第15話 声
ホーリーは堂々と構え、こちらを睨みつけてくる。
「【ファースト・リコレーション】!」
まさか、まだ技を持っていたというのか。まあ俺が言えたことではないが。
ホーリーは緑色に光った。つまり身体強化だ。速さ、攻撃力共に向上する。
そしてホーリーは、俺に全力で近づいてくる。
「何っ!」
相手は弓なのにも関わらず、剣との打ち合いをしてくる。俺の剣が下手という事を見抜いてきたのだろう。それで弓対剣の接近という明らかな不利と思われる場面でも、接近戦を要してきた。実力ではこの世界の人に敵わない。ならばこちらは技で勝つまで。
「【ファースト・リコレーション】!」
俺も【ファースト・リコレーション】を発動させた。俺の体は赤色と緑色に光り、奇妙な感覚になってくる。
「これが身体強化か……」
俺の状態は俊敏性向上+身体強化。実力があっちの方が上だとしても、この速さにはついてこれまい。
相手は強い技を出せば出すほど、俺はそれをコピーしそれを利用する。それが俺の恐ろしさだ。
「【スピアキャロッシュ】!」
俺はトドメと言わんばかりに大げさに技を繰り出した。
「【アーティファクトコネクト】!」
相手は同じように防御技を使ってくる。そして相手は追い打ちに弓で殴り掛かってくる。
「ふっ……」
「【アーティファクトコネクト】!」
「【ハーリー・ブラット】!」
【アーティファクコネクト】にぶつかった反動により隙を狙って瞬時に【ハーリー・ブラット】を打ち込む。
ホーリーはもう一度【アーティファクトコネクト】を使いたいだろうか、【ハーリー・ブラッド】は技だ。発動する前に食らってしまう。
俺はホーリーの顔を振りぬく。宙でぐるぐる回転しながら吹っ飛び、観客席のある壁へ激突する。身体強化恐るべし。
会場の観客は一気に立ち上がると、歓声が沸き起こる。
俺は大会に優勝した。
表彰式等は全くなく、俺は待機場に戻ると、受付のお姉さんに案内され、オーディングブレードを受け取り、すぐに闘技場を出た。
闘技場を出ると直ぐにクリスが駆け寄ってきた。
「おめでとうサクト! 武器ゲットできたね!」
「まあな」
正直武器がゲットできたことよりも、あんな量の技を覚えられたことの方が価値がありそうだ。
「弓矢の人強かったねえ……」
「あの防御技は信じられないくらい強かった……まあコピーしちゃったんだけど」
「サクトのコピーはほんとに何でも出来るのかな?」
クリスが少し嬉しそうに聞いてくる。
「ってそういえば、クリスはなんで俺のサポートをしてくれるんだ?」
「……」
クリスは急に黙った。これ以上は聞かないことにしてみよう。
「まあいいや。ひとまずこのオーディングブレードがどんなのか試してみたいんだ!」
「そうだな。ランク戦でもやりに行こうか」
「でも今日は疲れたから明日でもいいか?」
「おうよ。今日はもう寝るんだな」
もう寝ると言っても今の時刻は5時。クリスは何故こんなにも早い時間に寝ることを進めてくるのだろうか。
なんやかんや8時くらいには寝てしまった俺は、朝直ぐにクリスと合流し、ランク戦に向かった。
「今のランクは68091位だから、今日は60000位は切りたいなぁ」
「サクト……一応言っておくが、普通そんなに爆速でランク上げる人いないからな?」
「爆速って、別にそんなに早くはないはず……」
「いや、普通の人は一日に多くて3000位くらいだよ」
そういえばポンドも勝ち誇った顔であのランクを言ってたよな……。やはりあの順位は異常なのか。となると俺の順位はもっと異常。
「まっ。でも直ぐにこの世界の辛さが分かるさ」
クリスはそう呟くと歩き出した。
「ランク68091位です。ランク戦いいですか?」
「おうよ。10000ゴールドで頼むよ」
「了解です」
前よりも上のランクに行くにつれて、提示額が高くなっている気がする……。まあ勝てばいい話なんだが。
相手のランクは67852位。武器は剣。なんだかんだ言って剣相手が一番こちら側として戦いやすい。
両者構えてバトルスタート。
「【ハイハイパー】」
「【ファースト・リコレーション】」
俺は赤緑に光る。相手は毎回同じ反応をする。卑怯だと。顔がそう言っている。
「【ディストーション】!」
これは……ポンドの【ロードスケール】の下位互換って感じか。ポンドはあのランクと値しないくらい強かった。特に技が。
「【ロードスケール】!」
相手の【ディストーション】と【ロードスケール】の斬撃がぶつかり合う。もちろん勝ったのは【ロードスケール】。もともとの技と言い身体強化と言い、相手が勝ものは何もない。
相手にクリーンヒットした斬撃は一撃で相手をKOさせた。
俺は無言で立ち去っていく。
「……この技は使いどころがないかな……」
このように使える技はしっかり暗記し、使えないと判断した技は直ぐに切り捨てる。これが俺のやり方だ。
「どう? オーディングブレードは?」
「わからん」
「まあそうだよね……技を使っただけだしね」
「あのー……」
「ん、何かようか?」
急に見知らぬ女性が声を掛けてきた。
「ランク戦……なんですけど」
「ああ。ランク戦ねー……」
ランク戦を申し込まれたのは初めてだ。少し落ち着けがない感じになってしまった。
「えっと、ランクは?」
「111111位なんですけど……」
「ふぇ?」
ありえないランクの差に変な声が出てしまった。
というより、キリ良いなぁ。
「多分、俺じゃ勝てないと思うぞ」
「それでも……いいですから……」
「て、言うかなんで俺なんだ?」
もっと弱い人もいる。俺に限定している理由は何かあるはずだ。
「ほかの人たちはみんな強そうで……」
「俺が弱そうって言いたいのか?」
確かに否定はしないが、やはり傷つく。
「違います。いや……違わないですけど……」
「……まあいいや。一応受けてあげるよ。提示はいらないし」
「いやっ、そんなわけには行かないです!」
「いやいや、こんなランクの子にお金なんてせびられるかよ。まあ負けるわけないんだし」
「そうですか。じゃあお言葉に甘えさせていただきます」
女性の名前はリリ。Dクラスだ。俺の一個上……。
「サクトさんってEクラスなんですね!」
「……馬鹿にしたいのか?」
「違います……Dクラスなんかで恵まれていない。なんて私思ってたんです……」
「そうか。まあ、いつでも来いよ」
リリは俺よりも少し大きい剣を腰から抜いた。
「行きますよ!」
そう言ったはいいものの、遅すぎる……。スキルを使っていない俺よりも遅いなんて、相当だぞ……。
「もういいだろ。諦めろ」
「……」
あまり自分より下すぎる人を攻撃するのは気が乗らない。
「分かりました……今回は引きます。それと、ありがとうございました。私なんかを引き受けてくれて……もっと練習します」
「ああ」
そう言って彼女は去っていった。
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