日本が12ドルで売却されたので取り戻してきます〜売国奴の息子だけどなんですか?〜
@musaoo
第1話 少年A
紅い液体が地面に染み込んでいくのをただ呆然と見ることしかできなかった。あれだけ憎んでいた父親が目の前で死んでいくのを見て浮かんだ感情に嬉しいなんてものは微塵もなかった。あれだけ死を願ったのにこうして目の前にして初めて後悔が押し寄せてくる。
確かに父親は壊れていた、だけどその引き金は間違いなく"俺"でこの国を地図から消してうっぱらったのは俺なんだなと思った。
泣くことは許されない
弔うことはできない
この国を必ず取り戻すと俺はこの日誓った
「"混じり者"が調子乗んじゃねぇぞ!!」
激しく突き飛ばされ尻もちをついていると、
顔に血管が浮き出ているパツキンちゃんにー
が近づいてくる
パツキンが語感的にパ○ツに聞こえるのは心が汚れているからかなとか他愛もない事を考えていると男は躊躇なく胸倉を掴み上げ、
「どうせお前には味方なんていないくせによぉ。自分の国を売るとかどうかしてるぜ」
それだけ言うと興味を失ったかのように去っていく。その背中に罵声を浴びせるほど俺は負け犬じゃない...男が言っていた事は真実だけど。
日本の年金機構が破綻してから早6ヶ月、日本は転げ落ちるように駄目になっていった。年金の給付が止まってしまった結果、老若男女がブチ切れ。でも皆んなが一致団結して政府を糾弾しているかと言えばそうじゃなかった。給付される側と納めていた側、老人と働いている世代の間には深い断絶が横たわっていた。誰もが真剣に日本が終わるなんて考えちゃいなかった俺も含めて。でも9月1日僅か3ヶ月で日本は12ドルでアメリカに売却され、アメリカ イースト州として併合される事になった。
でハーフである俺はぼっち特権階級。日本が世界地図から消滅した今のように日本人がいびられるのは日常茶飯事のことだった。俺はハーフということもあって日本人からは支配者側扱い、アメリカ人側からはまぁ、さっき言われた通りだ。どっちにも味方がいない。四面楚歌ふぇぇえ
現実逃避をしつつ、埃を被った制服を払う。胸元には支配者側であることをキラキラと主張する鷲のバッジが輝いてる。皮肉なもんだ
いつもは上手く立ち回ってチャーリーくん(さっきのパツキン)にサンドバッグにされることは無いのだが、今日はどうしたもんか、、と思案する。理由は明白。いつも通り昼休みに購買で販売される小倉フランスパンを買いに行こうとしていると見慣れた日本人狩りが行われていた。別に珍しくも無い日常の光景のはずだった、
だがあろうことか暴力を振るわれていたのは
見るからに日本人にはあり得ない
透き通るような銀髪をもつ少女だった。
「は?」
思わず目を疑う。日本人じゃないとすれば
あれは誰だ?そもそもうちの学校に銀髪なんて居たか?そんな疑問より先に体が動いていたなーんてカッコいい理由だったらどんなに良かったか。俺はただ少し腹が立った。
同族までも傷つける外道が俺らに重なって見えたのかもしれない。そんな利己的であまりにも情けない理由で俺は手を出していた。あーあ、俺の穏やかで平和な日常がなぁ。当然その子はどこかに行ってしまっていた。
「あ、小倉フランス買えてねぇ」
翌日、
チャーリーくんに呼び出された俺は予定調和という四字熟語がこれほど活躍するかと恨まずにはいられなかった。はい、ボコボコにされました。めちゃくちゃ痛いしアメリカ人強過ぎかよと遺伝子に抗議していた。当然日本人は助けてくれずむしろ「ざまぁw」みたいな視線が多かった。俺もいつもあんな感じで見てたんだろうなぁと仄暗い感情でとぼとぼ廊下を歩く。すると向こう側からなんだか騒がしい集団が近づいてくる。もちろん日本人が騒がしく歩いていたら粛清されるので彼らはアメリカ人だろう。端っこを歩いてなるべく視界に映らないように全力を出していると、先頭の赤髪ショートの美少女が歩いてくる。一瞬見惚れていると視線があったような気がして慌ててそらす。
「あなた、何見てるの?」
ばちばちに視線合っちゃったみたいですね。
「あ、すいません。この学校で赤髪は初めて見ましたので。」
「...あ、そう。」彼女は興味なさそうに再び廊下を歩き出す。というか後ろの取り巻き(?)うるさすぎだろ..
彼女の胸元についていたのは帆船と鷲のバッジだった。どうやら彼女はアメリカ海軍の関係者らしい。
夜になると東京はもういつの間にかかなり涼しい。地球温暖化で夏がだいぶ長引いているのは気がする。明かりを夜空に撒き散らす東京はいつかの景色と変わらない。だけど都庁のデスクで踏ん反り返っているのは白人で、この明かりはもうかつてのモノとは決定的に違う。変わりつつある市街を眺めていると誰かから声が掛かる。
「おーい。そんな所で何やってるんだ、降りてきなさい!」
バレてしまったのなら仕方がない、俺は慌ててコンテナの上から姿を消した。
なんでこんなコンテナ群にいるのかと言うと
どうもこの港で最近、人の声が聞こえると噂があるからだ。さっきのように作業員がいるのだから当たり前だが、どうも泣き声、罵声が聞こえるらしい。おそらく人身売買の類だろう。
が聞こえてくるのは海の小波の音だけ。
どうやら今日は大丈夫そうだと帰ろうとした時、「いやぁ!!!!!」と悲鳴が聞こえる
慌てて声のした方を探すが暗い上にコンテナのせいで視界が悪く人の姿は見えない。声が聞こえるという事はそう遠くない。コンテナの上を走りながら探す。声はもう既にしない、まずいなと思いながら海を見ると手前に小さな船が一隻ぽつんと浮かんでいる。一か八か出港される前に中を覗いて確認だ!
小さな船というのは遠くから見た印象に過ぎず近くにいくと全長15メートルは優にあるなかなかのサイズだった。クルーズ船仕様だが少し高さが低い。相当重い荷物を載せてるクルーズ船なんてもうコイツ、クロでよくね?と思いつつ乗り込もうとすると後ろから
「おい、お前何をしている」
と不機嫌な声がする
ゆっくり後ろを振り向くとそこには下卑た笑みを浮かべる白人小男とチャーリーが可愛く思えるような不機嫌なムキムキ黒人がいた。
胸元には、鷲の紋章までつけている。
兵士である事隠す気ゼロかよと呆れつつ
「いやぁ、僕すっっごい貧乏でこのクルーズ船持ってる人なら食べ物貰えるかなぁって。
ギブミーアチョコレートプリーズ?」
「hahah、今すぐ帰りなガキんちょ」
2人の後ろにはコンテナがある
「クズどもがッ」
言い終わるや否や黒人に向かって走り出す
俺は拳を引き絞り正確にみぞおちを穿つ
「Japが俺に勝てるわけねぇだ..べぼらッ」
一瞬で男が吹っ飛ぶ。いつから自分が強者になったと錯覚しているんだ一兵卒ごときが。
小男が慌てて逃走しようとするが頭を捕まえる。
「これは誰の指示でやってる?」
「い、いや俺はこのダンナに旨い話があるって聞いてやってただけで何も知らないんだ!」
「今すぐにブツを解放しろ」
何が入っているのか正確には分からないので適当にブツと言って分かっているフリをして誤魔化す。小男が指示通り出したのは大量の金塊と少女だった。嘘だろ...性癖ゴミすぎだろ..
分かっていたはずなのにショックが隠しきれなかった。小男はその後すぐに消え残されたのは大量の金塊と少女とのびている黒人
とりあえず黒人は監視塔の根本にロープでぐるぐる巻きにした上で機能不全と書いた紙を股間に貼っておいた
日本が12ドルで売却されたので取り戻してきます〜売国奴の息子だけどなんですか?〜 @musaoo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。日本が12ドルで売却されたので取り戻してきます〜売国奴の息子だけどなんですか?〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます