30「休日の公園にて」
さて翌日は、土曜日で学校は休み。
その日は朝から反応が出て修一たちは、外出し現場で落ち合った。
なお瞳が一番乗りで、次は修一、そして蒼穹が、一番最後だった。
そして遅れてきた蒼穹に、
「遅いよ~」
と言う瞳、その口調は妙に癪に障るような口調である。
「悪かったわね。里美を誤魔化すのに手間取ったのよ」
と腹立たし気に返す蒼穹。瞳は里美の事を知っているので、
「それは仕方ないねぇ~」
とからかう様に言う。
ともかく全員そろったわけで、今回は昨日の歓楽街のように、
いても気まずい場所ではないのだが、修一は、
「本当にここであってるのか?」
「うん。今も反応は出ているよ」
「でもどこにも見当たらないよね」
と周りを見渡しながら言う春奈。今いる場所は、町中にある広い公園で、
休日を過ごす親子連れや、カップルで賑わっていて、
そんな人々目当ての出店も出ていた。それと修一だけの事だが、
(コスプレイベントみたいだな)
もう慣れてきたが、ファンタジックな格好の人々から、
未来的な格好の人々など、様々な姿をした人々がいる。
それはさておき、ここで反応があるという上に、
反応が消えていないから擬態を解いているはずだが、
それらしき奴は見つからない。公園は平和そのものだった。更に瞳が、
「あそこのクレープ美味しそう」
とクレープのキッチンカーを指さしたので、修一は、
(まさか、母体探しに託けて、遊びに来たんじゃねぇだろうな……)
思わずそんな事を思った、
更に、修一はキッチンカーに並ぶ人々を見ていると、急に血相を変えて瞳に、
「おい、まさかお前のストーカー行為に、
俺たちを巻き込んだんじゃねえだろうな!」
「何のこと?」
惚けるように言う瞳。一方蒼穹も、
「あっ天童君に、森羅さん!」
そうデートの来ているであろう零也と真綾の姿があったからだ。
「あの二人が、ここでデートするから、ここに来たのね!」
と彼女も問い詰めるように言うが、瞳は顔色を変えることなく。
「偶然だよ」
と言う。しかし、修一を含めこの場にいるほぼ全員が、信用していなかった。
更に、
「それと、桜井君。ストーカーじゃないよ。
私は、二人の恋を応援してるだけなんだから」
「そうだろうな。お前の中ではな」
と修一は皮肉交じりに言うが、やはり瞳は平然としている。
全員が疑いの眼差しを向ける中、瞳が、
「そろそろ母体を探そうよ。急がないと……」
と言いかけた所で、急に周囲が騒がしくなった。
そして公園内に、見るからに魔法使いと思われる集団が現れた。
それを率いているのは、
(あれは、対策室の偉いさん)
それはチェルシーで、彼女はメガホンで、
「お騒がせしてすいません。我々は、守護神機関です。
この公園には、怪獣潜伏の可能性があります。
これより封鎖して調査を行いますので、ご手数ですが全員、公園を出てください」
一部、抵抗している奴がいたが、物々しい状況に大多数の人々は、
公園から出ていく。修一たちも、ここで揉めるわけにはいかないので、
一旦公園の外に出る。そして出ていく際は、例の機械でチェックを受けた。
公園の外に出ても修一たちは、その場を離れることは無く。
周辺で様子見をするのだったが、瞳はどこか自慢げに、
「ねっ!偶然だったでしょ」
と言う。
守護神機関が来たという事はここでミューティの反応があった事を示している。
修一は、納得はいかなかったものの。
「疑って悪かったよ……」
と謝る。他の面々も同調する。
「別に、気にしてないよ。よくある事だから」
と笑いながら言う瞳。ただ全員釈然としないものを抱えていた。
なお瞳が、「急いで」と急かしたのは、この事を予想しての事だった。
彼女が反応を察知したという事は、守護神機関も同様だからだ。
その後は、様子を見守っていた修一たちであるが、
状況に変化がないまま、瞳が、
「反応が消えたよ」
と言ったかと思うと、向こうも察知したのか、
「調査の結果。問題がないことが分かりました。お騒がせしました」
とチェルシーがメガホンで言って、頭を下げて謝罪した後、全員撤退した。
撤退が終わると、さっきまでと同じ賑やかな公園に戻った。
修一たちも、一旦公園に戻る。
まあ、次の反応が出るまで身動きが取れない部分があるのだが。
そしてクレープ屋が再開すると、
「買ってくるね~」
と言って瞳は行ってしまった。
残された修一たちはと言うと、
「桜井修一、母体はどこに居たと思う?」
と蒼穹が尋ねると
「さあな、しかし、あれだけ大人数で探したの見つからないって妙だな」
反応があったのは確かなのに、見つからなかった。
しかも、昨日の歓楽街とは違い、開けた場所だから、
隠れてそうな場所は無いように思えた。
「やっぱり、光学迷彩とか」
という春奈。確かに姿を消す何だかの能力を使っていたとしか考えられないが、
「でもリュミエールは、その事は言ってなかったよな」
擬態化と同じく、結構重要な事だから、話しそうなものだ。
「言い忘れていたとか……?」
と言う麻衣。実際のところは彼女に聞かないと分からない。
ここでメイが、
「昨日も今日も……一つ……調べてない場所がある……」
と言い出した。
「えっ!」
と全員が声を上げつつ、
「どこなんだ。そこは」
「それは……」
と言いかけたところで、
「お前ら、何やってるんだ?」
「天童……」
零也に声を掛けられた。
後ろの方には、今にも爆発するのを我慢していると言う感じの真綾もいる。
どうやら二人は、公園から一旦出た後、戻ってきたようだった。
「まあ、ちょっとな……」
と本当の事は言えないので、誤魔化す修一。
「まあ、別にいいんだが……」
と零也が言いつつも、
「悪いんだが、彼女を連れて離れた場所に移動してくれるか?
このままだと真綾が爆発しそうで……」
言うまでもないが原因はメイがいるからである。
ここで修一はひそひそ声で
「お前らこそ、この公園から出て行った方がいいぞ」
「どうして?」
「今この公園には……」
と言いかけた時、修一の背後から、
「何の話してるのかな~?」
「「「!」」」
固まる修一、同じく固まる零也と真綾。
なおこの時、零也は修一の言葉の意味を知った。
声の主は瞳で、手には、なぜかクレープを複数持っていた。
「桜井君、まさかまた二人のデートの邪魔をしようってんじゃないだろうね?」
瞳は笑顔だったが、妙に怖かった。
「そんな事はしねえよ。ただデートを楽しめるように、
助言しようとしていただけだ」
この言葉に嘘はない。瞳が目を光らせている場所にいるのでは、
デートは楽しめないだろうと思ったからだ。そんな瞳は、
「ならいいけど……」
と言いつつも、
「じゃあ、私からも助言してあげる。二人で、そのクレープを買いなよ。
恋人が仲良くクレープと言うのは、なかなかいいと思うよ。
まあ、元より買うつもりだっただろうけど」
その一言で、封鎖前に公園に来ていた時に見られていたことに気づいて、
表情が固まる。
だが二人ともそろって瞳の助言には逆らえないのか、
「じゃあ。またな……」
と言って零也と真綾は、クレープのキッチンカーへと向かっていった。
二人が去った後、何とも言えない雰囲気が、辺りを覆うが、
瞳はお構いなしに、
「はい、これは桜井君の分」
と言ってクレープを差し出してきた。
「なんだよこれ?」
「チョコバナナクレープ、バニラアイス入りだけど?」
「だから、なんで俺に」
「私のおごりだよ。それともチョコバナナ嫌い?」
「好きだけど……」
「ならよかった。はい」
強引に、クレープを渡される修一。
なお同じことを蒼穹や春奈と言ったほかの面々にも行う。
そう彼女が持っていたクレープは、みんなの為に買って来たものだった。
なおメイに渡すときは、
「チミは確かレプリカントタイプだったよね」
頷くメイ、
「じゃあクレープは食べられるよね?」
と言って、渡していた。
瞳が持ってきたものだから、全員警戒したが、
「早く食べないと、アイスが解けちゃうよ~」
と言いながら自分を食べる瞳を見て、
安心したわけじゃないが、みんな食べ始めた。
クレープ自体は、大きなバナナに、一杯のクリームと、
チョコレートソースに、大き目なバニラアイスがあって、
ボリューム満点でおいしかったが、
「おいしくて、ありがたいんだが、どうして?」
と瞳に聞くと、彼女は笑いながら、
「気まぐれかな」
と答えるだけだった。
皆でクレープを食べつつも、ふと思い出して、
「なあ長瀬、調べてない場所があるって言ってたよな?
そこはどこなんだ?」
と修一は聞いた。なお彼女はクレープを頬張っていたので、
「食べてからでいいから」
と言うも彼女は、何かを伝えようと、何度も地面をつま先で突く。
すると蒼穹が、
「そういう事、何で気づかなかったんだろ……」
更に秋人も気づいたようで
「そいつは、盲点だった」
と言い出したので修一は、
「何かわかったのか?」
「地下よ。母体は地下にいるのよ」
と蒼穹が言うと、
「言われてみれば、その線もあるわね」
と春奈が言い、他も同調する。だが、この街にして日が経ってない修一は、
何のことかわからず一人きょとんとしているのだった。
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