第4話 真実のランク
「うおおおおおおおおおおおお!」
俺は、【ハイハイパー】が発動したことを確認すると、一気にダンクに向かって全力で突っ走った。【ハイハイパー】の凄さは思っている何倍も強く、自分が風になった気分だった。
前から殴り掛かっても、構えている剣が邪魔だ。スルッとダンクの後ろに回り込み後頭部目掛けて拳をぶち当てる。
「……」
俺の拳は見事ダンクの後頭部に激突した。だが……
「何っ――?」
ダンクの後頭部が堅く、反動で俺は吹っ飛んだ。
「痛ってえ……」
ダンクが振り返って、俺にこう言う。
「おい……お前……今の……」
「あー【ハイハイパー】は多分たまたまっす」
自分でも【ハイハイパー】が出来たことに驚きを隠せなかったが、それよりも、俺の攻撃力の低さに、がっかりだ。
するとチェルシーが、小走りで駆け寄ってきた。
「何言ってんのよ! それ私のスキルなのよ!」
「へっ?」
「オリジナルスキルや技のコピーは、通常1、2年は掛かるものよ?」
「そ、そうなのか?」
どうやら俺には何故か【ハイハイパー】が使えてしまったようだ。偶然か、それとも俺の才能がここで開花したとか……。
「はぁ。それと何なの? その弱々しい攻撃は」
「いやー。俺初めて人と戦ったもんだからなあ」
「……私は、初めての人にコピーされた……?」
あまりの落ち込みさに、こちらも申し訳ない気分になる。
「私も、まだまだだったようね……」
「ん、あ、そんなことないと思うぞ?」
さっきのチェルシーの戦いっぷりを見たらわかる。それはダンクも、身軽男も、それに受付の人だってわかっているはずだ。
「何言ってるのよ? 戦いを初めてした人にスキルをコピーされたのよ? 私は4歳から剣の稽古をしてきた。それが一瞬にして破られたようなもんよ」
「……」
するとチェルシーは立ち上がり、受付の人にこう言う。
「もう次試験はいいわ、今、私の弱さを見せつけられてしまったもの」
「か、か……かしこまりました。では、ランクは身軽男の独断で決めさせていただきます。後日、喫軌本部へまたお願いします」
チェルシーの驚きの発言に、受付の人も困惑する。
直ぐにチェルシーはこの場を去った。
というか、本当に名前は身軽男だったんだな。
いや、そんなことはどうでも良いんだ。チェルシーは絶対まだまだ上の初期ランクを狙えたはずだ。
「そんなに、オリジナルスキルをコピーするのって、凄いことなのか?」
俺はダンクに聞いてみる。
「何言ってんだお前、オリジナルスキルってのは、基本一人一つか二つくらいしか使えないんだよ。それを何故かお前は一瞬でコピーした。あの反応は妥当だよ……」
「そう……なのか?」
「ああ。まあオリジナルスキルを持ってるやつなんてこの辺じゃめったにいないけどな。あと、別にコピーしても、規則が決まっているわけじゃないから、使ってもいいからな」
「お、おう……ひとまず、俺は何も手出しすることが出来ないって分かったんで。俺も、もう帰りますね」
「まっ。あれじゃ勝てねえだろうな」
ダンクの一言に、俺はさらに自分にがっかりだ。
だが俺は、コピーできた理由がわかる気がする。元居た世界の美由紀の影響。つまり、俺の姉だ。俺は常に姉の真似を続けた。勉強時間だって、馬鹿みたいに長い時間を無理してやったり、50メートル走5.8という意味不明な記録に対しても、フォーム、目線、構えなど、すべて真似して俺も5.8のタイムを出した。それがこの世界でも影響したのだろう。確かに最初の方は、死ぬほど苦労をした。だが後々は簡単に真似できるようになってきて、見ただけで真似できるようになっていた。それに比べたら、この世界のスキルのコピーは、簡単なのかもしれない……。
「ではまた後日、本部へお越しくださいませ」
次の日俺は、また喫軌本部へ行った。チェルシーはどうやら居ないみたいで、俺一人だった。
受付の人は直ぐに俺に気づいた。
「サクトさん、こちらへお願いします」
俺は受付の方に行った。すると、あるものを渡される。
「こちらが、パスカードになります。パスカードとは、ランクに加入している人全ての人と連動しています。ここにランクが記載されています」
俺が受け取ったパスカードには、123000の文字。つまり俺は123000位が初期ランクということになる。確か今ランクに所属しているのが125004人だから……
ランクの下には、Eクラスとも記載されていた。なんともダサい。
「パスカードには、オカランドの地図が入っています。GPS機能をオンにすると、地図内に、ランクに加入している人が表示されます。ランクも表示されますので、上手く活用してください。ちなみに、自分の位置も表示されてしまいますので、ご注意ください」
「了解です」
すると受付の人は持っているボードのようなものを見る。
「これで、ランク含め喫軌加入が確定しました。それでは、喫軌専用の服に着替えていただきます。喫軌内で売っている服であれば、変えていただいても結構です」
俺は喫軌専用の服を受け取る。
着てみると案外動きやすい服装で、涼しそうで案外良さそう。
「ランクに加入している方の寮は、こちらで用意していますのでご安心ください。地図上に記載されているのをご確認ください」
喫軌本部から5分くらい歩くところに、寮が立ち並んでいた。寮は3つあった。ランクによって住める寮が変わってくる。100000位を超えるまでは、共同部屋らしい。とりあえず100000位を超えることを目標にするって感じか。
「これで、ランクの説明は終了となります。細かい説明はパスカードにも記載しています」
「はい。ありがとうございました!」
俺は喫軌を出た。
「あの、サクトくん、ちょっといいかな?」
横には、見知らぬ男が立っていた。
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