第6話 Eクラス

「Eクラスが緊急依頼⁉」

「っですから大丈夫ですって!」


 俺は直ぐに緊急依頼を受けるため、喫軌きっき本部にいる受付に話を付けようとした。場所は、喫軌本部に入ってすぐ左にある、前とは別の部屋だ。優しそうな女性ではなく、性格の悪そうなおじさんが立っていた。そのためか、Eクラスという事を知った途端に、依頼を受けることを拒否してきた。それが親切という捉え方もできるのだけれど。


「本当に大丈夫です。喫軌運営が差別のようなことをして良いんですか?」

「あ、いや、そういうわけじゃないんですがね……」

「大丈夫なんで。これ、お願いします」

「……」


 クリスが多少強引に受付のおじさんに俺のパスカードを渡す。受付のおじさんも、クリスの差別という単語から、返しが弱々しくなっている。というより、そこまでEクラスって弱いものなのか……ますますがっかりだ。


「頼むから、生きて帰って来いよ」

「はい!」


 受付の人は渋々パスカードにバーコードリーダーのようなものを当てた。


「よし、ありがとう。じゃあ直ぐにマゼラ森林に向かうぞ!」

「そんなに急ぐ必要あるんですか?」

「何言ってるんだ! 緊急依頼は早い者勝ちだぞ!」

「まじすか」


 そんなこと初耳なんだが……

 ひとまず俺たちはマゼラ森林に向かった。


「ここは……」


 マゼラ森林とは、俺が異世界転移した場所と全く同じだった。


「はやくゴールドマンモスを探すぞ!」


 そういってクリスは直ぐにゴールドマンモスを探しに行く。




「おい、ちょとまて」


 急に話しかけてきた男は、ダンクと同じくらい大きな剣を担いでいた。


「な、なんですか?」

「お前も、緊急依頼を受けに来たんだろ」

「そうですけど……」

「なら俺と戦え!」

「は、はあ?」

「だから、戦えって!」

「何でですか?」

「俺も緊急依頼を受けているんだよ。もしも同時に見つけてたり、同時に殺したりして、そんなんで争ってたら嫌だろ?」


 確かにこの男の言い分はごもっともだ。ランクに加入して一番最初の戦いがこれだなんて、何となく嫌な気もするが、俺はこの話には乗るつもりだ。なにせ、【ハイハイパー】を使ういい機会だとも思ったし、成長した俺がどれほどのものなのか試す、いい機会だとも思ったからだ。


「よし、その戦い。受けよう」

「そうこなくっちゃ」


 クリスも、何も意見はないみたいだ。




「よし、じゃあパスカードを出せー」

「はい」

「お、俺の方がランク高いじゃん! ってお前Eクラスじゃねえか!」

「そうですけど……」


 やはりEクラスと見た途端、誰もがこの反応をする。パスカードにはポンドと書いてあった。クラスはCクラス。ランクは118251位。

 手渡しした俺とは真逆に、ポンドは俺に向かってパスカードを投げ変えしてきた。


「早く提示しろよ」

「あ、でも俺お金ない……」


「待て、相手側から誘ってきたのなら、こちら側が提示する必要はないはずだぞ。Eクラスだからってその仕打ちはないんじゃないか?」

「ちっ」


 クリスが横から突っかかってきた。こちら側から戦いを申し込む場合は、提示する必要があるようだが、相手側から戦いを申し込むときは、お金を提示する必要はないそうだ。


「はいはい、早くやろうぜ」

「お、おう」


 俺は剣を前に構える。そしてポンドも大きな剣を構える。

 ポンドは大きく腰を落とし、鋭い目つきで俺を見つめた。


「【ハイハイパー】!」


 俺は直ぐにそう言った。俺は一瞬にしてポンドの目の前へ接近。剣を後ろに思いっきり引いて、ポンドが剣で受ける間もなく首に突き刺す。


「【ガードブロック】!」


 通常の速さが【ハイハイパー】に勝てるはずもなく、一時的なガードを張って一時しのぎをしたようだ。すかさずポンドは大きな剣で切り掛かってくる。だがやはり【ハイハイパー】に勝てるわけもなく、バックステップで避けて、今度は全力でポンドの後ろにクルリと回って背中に剣を突き刺した。


「うおっ!」


 俺の剣はポンドの背中に確実に刺さった。

 人を刺したのは初めてだ。生々しい感触が気持ち悪い。俺は少し焦ってポンドへ駆け寄った。


「だ、大丈夫か?」

「いや、大丈夫だけどよ……そのスキル、オリジナルだよな? このランクで……しかもEクラスだし……」

「まあね」


 俺は清々しい顔でそう言ったが、正直すごくうれしかった。Eクラスとバカにさたし……

 まあでも、俺のスキルじゃないんだが。


「はあ、Eクラスに負けたのかあ、俺」


 そうぶつぶつ言いながらポンドは去っていった。


「ね! 弱いでしょ?」

「ま、そうっすね」


 確かに、今の俺の実力が大体わかった気がする。パスカードには、118251位とランクが入れ替わっていた。ポンドのパスカードにはきっと俺の前のランクが表示されているのだろう。どういう仕組みなのかは理解できない。


「あと、あの【ガードブロック】は、オリジナルスキルってことでいいんですよね?」

「違う。オリジナルスキルなんて、このランク帯でできる人なんていないよ。あれはただのスキルだよ」

「じゃあチェルシーって相当……」

「チェルシーも相当すごいけど、それを一瞬でコピーしたサクトの方が化け物だよ」

「あはは……」


「って、それよりもゴールドマンモス!」

「あ、忘れてた!」


 俺たちは元の用事をすっかり忘れていた。直ぐに走ってゴールドマンモスを探す。森の景色はいつも同じような感じで、迷子になりそうだ。大きいと言っていたから割とすぐ見つかると思っていたが、案外見つけるまで時間がかかった。


「あっ! いたよ! ゴールドマンモス!」

「えっ、まじですか?」


 後ろでクリスがそう伝えてきた。俺はすぐさまクリスの方に向いた。すると、俺は目を疑った。


「で、デカ!」


 俺の想像の何倍もの大きさに、俺は思わず腰を抜かした。高さは4メートル以上あった。


「こんなんに絶対勝てないっすよ俺!」

「大丈夫だって!」


 いくら弱いと言ったってこの大きさはいくら何でもビビる。


「よしサクト、こっちに気づかれないように先制攻撃を仕掛けるんだ!」

「あ、はい……」

「いざとなったら俺も助けるからさ!」


 クリスが強いのは知っているが、クリスは武器を持っていない。まさか拳で対抗するというのか……

 一応クリスの言葉を信じて先制攻撃を仕掛ける。


「【ハイハイパー】!」

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