第二話 初めて出来た彼女は〝ちょっと〟変態でした。
こうして初めての彼女が出来た俺なのだが、初めて故の悩みに際悩まされる羽目になるとは思わなかった。
まず、デートっ何すりゃいいのさ?
俺の家から高校まで電車で揺られる事30分。未来の家も電車で揺れる事30分。
俺の家とは真逆の方に。
そして田舎らしく、畑に囲まれた高校。近くに存在するのはコンビニが申し訳なさそうに一つ。
遊ぶためにはお金が無きゃ会えないし、会う為にも電車賃がないと会えない。そして俺は部活をしながらスマホ代を親に支払ってもらっている為にお小遣いなど無いに等しい。
チャリで会いに行くしかないか・・・。
デートはまた後で考えよう。
あれから部活が終わると毎日駅までは一緒に行く事にしている。
帰り道、俺は上手く話せているのだろうかと不安になるが、何か話す度にコロコロと笑う未来はやっぱり可愛い。
そんな駅までの道のりの途中、急に会話が無くなったと思ったら未来が俺の手を握ってきた。初めての感触と、温かさに動揺しながらも未来を見ると、顔を真っ赤に染めながらもこちらを上目遣いで見てきていた。
そこではじめて未来を〝女〟だと意識してしまった。
部活終わりの汗ばんだ体に、秋が終わろうとしている頃にしては眩しい日差し。その日差しのせいで制服のシャツから覗く柔らかそうな大きなモノに目が映り、ダメだっと思って視線を上げると、潤んで見える大きな瞳。プルンっとした唇。
どれもが女を感じるには充分すぎる。
急な理性崩壊の危機に目を逸らすことで対応した俺は紳士だと思う。
・・・一応手はギュッ、ギュッと二回握り、俺なりに嫌じゃないよってことをアピールしたつもりなのだが伝わっただろうか?
*
結局初めて手をつないだ日には恥ずかしすぎて記憶が軽く曖昧ではあったんだけど、それからも毎日手を繋いで駅まで帰っている。
そんなある日、相変わらずの夜9時。
根洗ったかのようにスマホが着信を告げる。
もちろん液晶には《かず》の文字。
「お前なんでいつもこの時間なんだ?」
「知らないのか? 営業で夜電話するときは飯と風呂が終わった時間に電話するのが一番いいらしいぞ。リラックスできている時間だから大人しく話すのにはもってこいの時間と言う訳だよ。分かるかね?」
一体どこ情報だよ。
「高1で営業職の話をするのはお前位だろ」
「まぁそれはさておき、最近は未来ちゃんとどんな感じだ?」
最近、学校で暇が出来ると未来と一緒にいる事が多くて、友人とは電話の方が増えてしまっていた。そんな俺の事を気にかけてくれるかずはやっぱり優しいな、なんてガラにも無いことを思いながら嬉しくなってしまう。
「あぁ、上手くいっていると思うんだけどな」
「・・・そうか」
──ん?
なんでかずは俺が上手くいっているって言ってるのにそんな考える様な声で話すのか?
「どうかしたのか?」
「やっぱめんどくさいからさくっと言っちゃうんだけどさ・・・。なんか未来が幻滅してるらしいぞ?理由は分からんけど」
こいつは俺に幸せを運ぶコウノトリなのか、はたまた破滅を運ぶ死神なのか。
「それはほんとなのか?」
「まぁ、本人から聞いたわけじゃないんだが、女バレで結構愚痴ってるって話を聞いてな。不安に思った心優しい友人である俺は心配になった訳だ」
「そっか・・・。わざわざありがとな。そのわざとらしい言い方でなければ本当に最高な友人だよ、お前は。」
電話を切るも、かずの言葉が頭から離れなかった。
思えば未来とする話は殆どが笑い話や、あのグループがかっこいいだとか可愛いだとか、そんな世間話ばかり。
まぁ学生だからそんなもんなのかもしれないけど、将来の話とか夢だとかの話もしてなければ、将来設計なんて話したこともなかった。
──明日聞いてみよう。
*
翌日の部活帰り。
いつも通り校門で未来を待った俺はいつも通り二人で駅へと向かった。
少し違うのはいつも乗るはずの電車を見逃したこと。
「未来、今日はちょっとだけ駅で話さないか?」
「私は全然かまわないよ。むしろ嬉しいくらい」
俺も嬉しいわ。そんあ笑顔で見られたら。
でも、かずが教えてくれた事が本当なら、これも演技だったりするのだろうか? そんな不安が頭の中を駆け抜けていった。
「ちょっと変な話になっちゃうんだけどさ、・・・未来って俺になんか不満あったりする?」
未来が首を横に傾けて不思議そうな顔を作る。やっぱり何かの間違いだったのだろうか?
「不満だなんて・・・そんな事ないよ。結城と一緒に居られるだけで幸せだもん」
いや、すぐに理性を壊しに来るのはほんとやめて。思春期男児なんてなんだかんだで考えてること一緒だからさ。・・・でも好き。
「そっか、それならいいんだけどさ。──もし何か嫌な事とかあったら言ってよ。俺も直せるなら直すし、直せないときはちゃんと話し合いたいしさ。未来の事もっと知りたいし」
ハズイ。
今までこんな真面目に人と話したことが無い気がしてきた。
でも大事な人だから。後悔だけはしたくない。
人間エスパーじゃないんだから大事な事はちゃんと伝えておかないとな。
「ありがと。その時は必ず話し合おうね。そ・れ・と。結城もなにか私の嫌なところとかあったら言ってね。その時は私も頑張る!」
いや、今日だけで俺の理性何回崩壊させる気だよ。・・・好き。
***
結城と別れてから電車に揺られて30分。
自宅へと向かう帰り路の途中。私はスマホで発信履歴からすぐにコールする。
「はーい。どうしたの?こんな時間に」
「ねーかず聞いてー」
私が電話を掛けたのは
「ん??・・・もしかしてまた結城か?」
「そーそー。いやさーかっこいいとは思うし優しいけどさ~、なんで襲ってこないのよ!!」
ほんとこれ。
初めて手をつないだ時、あんないい雰囲気だったのに目を逸らすって何よ?
普通キスしたり、あんなことしたりこんなことしたりするんじゃないの!?
あれからも一向に手を出してくれないし!
「私に魅力ないって言うの!!?」
「電話で怒鳴るなって! 鼓膜破けるから!! ──いやほんとさ、何度も言うけどあいつ奥手なんだって。大切にしてもらってるんだからいいじゃねーかよ」
「まぁそうとも言うけど~私は──」
「「早く縛ってもらいたいの!」」
いちいち私の声に合わせてくる和樹はちょっとうざいし。
「もう何度も聞いたけど・・・お前ほんと変態だよな・・・」
「変態じゃないし!普通だし!」
「お前が普通だったら俺は一体どうなるんだよ・・・」
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お付き合い頂きありがとうございました。
三時間ちょっとで書いた物なので至らぬところも多々あるかとは思いますが、よろしくお願いします。
ご意見・ご要望・感想などありましたらどしんどしん送って下され。
いっぱい来ると作者が喘ぎます。
彼女は〝少し〟変態でした。 Rn-Dr @Diva2486
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