸べてくる。その瞳はらんらんと輝いて見えた。
「一緒に再テストとお説教受けようぜ。マイベストフレンド総理」
「うるさい」
総理は大聖の頭を叩いて撃退した。
そう、これが日常。俺たち3人のいつもの朝の光景である。
まもなく目的地の武蔵大宮駅だ。
武蔵大宮駅の東口に降り立ち、街中を北へ向かう。歴史ある神社の参道を越えると、途端に住宅街になる。その住宅街をさらに北へ進み、交差点を2回曲がると目的地の大宮聖征高校が見えてくる。
教室内はいつも通り、活気に満ち溢れていた。
3人で入るや否や、美稀を出迎える女子生徒が3人いた。噂話が何よりの栄養である宮葉と大槻、そして化粧の厚いモデル体型の田部井だ。これまた見慣れた光景の1つである。美稀は笑顔で3人の出迎えを受け入れると、そのまま教室中央に膨れ上がっていた女子生徒の群れに吸い込まれていった。
総理と大聖にも男子生徒たちからの出迎えがあった。いかつめの体格で素行が悪い坊主頭の飯尾と、背が低くほっそりとしているが怒ると手がつけられなくなる和田であった。飯尾らはクチャクチャとだらしなくガムを噛みながら2人に近づいてくる。飯尾はニカッと汚い黄色い歯を露わにして軽快に手を挙げる。
「よー大聖に総理」
「おお!飯尾!」
大聖も元気よく手を振り上げた。飯尾と和田は総理と大聖にとっては、高校に入学してからのいわゆる悪友ではあるが、学校内では比較的ゲームの話題でよくしゃべっていた。
と、その飯尾と大聖の背後にのそのそと蠢く小柄の少年がいた。飯尾はわざとらしくその蠢く少年にぶつかったふりをして、その少年の足を思いきり踏んづけた。蠢く少年は短く叫んで硬直した。
「ん?おお、悪いな。全く見えんかったわ」
飯尾はまたも黄色い歯を見せて笑う。
足を踏まれた少年は悲しげな表情を見せながら教卓正面の自席へとゆっくり足を運ぶ。名前は楠田京。楠田はボサボサの黒髪を振り乱し、腫れぼったい唇にゲジゲジ眉毛。あまり清潔感があるとは言えなかった。背は160cmあるかないかくらいだろうか。社交性は無く、男子も女子も含めて大半から無視されるなど、いじめられている少年だ。先程までのやり取りを見て、総理と大聖はややピリついた表情となった。特にこの2人はやり過ぎの印象があった。しかし、飯尾と和田はまだ楠田に聞こえるような声で罵倒している。
楠田は自席に辿り着いて再び硬直していたが、それに耐えかねたのか、泣きそうな表情を浮かべ、すっと廊下の方へと姿を消した。そして、それを見てクスクスと笑い出す飯尾と和田。
「おい、あいつの顔見たか?大聖。面白れーよなあ」
飯尾が腹を抱えて笑い出す。
「ああ、見たよ見た」
珍しく大聖が声のトーンを下げる。
「なあ和田、今度あいつから金巻き上げてやろうぜ」
飯尾が嫌らしい笑みを浮かべる。和田もまたにやりと意地汚い笑顔を見せてしきりにうなずく。
さすがに耐えかねた総理も溜息をつく。
「やめとけ、飯尾」
どうもこの悪童たちは調子に乗るととんでもないことを言い出すようだ。思春期の性なのか。さすがに本気とは思っていないが、この2人ならやらないとも言い切れない。
そこへ、教室の正面扉が乾いた音を立てて開いた。
「さあ、席に着くのよ」
快活な女性らしい高い声とともに、パンツスーツ姿の背の低い若い女性が教室に入ってきた。後ろ髪をポニーテールにして縛っている。
途端に自席へ慌てて戻る生徒たち。
廊下に出ていたはずの生徒らも勢い良く吸い込まれるように教室内に入ってきた。楠田ものそのそと自席へ戻っていく。
この快活な女性は総理たちのクラス担任の橋本多佳子である。まだ20代半ばくらいだが、生徒への教育に情熱を注ぎ、快活な挨拶もするので、生徒教師陣からも大変評判の良い先生であった。
橋本は教卓に手をつけるや否や、さわやかな笑顔を生徒たちに振りまく。
「起立」
そこへ学級委員の松坂が歯切れのよい号令をかけた。生徒全員が椅子をガタガタと音を立てて立ち上がる。生徒たちは緊張を帯びた表情で、正面の教卓の笑顔へ注意を向ける。
「礼、着席」
生徒たちはピシッと綺麗に一礼してドカドカと着席する。全員がしっかりと着席したのを確認した橋本は、キンキンと教室内に響き渡るソプラノを発した。
「では、朝のホームルームを始めるよ」
橋本は明るい笑顔をクラス全体に振りまく。
「…です。学園祭実行委員会は本日午後5時に視聴覚室へ。企業協賛についての話し合いと近隣関係各所への挨拶回りを実施する予定です。それと」
いつもの通り、淡々とテンポよく進むホームルームであったが、最後の通達だけ橋本の声色がずっしりと重くなった。
「こちらは世間を騒がせているロスト・チャイルド現象がついにさいたま市内で発生してしまいました。高校3年生の男子で、ここ最近ずっと家に閉じこもりっぱなしだったようです。家族とも会話がほとんどなく、食事もほとんど摂っていなかった。確かに人とのコミュニケーションが減ってしまっている印象の現代ですが、何か悩みや不安がある人たちは友達、ご両親、ご兄弟、もしくは私まで遠慮なく相談する癖をつけてください。学校に常設している相談室でも構いません。何も1人で抱え込む必要はないんです」
橋本の熱心な訴えとは裏腹に、生徒たちはぽかんとした表情を一様に浮かべていた。総理が思うに、これがいわゆる世間のロスト・チャイルド現象に対する熱量なのだろう。インフルエンザほどの関心事ですらない。実際、同じ市内の学校とは言え、全く見知らぬ年上の生徒がいなくなったところで、無関係な人にはその被害者やその家族の気持ちなど到底わからないのだ。
「とまあ、真剣に重い話をしちゃったけど、このクラスはまあ大丈夫か」
橋本もぺろりと舌を出して額に手を当てる。それを見て、生徒たちはようやく笑顔を見せた。
ホームルームがほど無くして終わると、生徒たちはいつも通りに授業の支度や休憩やらをして思い思いに過ごしていた。ホームルーム中よりもリラックスした表情を取り戻した生徒たち。橋本は怒ると大変なのである。
総理は大聖の席へと足を運ぶ。
「随分あっさりしてたな」
「まあなー教師からしたらさすがに注意喚起しないわけにはいかないだろうからな。橋本ちゃんも少しガチってたぽいしな。ただ、俺らは実感わかないしあっさりしてたよな」
「そうだな」
「あーそんなことよりも現国のテストがマジで嫌だぜ」
大聖は勢い良く机に突っ伏した。このクラスの全生徒の本日の関心事は間違いなく現国のテストただそれだけだった。
昼休み。総理、大聖、美稀に加えて宮葉、大槻、田部井の6人でカフェテリアスペースの一番端っこの一画を占領していた。周囲の生徒たちも同じように各々テーブルを占領して、各自の弁当を開いて談笑しながら昼食を堪能している。いつものようにくだらない世間話でひとしきり笑い終え、宴もたけなわといった雰囲気であった。弁当もすっかり食べ終え、残り時間はリラックスしてだらだら談笑する。この、全神経を昼食の消化に費やしている時間が贅沢であった。
「あー怖い現国」
大聖は先程から呪文のようにそれだけしか言っていない。
「もうあきらめよ」
宮葉が力なく言った。宮葉と田部井も学業はあまり芳しくなかった気がした。大槻は学業優秀だった気がする。
「うるせえ。俺はリーチかかってるからがんばらないといけねえんだよ」
ふてくされるように大聖が言う。このメンツの中でも大聖は学力はドベであった。
「史織、怖いと言えば都市伝説のネタないの?」
勉強の話題に飽きたのか、宮葉が田部井を見つめる。美稀がえーと悲鳴を上げた。
「やめてー怖いの嫌だよー」
昔から美稀は怖い話が嫌いだった。小学生の時に美稀が総理の家に泊まりに来た時、夏の怖い特集番組を2人で観て、子犬のように怖がり、夜中トイレに起こされてついて行ったことがあった。それ以来、総理と大聖は美稀の前で怖い話の類はしないようにしていた。ただし、他のメンツがいる時は例外である。特にこの田部井は都市伝説といった類の話が大好物であった。付き合っている年上の男性が複数いることも関係しているのか、そういった芸能ゴシップや裏話、都市伝説をやたらと仕入れることができるようだ。これに関しては、総理も大聖も心の底から楽しめた。
いかがわしいことばっかりしているただのギャルには違いないが、筋の通った話ぶりなので、総理も大聖もすっかり感心してしまっていた。
「そうだねー最近はやっぱりあれじゃない?ロスト・チャイルド現象」
「おお」
美稀以外の一同がピクリと好反応を示した。田部井も得意げな笑みを浮かべる。
「私のパパに教育委員会の関係者がいてさ、その人からいろいろ話を聞けるんだよね」
「大丈夫かよその教育委員会」
総理がつぶやく。教育関係者なのに高校生と交際をするのは教育上いかがなものか。もちろんここでいうパパというのは血縁関係にない。
「大丈夫だよ。ちゃんと仕事してるからー」
「そういう意味じゃない」
田部井の的外れの回答に総理は溜息をこぼす。
「まあとりあえず続けてくれよ田部井ちゃん。で?どういう話を聞くの?」
大聖が軌道を元に戻す。田部井は真っ赤に塗りたくった唇を妖艶に動かす。
「それがさーロスト・チャイルド現象って、日本政府の陰謀説が流れているの」
「陰謀?」
「そう、ようは最近の高校生ってたるんでるじゃない?」
「お前が言うな」
「横山君うるさい。でね、そのたるみ切った高校生たちをねー政府の雇った人たちにさらわせているっていう噂」
「えーマジかよ怖い」
大聖が大袈裟に身震いしている。女子陣は訝し気な表情を浮かべ、疑っている様子だ。美稀は話を聞かない素振りを見せている。
「その雇われている人たちってのがねえ」
田部井が真っ赤な唇を開こうとしたその瞬間、突如、美稀が耳を塞いで懇願した。
「もうやめてよ史織!」
ガタガタと美稀は怯え切っている様子だ。と、田部井が頭をポリポリとかいた。
「あー美稀。ちょうど私も忘れたー」
「忘れたんかい大事なとこ」
大聖がテーブルの上に派手にずっこけた。周囲に後味の悪さが残らず、全員に笑顔が戻った。
「まあまた今度そのネタ仕入れられたら話すよー」
田部井がグッと親指を立てた。総理は美稀を見つめた。美稀は青ざめた表情で震えている。昔から美稀はそうだった。今回のこの件もなるべく話さない方が良いのかな。総理はそう思った。
やがて、昼休みの終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
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