第1部 可由菜 2013年の冬 12月中旬

上条可由菜かみじょうかゆなは渋谷の交差点を颯爽と歩いている。


アパレル関係の仕事をしてるバリバリの23歳のOLである。


彼女はスマホを取り電話に出る。上司の弓長輝子ゆみながてるこである。


「可由ちゃんランチどう?」


「弓長店長もちろんご一緒します」


可由菜は笑顔を転がしていつものイタリアンの店へ向かう。


ポニーテールを揺らし、クリクリした瞳のキュートなルックスは彼女を10代に見せる。


店の奥で弓長輝子が頬杖をついて薄く笑顔を浮かべている。


「店長、誘っていただいてありがとうございます」


「まあ、リラックスして座りなさい」


「はい、失礼します」


弓長は相変わらず薄笑いを浮かべてる。


「店長、私顔に何か付いてます?」


「その後例の彼はどうしたの?」


「例の彼と言っても決まった人がいるんですよ……ただなんとなく食事しただけ……」


「なんとなくだけで一緒に食事するかな?前に聞いた時あなた瞳を輝かせてたわよ」


「やめて下さいよ〜店長、本当にそんなんじゃないから」


可由菜はあたふたしてる。


「名前は知ってるの?私に教えてくれない?」


「う〜ん」可由菜は困った時に人差し指をおでこに当てる。


「誰にも言わないで下さいね」


「いいわよ」弓長は腕を組み直す。


戸叶英輔とかのえいすけさん……」言った瞬間可由菜は顔を真っ赤にする。


その様子を見逃さない弓長は「幾つなの?」と聞く。


「30代半ばくらいですかね?」


「年齢の釣り合いとしてはいいじゃない」


「店長本当にやめて下さい。そんなんじゃないんです……」


可由菜は手を振って否定するが、目は笑ってる。





「で、その紳士どうするのよ」


山海靖子やまうみやすこはコーヒーゼリーを食べ始める。


「どうって言われても……」


夜景の望めるレストランで可由菜は靖子と食事を取っている。


彼女は大学の同級生である。


「あのね、靖子」可由菜は靖子の顔を引き寄せて。


「いい?これトップシークレットだから誰にも言わないでよ?」


可由菜はクリクリの目を凛々しく光らせる。


「それほど本気ってこと?その紳士が?」


「だからあ……」


可由菜はまた人差し指をおでこに押し当て「そんなんじゃないんだってば!」


靖子は「ならなんでトップシークレットなの?本気だからでしょ」


可由菜は腕で顔を覆って撃沈。


「ほら、やっぱ本気なんだ」靖子は高笑い。


可由菜はむくれた顔で「いじわる……」


「その人30代半ばでしょ。男盛りじゃない?リードしてくれるんじゃない?」


靖子がそう言った瞬間可由菜は顔を真っ赤にして、口を歪める。


「あんたほんと可愛いわ、17歳の乙女みたい……」


「何それ〜」可由菜は地団駄を踏む。そんな仕草も可愛い。





夜7時半に可由菜は帰宅。パパが出迎えてくれる。


「可由菜、あっちの方は元気?」


可由菜は呆れ顔で「もういい加減訴えるわよ!パパ!」


パパはニヤニヤしながら居間に入る。


パパは53歳。娘に下ネタ連発の信じられない人……でも可由菜はパパが大好き。いつも一生懸命働いてくれるし、やっぱり大好き。


ママは資格オタク。


今語彙・読解力検定1級を目指してる。


今迄簿記1級、英検準1級、2級建築士などなど10個くらいの資格持ち。


ママはいつでも机に向かってるイメージ。49歳の女ざかりなのにもったいない。


でも盛りなんて人それぞれだもんね、関係ないか?……私だってさあ、女ざかりじゃないの?23歳って若すぎる?んなことないでしょ……んもう。


可由菜は枕に顔をうずめて、夢で英輔さんに会えますように……。


2020(R2)7/12(日)





















































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