24「引き続き交渉中」
到着したのは郊外の山林。
「車はここまでだな……」
と言う亮一。そこには、既に一台車が止まっていた。
「これミオが使っているのと同じ車種だな」
「まさか怪獣対策室の?」
と秋人が聞くと、
「ああお前、知り合いなのか?」
「ええ僕だけじゃなくて、他の皆さんも知ってますよ」
秋人の言葉に頷く春奈たち、
「ミオさん達も、状況を知っていて、修一君の救出を向かってるはずです」
と秋人は言い、
「ただ、僕たちも何かできないかと思って、貴方の所に来たのですが……」
亮一には、場所を特定してもらうだけの筈だったが、
まさか、現場に来るとまでは思わなかった。
そしてミオたちの事はともかく全員、車を降りて山林の中に入っていくが、
「あーーーーーーーーー!」
という声が聞こえて、
「アンタ!女の子を二人も連れて何やってるの!」
地面を強く踏みつけながら、ドシドシと言う音を立てながらやって来たのは、
天海蒼穹だった。
「遂に未成年に手を出したのね!」
「そんなんじゃねえよ」
と亮一は返答する。ここで秋人が、
「あの……僕もいますよ」
と言うと、
「なんで、有間君まで……まさか、男にも……」
「ちげぇよ!全く相変わらず、母親に似てるな」
ここで秋人が、
「別に、おかしな事をするわけじゃないんですよ」
そして事情を説明する。
「それでか……」
とは言うものの、亮一には疑いの目を向けている。
「ところで、天海さんはどうして……」
と言う麻衣に、
「貴女たち、創月さんにメッセージ入れたでしょ。私も近くにいて、
それを見ちゃったのよ。それで、気になって一緒に来たの。
でも、彼女と逸れちゃって……」
そんな中で、亮一達を見かけたのであった。
ここで秋人が、
「でも、学校は?」
と言うと亮一が、
「光弓学園も休校だってニュースで言ってた不津校と同じ理由で」
「そうだったんですか」
そして亮一は、蒼穹に
「それよりも、修一を助けに行かないと」
と言って森の中を進んでいく。秋人達も付いていき、蒼穹も付いていく。
そして森を進む中、
「蒼穹さんは、亮一さんと、お知り合いなんですね」
と言う秋人。
「知り合いって言うか、母さんの同級生よ」
蒼穹は、母親から亮一のことは聞いていた。
腕はいい拝み屋だが、酷い女たらしだと、
「この前のお札も実際は、アイツが作ったんじゃないかって思ったんだけど」
「実際、そうみたいです」
ここで秋人は、誤魔化していた理由も含め、お札に関する真実を話した。
「確かにアイツの作ったお札と分かったら、不信感を覚えるわね」
それと女たらしに関しては、話だけでなく実際に、
街で歩いている姿を見て、見かける度に女性が変わっていて、
しかも毎回、昼間からホテル街に入っていくのを見て確信したという。
そんな訳だから、蒼穹は亮一を毛嫌いしていた。
その後も、森を進んでいく中、亮一は、
「御神春奈だったか?」
「なんですか……」
春奈も、蒼穹と同じく亮一に嫌悪感を抱いているので、
あからさまに不機嫌そうに言った。
「お前の母親は、愛華って名前か?」
「ええ、そうですけど……」
「そうか……」
と言っただけ、
「何ですか、いきなり!」
「ちょっと確認したかっただけ」
「何のですか?」
「ここで話すのは、ちょっとな……」
「はぁ?」
何を確認したかったのかは、言わなかったが、
ただ、春奈は不信感を抱いただけだった。
それからしばらく森を進んだが、
「おかしいな?もう辿り着いてるはずなんだが」
「どういう事ですか?」
と言う秋人に、
「分からない。迷ってはいない筈なんだか……」
と足を止め、頭に手を当てる亮一。
「そんな事言って、迷ってんじゃないの」
という蒼穹だが、亮一は特に反論もせず、
少し考え込む仕草をした後、
「前は円盤を消すだけだったが、他にも細工したな」
「細工と言うと?」
と秋人が聞くと、
「恐らく人払いの結界だろ」
「人払いの結界ですか、だから辿り着かない」
「そうだ」
魔法にも同じようなものがあり、人間の認知に影響を与え、
無意識にその場に寄り付かない様にしてしまうもの。
「ちょっと待ってろ」
と亮一が言うと、両手を組み、早口で呪文を唱えながら、
素早く複数の印を組む。
すると、亮一の前に五芒星が浮かび上がった。
その頃、修一は監禁部屋にて、テレビを見たり、ネットをしたり、
漫画を読んだり、お菓子を食べたり、ゲームをしたりと寛いでいた。
そこの耕史が現れて、
「随分と楽しんでるね」
「ああ、暇だったからな。それに大丈夫かも確認してるしな」
耕史がいない間に赤い怪人の力を使って、
食料に問題がない事は確認している。
「薬とかは入れてないよ。そう言うので合意をとっても、
点数が下がるだけだからね」
そんな耕史に、
「楽しませてもらってるけど、代償は踏み倒すからな。地球はお前に渡さない」
と宣言する修一し、側に会った漫画本を投げつけた。
本は、耕史の体をすり抜ける。どうやらまだホログラムのようだった。
「この程度のもてなしで君を篭絡するつもりはないよ。
これも点数維持の為さ、飲まず食わずで一人きりの状態にして、
正常な判断力を失わせるわけにはいかないからね」
と耕史が言った後、
「でも、我々と手を結んだ方がいいよと思うよ。
こっちとしては、我々の技術、それこそ君らの超科学を超えるものだ。
それを提供する」
「見返りは服従か?」
「そうだけど、別に君たちに迷惑をかけるようなことはしないよ。
大国に従う小国みたいに思ってくれればいい。
それに、この地球に他の星から侵略があった場合は、我々が責任を持って支援する」
その後は、自分たちの技術力や軍事力について、VR映像で実感できる形で、
見せて来て、自分たちと組む事がいかに素晴らしいか力説した。
「あの大十字久美だって喜んでくれるだろう」
VR映像には圧倒されたし、興味を持つ部分もあったけど、
うさん臭さは払しょくできなかったので、修一の心は揺れ動くことはなかった。
VR映像は消えて説明を終えた後、修一は逆に質問した。
「なんで、この星を選んだんだ?」
すると耕史は、
「正直に言って、特撮作品に出てくるような侵略宇宙人のように、
手に入れたいと思うほど、この星は魅力的じゃない。特に環境汚染は酷くてね」
侵略をしたとしても、戦後処理に汚染の除去も含まれるので、
その手間は大きく、そこまでして手に入れる価値はないのだという。
「この星と同じ名前で、そっくりな星があるけど、
そっちの方が、人気があるね。環境汚染も少ないし手に入れる価値はある」
修一はその物言いにイラっと来たが、
「じゃあ、どうしてこの星に?」
「『ゲート』だよ」
「ゲート?」
「異世界とつながる穴であるゲートは、我々にとっても興味深いものだ。
特に魔法と言うのが興味深い」
耕史は自分たちの技術が超科学を超えるとは言いつつも、
やはり異世界の技術が、気になるようだった。
ただそれだけではなく、
「僕の予測ではゲートから得られる技術は、
いずれこの星を侵略に値するほどの素晴らしい星に変えてくれる。
だがその時は、我々でも手出しできないだろうね」
「その前に、つぶすって事か」
と睨みつけながら、低い声で言うと、
「そうじゃない、あくまで傘下に収めておきたいのさ。
僕らの勢力を高めるためにね」
と言いつつ。
「それに、ゲートを知り、僕と同じ考えに至っている異星人もいる。
僕たちとは違い、自分たちの脅威になると感じて
君の言うように、手出しができなくなる前に潰そうする物騒な連中も多い」
実際にそう言った連中が表向きにはなっていないが、地球を攻撃しているという、
なお表向きになっていないのは、守護神機関の組織が、
秘密裏に解決してるからだ。
耕史は優しい物腰ながら、脅すように、
「しかし、この星の住民では手に負えないほどの奴が来てもおかしくないんだよ。
その前に、僕らと手を組む方が得策だと思うけどね」
そして耕史は、宙にモニターのようなものを出現させて、
地球に侵略をしかねない色んな宇宙人の映像を見せて
そいつらがいかに危険かを訴え、そして自分たりフィレス星人と組めば、
容易に追い払われることを話す。
修一も映像を見せられて、危険性を感じたが、
だからと言って耕史たちを信用するとはいかなかった。そんな修一に耕史は、
「恥ずかしながら僕らも一枚岩じゃない。
僕以外の同族がこの星を襲う事があるかもしれない。
でも、傘下に収まってくれれば、僕らがそいつをキチンと処罰する」
と言った後、
「それに、この星を守ってくれそうなのは僕たちだけだよ」
と言って優しそうで、それでいて胡散臭い笑みを浮かべた。
「リュミエール達は?」
と反論するかのように言うが、
「奴らが把握しているであろう知的生命体は130億、僕らも同じだけど。
その中で、この星の優先順位は極めて低い。
リュミエールだって、ミューティが来なきゃこっちには来なかった」
と耕史は言い、更に、
「他にも、似たような連中がいて、既に地球を侵略者から守ってくれてはいるけど、少数だ。侵略してくる奴らも少数なんだからね
でもこれからが違うよ。それに優先順位は直ぐには上がらないよ」
リュミエールの一族を含めた宇宙を守る勢力が、地球の優先順位を上げたとしても、
手遅れになる可能性もあるという。
そして、最後通告を出すように、
「この星の未来の為にも、僕に地球を譲ってくれないか?」
しかし修一の答えは変わらず
「断る。つーか、お前の話を聞いてたら、侵略をゲームしている様にしか見えない。
そんな奴は信頼に値しない」
すると耕史は笑いだす。
「何がおかしい」
「いや~ごめんごめん。君のお父さんと同じことを言ったからね」
「父さんと……?」
「やっぱり、親子なんだね」
ここで、修一はリュミエールや澄玲の言葉を思い出し、
過去にやって来たフィレス星人が耕史だと察した。
彼の言っていたリベンジと言っていた意味も分かった。
亡き父が宇宙人と関わったという話は聞いたことはない。
母である功美は父親である涼一の事はあまり話さないから、
修一も知らない事が多い。
(どうやら、コイツとは深い因縁があったみたいだな)
耕史を睨みつけながらそんな事を思うのだった。
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