33「澄玲とミオがいる理由」

 さて、澄玲とミオがなぜここにいるのかと言うと、

公園での捜索が空振りに終わり、一旦対策室に戻ってきた面々。そして六華が、


「あれだけ、探して見つからないのでは、センサーの故障じゃないでしょうか」


今回は反応はあるものの細かな場所が分からない状況で、

最初の山狩りは反応がすぐに消えたので、

空振りでも、逃がしてしまったとなるのであるが、

今回は、反応がずっと出ていたのに見つからなかった。

公園は広いとはいえ山ほどではないし、

結構な人数で、魔法による索敵も含めての捜索を行ったにもかかわらず、

空振りとなると、機械の方を疑う声が出てしまう。


 しかし澄玲たちは、事情を知っているので、

そんな事は無いのは分かっているが、しかし事情が事情なので、

仲間たちに説明して、協力を得るのは難しかった。

そんな中、澄玲がミオに、


「ミオさん、もしかして地下の可能性はないでしょうか?

あそこなら、地上からでは『サーチ』でも分かりませんし」


これは確証のない澄玲の勘の様なものであるが、ミオは、


「確かに、あの反応じゃ地上か、地下かは分からないわね。地下か確かに盲点ね」


だが地下の探索となると面倒な上に、

公園の捜索が空振りに終わったばかりなので確証がないと、

組織は動かないと二人は考えて、最初に、二人だけで調べに行く事にして、

許可をもらって、地下空間に入り、公園の地下へと来たのであった。


 やって来たミオは、


「見ない顔が二人もいるけど、消去法で貴方が桜井さんで、そっちが天海さんね」


鎧姿の二人を指さして、見事言い当てるミオ。そして二人が頷くと、


「何なのその鎧?」


修一が答えようとすると、蒼穹が、


「私たち冒険者なんです」


と言うと、


「そういう事……」


と納得したように言う。冒険者なら鎧を持っていてもおかしい事じゃない。


「でも、それを着てるって事はやる気満々って事ね」


と言われる。


「そういう訳じゃないんだけどな……」


と言う修一。彼が鎧を着ているのは、戦うためっじゃなくて、

暗闇の中で動くため、すなわち暗視ゴーグルの代わりにする為である。

蒼穹の場合は、暗視ゴーグル代わりと、

母体との戦いに必要だからであるが、別にやる気満々と言うわけではない。


 そしてミオは懐中電灯で、周囲を照らして地下空間の状況を確認する。

同じく状況を確認した澄玲は、


「やっぱり、地下に怪獣がいたんですね」


と言うと、


「とにかく澄玲、貴方の手柄よ」

「いえ、まぐれですから」


と謙遜しつつも、嬉しそうにしている。


 すると、瞳が


「最初に気が付いたのは、私だからね」


と妙に自慢気に言う。するとミオは、


「ところで、あなた達はどうやってここに?

まさかマンホールをこじ開けてきたんじゃ……」


ここでメタルマギアこと春奈が、


「違います。違います」


と言い、ここまで来るまでの状況を話す。


 それを聞いたミオは


「確かに地下空間は不定期に拡張していくから、

未確認の入り口があってもおかしくないけど、

それでも、不法侵入には違いないわね」


それを言われてしまうと、皆、ぐうの音の出ない。


「まあ、今回は見逃してあげるわ。今すぐ帰りなさい。

ここからは、私たちの仕事よ」


と言い出したので、


「ちょっとミオさん、そんな事言わないで、

この際、魔法少女たちの力を借りれば……」


と澄玲が言うと、ミオは彼女を睨みつけながら、


「あなたね。守護神機関の一員としてのプライドはないわけ?」


民間とは言え、市から委託を受けて居るので、

仕事として事に及んでいるから、

横から無関係な素人がやって来るのが我慢できない所があった。


「プライドって、今は世界の危機なんですよ。

そんな事を言ってる場合じゃないでしょう。

いつもの様に冒険者の力を借りていると思えば、実際に冒険者の方も居ますし……」

「あれは、冒険者ギルドとの提携で行っているのよ。

魔法少女の力を借りるのとは訳が違うわ」


冒険者達は守護神機関の要請で、力を貸すわけであって、

魔法少女を含め、横からやってくる素人たちとは、違うと言いたいらしい。


 そして、ミオは修一達の方を見ると、


「とにかく、あなた達は帰りなさい。

まあ秋人君は、後から協力要請はあると思うけど」


秋人のくだりで口調が苛立っている。

正直な所、秋人の協力も魔法少女達と状況が異なるものの、良くは思っていない。

それは、チェルシーの様に魔王の力を借りる事への嫌悪とかではなく、

協力要請は出しているとはいえ、

その強力な力にコンプレックスを抱いていると言うべきだろう。


 自分たちが受けた仕事は、自分たちで解決したいと言うのが、

彼女の信条で、冒険者達の協力は範疇だが、

それでも秋人の、鎧の魔王の力が強力すぎて自分たちの存在が、

霞んでしまうのが、彼女には我慢できないところがあった。

それは、魔法少女達にも言えることで、

横から割り込んでくることが只でさえ、良くは思わないのに、

それが強力な力を持っているとなるとなおさらだ。


 ただ澄玲は、そうは思っていなくて来る者は拒まずと言う感じで、


「ミオさん、そんなこと言わないで、力を借りましょうよ。

そもそも、守護神機関は外部との協力を重視してきたではありませんか」


すると急に気まずそうな様子で、


「それは、そうだけど……」


と言った後、黙り込んでしまった。


 この直後、瞳が、


「反応があったよ」


と言い、澄玲たちの懐から、電子音がした。

彼女たちのセンサーも反応を察知したようだった。

そして機械を取り出す彼女達。この機械はモニターがついていて、

GPSとの連動で、反応がある位置が、ある程度であるが分かる。


 モニターに映る位置を確認していた二人だが、

ここでミオがハッとなって修一達の方を見ると、

修一たちの姿はなかった。センサーに気を取られている間に居なくなっていたのだ。


「あの子たち!」


と声を上げるミオ。

状況から彼女の言う事を聞いて帰ったわけじゃないのは確かであった。


「追うわよ!」


と言って走り出すミオに


「ちょっと待ってください!」


とあと追う澄玲だった。しかし二人は魔法で素早さを上げたものの。

修一達には追い付けなかった。






 一方、修一たちは、あくまでも反応が出た場所に急いで向かっただけであり、

二人から逃げたわけではないが、結果として、撒く事には成功した。

そして、その日は会うことは無かった。


 しかし、今回は反応が短かったので、現場に着いたものの。

その時には消えていた。多分擬態を解かずに動いていると思われる。

しかも、反応があった周辺は、かなり入り組んでいて、迷路のような状態。

さらに秋人が、


「この辺は、サーチの効きが悪いね」


完全に防がれてるわけじゃないものの、探索範囲が極端に狭いか、

穴だらけになっていて、役に立たない。


「こっちも、ダメ」


と側にいたメタルマギアは言い、他の魔法少女たちも、

同じことをいうので、彼女たちの力でも同じようだった。


 魔法がだめなら、超科学はどうかと思い、


「長瀬……」


と声をかけるが、メイも首を横に振っていて、

彼女のサーチも、同じく役には立たないようだった。


「長瀬のダメだと、赤い怪人もダメっぽいな……」


物は試しと、鎧を脱ぎ、赤い怪人になり

実際にサーチを試してみても、結果は穴だらけで、役に立たない。


(こいつは、手分けをして地道に探した方が早そうだ)


修一は元に戻り、再び鎧を着て、結局、手分けをして地道に探すものの、

人が身を隠せそうな場所は多く存在していて、その後は反応が出ることなく、

結果として、見つけることはできなかった。


 そして夕方になり、一旦集まった修一たちに瞳が、


「今日はもう遅いし、帰ろうか」


と言い出した。

 

 すると春奈も、瞳に賛同するのは癪なのか、

少し苛立っているような声で、


「まだ明日もあるんだし、今日の所はこの辺にしておきましょう」


と言い出す、他も賛同し、入って来た出入り口から外に出た。

なお外は、日が陰り始めていた。

そのまま来た時と同じように、交通機関を使いつつ、途中まで一緒に戻り解散して、各自家に戻った。


 家に帰った修一は、


(明日には決着を付けれればいいな)


と思っていたが、翌朝、電話がかかっていて、


「どういう事だよ!」


と声を上げ、血相を変える。その後、瞳の家へと向かう。


 瞳の家では、修一と同じように血相を変えた面々が集まっていた。


「集まったね……」


なお澄玲とミオは、朝から地下の調査に向かっているので、

電話で事情を話したものの、こっちには来ていない。

なお、この時、瞳は雰囲気が異なっているので、リュミエールのようだったが、


「どういう事だ。タイムリミットって!」


するとリュミエールは、


「状況が変わったんだ。明日の朝までに母体を倒さないと、世界が滅ぶ」


事態は急変したのだった。

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