31「街の地下にて(1)」
地下と聞いて、いまいちわからないところがあったが、
「もしかして、下水道か何かか?」
と聞くと、秋人が、
「確かに下水道として使われているんだけど、元はゲートで現れたらしいんだ」
「えっ?」
その地下空間は、ゲート事件以降に、既存の下水道とつながる形で、
出現したもので、突如として現れたから、
ゲートによるものとなっているが、実際にゲートによって出現したかは不明である。
まあゲート以外に考えられないものであるが。
「下水道として使っているのは、一部で、他にも地下街や地下鉄として使ってるよ」
ここで、修一は、
「駅の近くにある地下街や地下鉄が……」
因みに、地下鉄として流用した部分は、出現した際、既に線路が引いてあった為、
それを活用することになったもので、
恐らくは異世界の地下鉄と考えられる場所だか、
それはさておき、S市の地下には広大な地下空間があるらしい。
ここでクレープを食べ終えたメイが、
「この空間は……私のサーチでも……把握できない……」
故に、あり得そうな場所はここしかないという事。そして瞳が、
「確かに、反応があると言っても具体的に場所は分からないし、
それが、必ずしも地上とは限らないからね。
あと場所によるけど巨大な怪獣がいても、おかしくない場所かあるしね」
因みにこの地下空間は広大で、大型魔獣、それこそ怪獣が、
住み着いていてもおかしくないほどの広さを持っている。
ただ「異界」とは違って、実際に魔獣は住んでいないので、
基本的に冒険者が地下に潜って、何かするという事もない。
ともかく母体が居てもおかしくない場所だが、
「問題はどうやって入ったかだよね」
瞳が言うと千代子が、
「そんなもん、適当にマンホール開けて入ったんちゃうんか?
敵はマンホールを開けれるくらいの力はあるやろう」
余談であるが、この町のマンホールは超能力や魔法で容易に開けられないように、
結構丈夫に作られている。母体の力ならば、
もしかしたら開けれるのではと千代子は思ったようだった。
だがここで明菜が、
「たとえ開けれても監視が厳しいから、うまく中には入れても、
記録とかが残るんじゃ……」
広大な地下空間は魔獣は住み着いていないが、
路上生活者等が、中に入って住み着くことがあるので、
広大ゆえに、地下空間のすべてに監視カメラをつけることはできないものの、
出入口になりそうな場所には、カメラ等がつけられている。
その事を千代子は知らなかった。
更に蒼穹も、
「確かに、記録は残るから守護神機関が、地下にもぐっている可能性も、
考えそうなものだけど」
実際、公園のほうにかなりの人員を割いていたようなので、
地下にいるという可能性を考慮しているようには、
思えなかった。ここで秋人
「でも監視は行政がしていて、守護神機関がしてるわけじゃないから、
単純に情報が共有されていな可能性もあるよ……」
すると瞳が、
「守護神機関と行政の連携は結構完璧だから、あの様子だと、
地下のことまでは考慮してないんじゃないかな」
修一たちは知らないことだが、ネズミの怪獣が現れた時も、
監視カメラの映像から、ネズミ怪獣が地下にいる事はわかっていた。
ただ定期的に地上に出ているので、地下と地上の二手に分かれて監視をしていた。
話を聞いていた修一は、
「それじゃあ、地下の線はあり得ないんじゃ……」
と言うと、瞳が、
「地下空間は不定期に変化してる」
既に出現している場所は、変わる事無く、
新たな場所が増築するような形で、大きくなっている。
「だから新しい出入り口が出来ていてもおかしくないんだ。
それに今年は、まだ地下空間の調査が行われてないから、
行政は把握していないはずだよ」
不定期に変化する関係上、年に一度の頻度で、行政が地下空間の調査を行っている。
「これは推測だけど、もしかしたら山の中に、
出入り口が出来ていて、一昨日の時点で既に、地下に居たのかもしれないね。」
もちろん地上にいて、擬態化状態でハイカーに紛れて、
山を下りた後、出入り口を見つけて、地下に潜った可能性もあるが、
地下に潜る経緯は、この際、どうでもいい事。
ただ未知の出入り口から、母体が地下空間に侵入したとして、
追いかける必要があるわけだが、一つ問題点があった。
「俺たちは、どうやって入ればいいんだ?
怒られるのを覚悟で、適当な場所から侵入するのか?」
その日をいれて、あと五日はあるが、実質動けるのは、
この週末の二日間、ここでケリを着けたかったので、
多少の無茶はせねばとは思ったのだが、瞳は、
「その辺は、大丈夫だよ」
「どういう事だ?」
「クレープを食べ終えてから案内あげるよ」
そう言った後、瞳は残りのクレープを食べて、他の面々が食べ終わるのを見た後、
「いったん解散して、準備を整えてからまた集まろう」
一旦解散して、地下に潜る準備、主に照明で、
各自、照明になるものを持って集まる。準備を整えた後、瞳の家に集まって、
彼女は修一たちを、ある場所へと連れて行った。
そこは遠方にあり、歩きだけでは無理で、
途中、バスも乗った。今後の事を考え、修一たちは体力の温存の為、
移動には能力は使わない。メイや魔法少女たちは問題はなかったが、
修一たちに合わせる形で、交通機関を使った。
そしてたどり着いたのは町はずれ、それこそ民家から離れていて、
目立たない場所にある廃墟で、あと小さな一軒家だった。
「この廃墟は一か月前に、ゲートから現れたんだ。規模が小さいし、
場所が場所だけに、いまだに行政も把握していない」
「じゃあ、何でアンタは知ってるの?」
と蒼穹が聞くと、
「偶然ここにいて、出現の瞬間を見ていたから」
と言う瞳だが、場所が場所だけに、
「なんでここにいたんだ?」
という疑念が出て来て修一が聞く。
「野暮用だよ」
というだけで彼女は詳しくは答えなかった。
「ともかく、この廃墟に地下への出入り口があるんだよ」
そう言うと、廃墟へと向かっていく瞳に、後を追う修一たち。
廃墟は、鍵とかはかかっていなくて、入ることは出来たが、壁が壊れそうだったり、
天井が落ちてきそうで、危なっかしい場所だった。
あと照明はない上に、窓が少ないので、建物の中は暗いので、建物に入る段階から、
照明として瞳が懐中電灯を使った。
そして建物の奥に階段があって、そこを降りていくと、そこは地下通路だった。
「ここが地下空間につながっているんだよ」
そして先に進みながら、
「地下空間は、地上から『サーチ』は使えないけど、
携帯とかGPSは使えるんだよね。地上で使える場所に限られるんだけど」
地下にアンテナとかはないので、理由は不明だという。
ともかくGPSを使えば、何処の地下にいるか分かるので、
これまで通り、瞳が反応を感じたら連絡を入れて、
GPSを頼りに現場の地下を目指すという事にして、まずは市街地を目指す。
地下道なので交通機関は無いので、瞳以外の魔法少女は変身し、
市街地の地下に向かう。なお瞳は春奈ことメタルマギアに抱えられながら、
向かう事に、修一と蒼穹は鎧を着て、能力を使って進む。
そもそも、ここからの移動の事も考え体力を温存していた。
秋人も魔法で移動速度をあげて、メイはサイボーグの力をフル活用する。
そして公園の地下へとやって来た。余談だがこの時、
照明を持っているのは瞳だけで、他の魔法少女は変身する事で闇目が効いている。
修一と蒼穹は来ている鎧に暗視がついている。
秋人は暗視の魔法を使うし、メイは暗視機能が内蔵している。
瞳も変身すれば闇目が効くのだが、巨大化するので場所の関係上、
ご法度なのは言うまでもない。
さて公園の地下は特に巨大な空間が広がっていた。
ここは特に何かに使っているわけではなく、
何もない空間なのだが壁に大きなひっかき傷や、
大きな足跡があり、明らかに怪獣、母体の痕跡である。
「やはり敵はここにいる……」
敵の痕跡を見て、戦いの時が近いことを感じるのだった。
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