第5部 さて戸叶英輔とは 2014年 1月下旬

渋谷のHMVででCD を物色してたら、女性店員から声がかかる。


「こないだ傘忘れていきませんでしたか?」


なかなかチャーミングなである。見た目は20代前半という所か……


「ありがとう。気が効くね」


戸叶英輔とかのえいすけはこの娘を誘いたいと思い始める。


「お嬢さん、ここの仕事は何時まで?」


「はい?」店員の顔が変わる。


「出来たらお茶したくて……」


「はあ?」


「何時まで?」


「ええと、あと1時間ほどです」


「じゃあ待ってるから、お茶しよう」


「はあ、まあいいですけど……」店員は首を傾げる。


こういう感じに英輔は相手がいながら、色んな女性に声をかける。


本人に悪意はない。


ルックスは美男子ではないが、何か女性が引っかかるものを英輔は持ってる。


こんな古典的なナンパ方法で今時の女の子が引っかかるとは思えない。


だが英輔は一貫してこんな方法でナンパしてことごとく成功していた。


彼女は佐々岡理梨子ささおかりなこ24歳。HMVの制服のイメージとは違う白を基調としたファッションで、爽やかな印象だ。なかなかセンスの良いだなと英輔は思う。


英輔は相方の由々子の公認で女性をナンパしてる。「ほどほどにね」と由々子は他人事のように言ってる。


そんな簡単にはいかないと思うが、英輔がお茶した女性はほとんどが英輔の虜になる。


この事実を英輔は知らなかった。


サラリーマンのなりたくない英輔はフリーのアドバイザーを営んでいた。


時間の自由が利くからいくらでも女性とデート出来る。要は女性と話が出来ればいいのだ。下心もない。


佐々岡理梨子は英輔を笑顔で見送る。


理梨子は英輔の後ろ姿を見送りながら、なぜか鼓動がドキドキしていた。


罪な男である。


2021(R3)3/4(木)





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