第14話
「王道、お前今日からチャプテン代理な。」
「........は?」
そうか、こいつにもまだ僕がキャプテンだってこと教えていないんだっけ。
「実は...」
と、斯々然々。説明が終わったところで、王道の顔から表情というものが消え失せた。怖っ
「貴様がキャプテンだったのか。そうか、貴様が?何故黙っていた...?」
「面倒くせーから」
「........その仕事、引き受けよう。」
これで!僕は実質キャプテンとしての仕事は殆どこいつに任せておくことができる!
これ、一石二鳥ではないか?僕はサボりたい。王道はリーダーになりたい。そんな王道にキャプテン代理をさせればあいつは間違いなくキャプテンとして全力で働いてくれるだろう。
なに、僕もあの部屋の中で王道から逃げるだけの日々を過ごしていたわけではない。
ちゃんと、情報収集は行っていたのだ。
そこで分かったのが王道がただの威張りたがりやではなく、与えられた仕事は全力を尽くして卒なくこなすということだ。
かなりいい人材ではないだろうか?僕はキャプテンを辞めるということが出来ない。これは僕が万が一何かトラブルがあった時、キャプテンとしてこの船を動かさなければいけないからである。
だが、普段のなにもない時は、普通に王道に任せておけば僕は楽することができるのではないだろうか?
『君臨すれども統治せず』今回は少し違うが、『キャプテン』という像が無いとやはり皆不安だろう。なので、王道には見かけだけのキャプテンになってもらう。いや、面倒事を押し付ける相手にもなってもらうが。
そして、他の機械操縦・点検なんかは僕と他の機械チームでやる。うん、完璧ではないだろうか。
「で、俺は何をすれば良いんだ?」
「んー、とりま今後の方針を発表してもらう。」
「それで、その方針というのは?」
僕は紙に書いて渡す。これを王道は聖徳太子のように、しゃくでは無いが、うちわに貼って小さい舞台の上に立った。
この舞台も僕が設計したもので、暇つぶしに誰かに一発芸でもやってもらおうかと設置したものだ。
マイクの電源を付けたのだろう、キィンと音がなる。
「はじめまして、俺は王道瑛王。この船の...キャプテンだ。」
よし、本当のキャプテンのように振る舞うように念を押しておいたかいがあったな。まぁ、王道なら何も言わなくとも本当のキャプテンのように振る舞っていたかもしれないが。
「これから俺たちは第二の地球を探すに当たって、一つ問題がある。候補の星がお互い離れすぎていることだ。俺たちの代だけで探し出すのは至難の業だ。片方へ行って、無理だからともう一つへ行くなんてことは出来ない。俺たちには圧倒的に『時間』が足りないんだ。」
アドリブ入れすぎだろ。いや、アドリブとは呼ばないのかもしれない。だが、それにしても、僕の書いたのはほんの少しだけだぞ?しかもメモ様式で単語4つほど。そこから....やっぱりリーダーの素質があるのではないだろうか?
「そこで、俺は一応、皆の了承を得ておきたかった。どの星に行くかなどは、俺たちだけで決めてもいいだろうか。」
一つ、手が挙がり、王道があてる。質問だろうか?
「一つ、よろしいでしょうか。先程『俺たち』と仰っていましたが、その『たち』とは誰を指しているのでしょうか。」
なかなかによく話を聞いている。周りの人もそう言えば!的な顔をしているしな。
「無論、俺と宇界だ。」
ザワッ
一気に場がざわつく。何故そこで、何に対してざわついたんだ?
「嘘。やっぱり乗ってるんだ」
「うかいって、あの新世宇界?」
「え、新世家の御曹司様‥...?」
「まさか!同じ名前の別人だろ」
「そうそう」
「でも、この船に新世財閥がかなり関わっていたと思うんだけど。」
「MJD!?」
「じゃあ、あり得るかも。キャプテンだったって不思議じゃないしね。」
「あぁ。噂じゃかなりの切れ者らしい。」
「天才だってな。まえ遠目に見たことがあるけどよ、顔もイケメンでマジ敗北感しかなかったわ」
「マジ?草」
「お前も一目見れば解る。」
あー、僕の名前に反応したのか。というか、僕ってそんなに知名度高かったっけ?テレビに出た覚えなんて無いのですが。
誰かの噂から広まったってんなら怖いな、噂。今後天敵と見なす必要があるかもしれない。
「静粛に!」
王道、お前そういうキャラじゃないだろ。何処の鬼教官だよ。
「俺と宇界で星は決める。それで異論はないか?」
『『はい』』
「その間、皆にはとある仕事を任せたい。」
やっと本題に入りやがったか。アドリブ上手というのも面倒だな。面倒は合理的との最強コンビだ。僕はあまり合理的な行動をとる派ではないが、いつか合理主義者になりそうだ。
「皆には...食料を作ってほしい。」
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