極致魔法
魔法の終着点とされる極致に至った魔法――極致魔法。
その中で最も目立つのが、極致戦術型だ。この国は周りを他国に囲まれているので、攻撃的な魔法が目立つのは致し方ないことだ。
魔法がイメージを現出させるという観点から、通常であれば特定の魔法というものは存在しないはずなのだが、詠唱という方法を用いてこれを定型化させた。
そもそも魔法とは変幻自在の技能であるが故に、それを言葉で分類しようとすると多くのジャンルに分けられる。
特に、現代魔法は変幻自在とは程遠く、定型化された魔法を扱う魔法使いが多いがために、毎年、多くの新魔法が生まれている。
とはいえ、それは、あくまで新しいジャンルが増えたというだけに過ぎず、性能差はあまり変わらないというものが殆ど。
分類方法は簡単で、最初に難易度、次に型、大分類、魔法名と続く。
難易度とは、極致、高等、中級、初級の四つを指し、型は特化した型、つまり、戦術型、汎用型を指す。
基本的に、初級、中級に分類される魔法は汎用型しかないため省略され、高等も多くが汎用のため省略され魔法名のみを称すことが多く、高等戦術型もそれほど種類が多いわけではないため、高等魔法と称されることが多い。
対し、極致魔法はその難易度の高さから尊敬の意を込めて、一切の省略なく称されることが殆どである。
極致戦術型とは、戦闘用魔法である戦術型の先にあるもので、四大公爵家や二つ名持ちが継承、あるいは生み出した一種の奥義のようなものなのだ。
他国に囲まれたこの国で国を守る盾の様なものである以上、敬意を払われるのは当然と言える。
「それで、先生。極致魔法を講義してくださるのは嬉しいのですが――模擬戦の時も思ったのですがそれって?」
「極致戦術型戦略級魔法・《
「やっぱり、幻影なんかじゃなかった! 何故、先生が使えるんです!?」
「こっちの方が良かったですか?」
そう言って見せたのは昨日、習得した魔法。
実態のないはずの風が集まり、一羽の鳥となる。
それは、有効範囲内のありとあらゆる敵を察知する極致魔法。
「――極致戦術型索敵魔法・《
「例え相手が極致魔法であっても、イメージを掴むことが出来れば誰にだって扱うことが出来ます。
私もこの地に来て、《風見鶏》のイメージを正しく掴むことが出来ました。だからこそ、私の意思に応えて《
「そんな、無茶苦茶な」
極致魔法の真価とは現出したイメージを状況において変化させられることにある。
しかし、イメージを作り変えるのではなく変質させるというのは中々に難しい。
故に、極致魔法は膨大な処理能力を必要とする。
逆に言えば、処理能力とイメージさえしっかりと掴めていれば誰にでも扱えるということである。
「魔法師は血統によって優劣が決まるというのは間違いですが、血統によってスタート地点でリードしているのは間違いないんです。
少なくとも、劣等生と呼ばれる様な者が極致魔法を使おうとすると、血反吐を吐くような過酷な試練を数年単位で耐えきらないと無理でしょう」
「つまり、例えスラム街の様な場所に生まれた者でも、私の想像も及ばない様な剣山を積めば極致魔法を扱えるということですか?」
「そういうことです。実際、私はスラムの生まれという訳ではありませんが、何世代遡っても貴族と関係が全くない至って普通の平民として生まれましたから」
その言葉にイリヤは目を見開いていた。
無理もない。
ある程度の誇張はあると思っているが、少なくとも普通の平民では到底考えることが出来ないほどの功績を残してしまっている。
剣姫や女帝を作り上げたのもその功績の一つと言えるだろう。
それを才能ではなく、努力で成したと言っているのだ。
とてもじゃないが、普通に考えてありえないだろう。
だけど、もし、効率的に学んだのだとすれば、それは決して不可能なことではない。
何故なら、アイン自身がそういった環境で生活してきたからだ。
「先生は凄いんですね」
「凄い?」
「つまり、先生はそれほどの努力をされたということでしょう?」
「さぁ、どうなんでしょう。努力をしたというよりは、そうしないと生きていけなかった――という方が正しい気がします」
「生きていけない?」
「ええ。私は戦争孤児ですから」
アインも生徒相手にするべき話ではないと思ったが、イリヤが公爵家を継ぐ気があるのであれば知っておいて損はないはずだと考えた。
今も戦争によって親を亡くす子供がいるのだから……
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