第9話 ランクの大きさ

「【フラッシュチェンジ】」


 絶体絶命の中、ピノはこういった。

 その瞬間、コレトに刺さっている矢が全て爆発した。コレトは俺でもかというほど吹っ飛び、意識を失った。


 会場の盛り上がりは最高潮。俺も気づいたら声を上げていた。


 違う武器対武器。それがこの世界の一番のすごさでもあり、面白さだった。剣対剣は技の差とクリスが言っていたが、間違ってはいないだろう。だが違う武器ともなると技も大きく変わってくる。その点、相手をいかに欺くかの心理戦要素が大きい。だからオリジナルスキルいう対応しずらいスキルや、技をいかに多く持っているかも重要になってくる。


 俺はピノの実力に再関心し、そのあまりのかっこよさに見とれていた。


 俺はその後の戦いは全く覚えていない。大会と言いながらも、優勝者という概念はないらしい。となると三桁の人が集まって練習した。という感じか。


「いやー素晴らしかったねー!」


 大会の帰り、俺はピノとコレトの戦いを何度も頭の中で思い出しては感心し続けていた。どうやらそれは、ルームメイトも同じようだ。


「まじで、ピノっていう人すげえなぁ」

かめになれるんじゃないか?」

「だめだめ、甕は異次元の強さだって言われているし」

「それもそうだな」


 そんな会話をルームメイトがしていた。甕とは喫軌を指揮している8人組の事だ。噂は聞いたことがあるが、そんなにも強いものなのか……。



「クリスは、なんでピノと知りあいなんだ?」


 俺は後日、クリスと共にランク上げに向かうときに聞いた。


「んーそうだなぁ。まあいずれ分かるかもな」

「……」

「そういえばサクト、昨日大会やってたのは知ってるか?」

「ああ、ルームメイトと一緒に行ったぞ」

「それ僕も行っていたんだけどさ、サクトって、コピー出来るんだよね。もしかしたら大会の人たちがやってた技、できるかもよ?」

「まあ、試してみる価値はあるか」


 俺たちは広い場所に移動した。


 まずは一番最初に見た試合、ロンドとオマーンで、ロンドがオマーンが使っていた【アーマーダンク】をしてみる。確か緑色に光るんだったよな……。後日聞いたところ、赤色は俊敏性向上、緑色は身体強化、金色が痛み軽減。つまり、身体強化だ。


「【アーマーダンク】!」


「……」


「【アーマーダンク】!」


「……」


 俺は【アーマーダンク】を発動することが出来なかった。


「んー。やっぱりサクトよりも上のランカーたちが持つぶっちぎったオリジナルスキルはコピーできないか……」


 自分には、コピーすること以外全く取り柄がない。コピーできなければ本当に雑魚。だから正直この事実は少しつらい。


「……いや待てよ!」


 急にクリスが思い出したように言う。


「どうした?」

「リョークがしていた【デス・バデット】はどうだ?」

「いや、あいつのランクもかなり高いから無理だと思いますけどね……」


 俺は渋々やった。


「【デス・デバット】!」


「っ――!」


 俺は急に瞬間移動して、空中に向かって剣を突き刺した。


「……できた……?」


 あまり想像しない出来事に少々動揺を隠しきれない。


「わかったぞサクト!」

「なんだ」

「【アーマーダンク】が発動できない理由は、実際に戦った時に、使われていないからだよ。実際【デス・デバット】は食らった。【ガードブロック】も使われている」

「……それだ!」


 俺はやっと俺の謎が理解できた気がする。曖昧な部分が解けた。

 だが、俺は気付いている。【ハイハイパー】は実際に受けていないことに。確かに間近で見たのは事実だ。だが、俺はその状態で切られた分けでもないし、突っ込みとして叩れたわけでもない。けどクリスが言っていることも粗方間違ってはいないだろう。

 クリスにはあまり面倒なことに関わらせたくない。クリスにはそのことは黙っていたが、今後自分の中で詮索していきたいところではある。


「じゃあ、新しい技も覚えたことだし、ランク上げに行きますか」

「おう」


 色々あってランク上げが遅くなってしまった。テンポよく上げていきたい。


「んー。この辺りが良いんじゃない?」

「そうだな」

「お、110000位台が結構いるなあ」


 俺のランクは、ポンドと戦って以来変動していない。118251位だ。今日中に110000位台を切り抜けたいところでもある。一気にガッと上げても勝ち負け的には問題ないと思うが、対戦してくれる相手だって、リスクを背負いたくない。だからしてくれる可能性だって下がるし、提示額も上がる。ここは地道に上げていくしかない。


 そして俺は、サクサクランクを上げていく。


「ねえ、君、対戦良いかな」

「ああ、ランクは?」

「111822位」

「そうか、なら8000ゴールドでどうだ」

「契約成立だな」


 とまあこんな感じに、案外テンポよく戦いを受けてくれる。近しいランクなら敬語は不要。慣れれば一分も掛からない前に大戦がはじまる。

 両方が構えたら勝負スタート。構える前に勝負を仕掛けるのはルール違反だ。だからリョークは実際のところルール違反だったらしい。


 俺の戦法はこうだ。相手が構えた瞬間に【デス・デバット】を繰り出す。この技のお陰で初見殺しとしてすんなり当たってくれる。今じゃ少しリョークに感謝している。


「【デス・デバット】」

「何っ――」


「こ、このランクで、オリジナルスキル⁉」


 俺と戦ったほとんどの人がこういう。それもそのはず、このランクの人はオリジナルではないスキルすら持っていない人だっている。オリジナルスキルに関しての反応は妥当なものだろう。


「ランク108566位。こんなところかな?」

「サクト! 凄すぎるよ! 半日で10000位近くランクを上げるとは……」

「まあ、俺の初期ランクが低すぎただけだよ」

「このままの勢いで行けば中位生も夢じゃないね!」

「中位生ってなんだ?」

「中位生っていうのは、ランク50000~10001位の人たちのこと。ちなみに上位生が10000~1001位、1000位~101位までを超位生っていうんだ」

「じゃあピノは超位生か……」

「そう!」

「すごいな……」

「ピノは……努力家だからな……」


 クリスが少し暗い顔で言った。


「って! 来てる来てる!」

「ん、何が?」

「緊急依頼だよ! 緊急依頼!」

「おお、またか」

「またかじゃないよ! 今回の緊急依頼はランク変動あり! つまりランクが上がるんだよ!」

「まじか!」


 ちまちま人と戦ってランクを上げるのには飽きてきた。一発ドカンとランクを上げられるならいい機会だ。


「けど、相当強いんじゃないか?」

「ああ。今回の敵は、ハーリーアーサ―だ」

「ハーリーアーサ―って……」

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