第16話
.........正直に言おう。
飲み込みが悪い。全く、最近の若いもんの低能っぷりには飽き飽きする...なんて言っている僕も若いのだが。高1だしな。僕より年上の人もいるしな。
僕は深くため息をしてからまた説明するべく口を開く。
「もう一度、簡単に説明すると、この天井に吊るしてある大きなライトは太陽の光に近い光を放っている。これが太陽の代わりで、光が足りなく、光合成ができなくて死んでしまうなんてことは絶対に起きない様になっている。」
「うーん、すまんが宇界。コウゴウセイって何だ?」
「勲、テメーは中1からやり直してこい。」
「!?」
「はぁ〜〜、時間が惜しいんだよ。簡単に言うと、光使って体内でデンプンっつー栄養分作ってんだよ。わあったか?」
「つまりは、光を使って、食事を体内で作って...食ってるってことか?」
「そーだ。」
「気持ち悪いな。じゃあ、水は何の為にあげているんだ?」
「あー、それはだな、植物は光だけで栄養分つくるってのは出来ねーんだ。デンプンつくるにも、水と二酸化炭素で料理してやんねーといけねーんだ。おにぎり作るにも海苔だけじゃ作れねーだろ?米とゆかりがいる。あと、気持ち悪い言うな」
「俺は鮭派だ!」
「いや、そこ論点じゃねーから」
こいつに説明するだけで3分程取られた。くそ、3分もあれば漫画一話くらいは読めたのに。
「だが、うん!なるほど!分かったぞ!ありがとう、宇界!」
まぁ、理解もしないで作業させるよりはマシ、か。他の奴らも聞いていただろうし、これで光合成知らなかったやつもわかっただろう。
今の時代じゃあ植物なんて熱にやられて数が減っていて激レアモンだからな、あまり知らなくても無理もない、か。
植え方も、育て方も知らないだろう。幸運なことに、僕の家は代々金持ちだからな、当然土地も多いし、余った土地の一つや二つに植物園を作ったりして植物を保護している。
本当なら外気よりも室温を暖かくしておくモンだが、温暖化が進んでしまって外はサウナ並に暑い。暑さに弱い僕が生きてこられたのが不思議なくらいに暑い。真面目にクーラーがなければ死んでいた。
植物園の中にはクーラーが無数にセットしてある。
材料やなんや色々あってクーラーは高級品になってしまったからな。持っていない家庭が普通だ。
だが、僕は優しいからな!学校に数十台くらいのクーラーを設置させ、千寿、勲なんかの友にも数台あげた。全部自分の小遣いで、だが。
数話前にそれぞれのキャラの説明やらなんやらを、ダラダラ少しずつ出していくのが面倒くさくなった作者がいっぺんに僕に説明させた時にも言ったように、僕と父との仲はよろしくない。
父は「人助けなんてするか。他人は他人、自分は自分」と、言ってはいないが、そう思っているような人だったので、(多分思っている、いや、あの目は絶対に思っている)金を変わりに出してくれることなんてなかった。
まぁ、僕の小遣いは普通の人より少し多いから困ることなんてなかった......筈なのだが、何故か万年金欠だった。
研究の材料費と漫画費とコレクション費にしか使ってなかったんだがな。
え?なんのコレクションかって?お、教えるわけねーだろアホか。
毎週50万は貰っていたんだけどなー。
「ほんなら、次は種の植え方だ。今から植えるのは小麦だ。パンに使われるやつな。最近じゃあパンなんてそんなに出回っちゃいねーが、皆も一度は食ったことがあるはずだ。特に僕の住んでた地域の奴はな。」
何人かうんうんと頷く。僕の住んでいた地域では学校で少なくとも月に4かいはパンが出るようにしていたし、パン屋も開かせた。(これも僕が勝手に自分の小遣いで)
僕って本当に色々やっていたと思う。それが父と仲がよろしくない原因の一つでもあるのだが。まぁ、気を取り直して。
「よし!次は種の植え方だ。おっと、その前に...まずは土を耕す。ここにある土はまだ何もしていない天然モノだ。それぞれ鍬を持ってこうやってたがやす!」
サク、サクリと鍬が軽く土に吸い寄せられるように入る。
ここで読者の皆様が疑問に思っていただろうことを説明しようと思う。
第一、宇宙空間と言うのは無重力。どうやって畑なんか作るのかということだが、そこはあらかじめ微妙に固まった土の上に網目の細かいネットを張って、そこから種を植えるということだ。
土を耕すのもネットの上からだ。このネット、ちょっとやそっとじゃあ破れないし、ネットの上からでも十分に耕す事ができると言うのは検証済みだ。
いや、だが、耕す必要なんてあるのだろうか?
土を耕す理由としては、土を耕して撹拌―――混ぜること―――し、空気を入れることで土中微生物の活動が活発になり、有機物の分解が進んで、作物の栄養となる成分が放出される。
簡単に言うと、養分を放出させるために空気と触れさせているのだが、ここは宇宙空間で、無重力なわけだ。
少し上を歩いているだけでかる~く混ざるんじゃないか?
思わず口角があがる。これでかなり仕事が減って楽になるだろう。
「勲、チビ達を呼んで来い」
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