「裏切りの双十字」が、「仕置」の刃と化す復讐譚

人気テーブルトークRPG「ダブルクロス」シリーズの世界観で、「必殺仕事人」シリーズをやってみた、がコンセプトの作品のようです。

私は双方のシリーズについてある程度の知識がある状態だったので、読み進めるたびに「これはあの必殺シーンの再現だな!」「これは原作のあのエフェクトを使っているな!」など、芸の細かいオマージュネタが随所にちりばめられていることに気付け、とても楽しく読み進められました。双方の知識がない方でも読むことは可能だと思いますが、もしかしたら若干、ハードルは高めになるかも知れません。また、暴力描写や性的な描写が苦手な方は、一部注意が必要なシーンもある点はご了承ください。

しかし、そのハードルの高さを超えてしまえば、あとはめくるめく人情噺に、誰もが幸せを願いたくなる無辜の善人、そしてその善人に魔手を伸ばして幸福を破壊する外道と、その外道に裁きを下す主人公達――彼ら彼女らが入り乱れての、ジェットコースターのような作劇を楽しめること間違いなしです。

もちろん、必殺仕事人的な立ち位置である主人公達は、あくまで「薄汚い人殺し」に過ぎないのかもしれません。しかし、主人公達が敵にかける相手もまた、外道の所業に手を染めた鬼畜というべき人間であり、主人公達がその外道を徹底的に痛めつけて、地獄の苦痛と絶望と後悔を与えた末に息の根を止める、という結末には、背徳的なカタルシスを禁じえませんでした。

主人公達もいつかは、「薄汚い人殺し」として、破滅を迎える日が来るのだろうとは予想できますが、それでもなお劇中での救いが一部あるなどして、決して寂寥感しかない読後感であるところも評価したい点です。本作はシリーズ化もされているようなので、以降の作品において、ダブルクロス世界の様々なシンドロームで、必殺仕事人シリーズの必殺シーンをどう再現しているか、どう再解釈・再構築しているか、期待を持って読みたいところです。

末筆ではありますが、せっかくエグザイルシンドローム持ちのキャラがいるのだから、自身の肉体を糸状に変化させて、その糸状にした肉体を犠牲者の首にかけて梁の上に吊し上げる……という首吊り必殺シーンが見たかったのが、少なくとも本作では確認できず……。以降の作品に出てこないか、これから確認してみようと思います。

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