23「再び拝み屋と過去の因縁」
九龍についたものの、
「え~と……どこだったかな……」
麻衣は、九龍内の最寄り駅までは覚えていたが、
亮一の家の場所を忘れていた。
「覚えてないの?」
きつめに言う春奈、
「ごめんなさい」
泣きそうな顔になる麻衣。九龍は、かつて香港にあった九龍城と同じく、
入り組んでいて、場所をきちんと覚えてないと迷子になりやすいのだ。
しかも、GPSアプリもここでは使えない。
だから春奈は思わずキツイ口調となっていた。
「春奈さん、ちょっと落ち着いて……」
となだめる秋人。
そして、
「とりあえず人に聞いてみようよ」
と言う秋人、丁度赤いコートの女性が、通りかかったので、
「すいません」
「何?」
「道を聞きたいんです」
その女性は、秋人達をじっと見ると、
「あなた達、不津校の生徒ね。今大変なことになってる見たいだけど」
制服姿なので、すぐにわかる事なのと、
不津校の騒ぎはニュースになっている模様。
「ええ……」
と言いつつ、
「龍宮亮一さんの家を探しているんですが?」
と聞くと、女性は春奈たちの方を見て、険しい顔で、
「何しに行くの……?」
と聞いてきたので、その様子にたじろぎながらも、
「人探しを……」
と答える。
「まあアイツは、人探しも得意だけど……」
と言いつつ、春奈たちに、
「あんた達、彼氏はいる?」
と聞いてきたので、
「いませんけど……」
すると女性は考え込むようなしぐさをして、
「フリーとはいえ、さすがに未成年は口説かないわよね」
と言い出しので、顔色が悪くなる春奈。
そして女性は、場所を口で教えるだけでなく、
持っていたメモ帳をちぎり、地図や部屋番号の様なものまで書いてくれ、
去っていった。一人目であたりだったが、
どうも亮一は、悪い意味で有名なようであった。そして春奈は、顔色が悪いまま、
「今のどういう事?」
事情を知る秋人は目を背け、麻衣も事情を知ってるのか目を背ける。
「どういう事?」
と再度、春奈に低い声で迫られ、
秋人は、亮一が女たらしという事を話してしまった。
「何ですって!」
声を上げたので、秋人は話で聞いただけだと言おうとしたが麻衣が、
「でも、他人の女性には手を出さないって……」
とフォローになっているか、わからない事を言い出したので、
女たらしと言うのは、確定事項のようになってしまった。
「だから、あの人、彼氏がいるか聞いたのね」
彼氏がいたら、心配ないから心置きなく話せるという事だった。
「最初にあった人が、あたりってことは、
もしかしたら相当な有名人なんじゃないの」
と春奈はますます嫌悪感を見せた。
しかしここまで来た以上、引き返せそうにないので、
地図に従って、亮一の家に向かった。
「ここだね」
そこは一見ぼろそうな廃ビルのような場所で、
天井がギリギリ九龍の天井に届くか届かないかと言う感じ、
なお九龍は大きな建物の中に、別の建物が立っているという。
ある意味、異様な風景が見られるが、この街に長く住む、秋人達には特に驚かない。
とにかくこの建物に、亮一の事務所を兼ねた自宅があるという。
建物の近くまで来ると麻衣が思い出したのか、
「ここです。思い出しました」
と言った。その後建物に入り、秋人は貰ったメモを基に、
「部屋番号は2046号室……あった」
部屋を見つけ、呼び鈴を鳴らした。
少しして、ドアを半分開けて、だるそうな顔で、
Tシャツとジーンズ姿の亮一が出てきて、
「どちら様……って麻衣ちゃんじゃないか」
「ご無沙汰してます」
「何で学校は……」
と言いかけて、
「そういや学校が休校だったな、ニュースでやってた」
と言った後、春奈と秋人を見て、
「そっちの二人は、お友達か……」
と言いつつ、特に秋人の方を見ながら、
「飛び級?」
秋人は即座に、
「違いますよ」
答えつつ、春奈と秋人は自己紹介をした後、
「人探しをお願いに来ました」
と言うと、
「そうか、ちょっと待ってな」
と言って、一旦扉を閉めた。しかしその時、春奈は見てしまった。
「!」
玄関の女性ものの靴に、更に廊下には、
女性下着が散乱していることに。そして亮一が一旦扉を閉めた後、春奈は
「来るんじゃなかった……」
とつぶやいた。
少しして、先ほどよりも身なりが整った亮一が姿を見せた。
「どうぞ」
と言われたので、秋人達は、
「お邪魔します」
と言って部屋に入った。玄関には女物の靴があるが、
廊下には下着は落ちてなかった。
扉を閉めている間に片づけたものと思われた。
その後は応接室に通された。そして、
「オレンジジュースでいいか?」
と言われ、
「いえお構いなく……」
と麻衣が言うが、結局、オレンジジュースが出されることになり、
「最初に料金だが、術による位置の特定は1万円、学生割で半額の五千円」
口にはしなかったが子供料金なら100円である。
「ただし、分かる位置は術を使ったその瞬間だけだ」
人間は移動するので、特定した場所に行ってもすでにいない可能性がある。
その場合、更なる調査が必要になる。
「実地調査が望みなら、更に追加料金を貰う」
と言われたが秋人は、
「たぶん、動くことはないんで、位置特定だけいいです」
「動くことはない?まさか、拉致監禁でもされてるのか?」
「たぶん……」
「警察には?」
「いいえ……でも然るべきところには話してますんで」
「そうか」
と言って亮一は、それ以上は話を聞かずに
「そいつの名前と写真と、普段使っているものを貸してくれ」
「名前は桜井修一君です」
「桜井修一……まさか……」
「あなたの知ってる桜井修一君だと思いますよ」
スマホで画像を見せると、亮一は血相を変えて、
「おい、修一に何かあったのか!」
と大きめの声を上げたので、圧倒されつつも、
「攫われたんです」
と答えると、
「なんだって!」
とさらに大きな声を上げた。
「どういう事なんだ!」
物凄い剣幕で聞いてくるので、宇宙人の事は話さず、
事情を説明したが、千里耕史の名を聞いて、
「奴か……なるほど、警察には言えないな」
「ご存じなんですか!」
と目を丸くして驚く秋人達、
「ああ……」
と答えつつ、小さな声で、
「ついに奴が帰って来たか……」
とも言った。そして、
「普段使っているものを、貸してくれ」
「はい!」
と言って秋人はハンカチを渡した。
亮一はそれをテーブルの上に置くと、手を組み、
ものすごいスピードで動かした。
なんとなく印を組んでいるようにも見えるが、あまりの速さで形が分からない。
更に、呪文のような物を唱えているようだが、かなり早口で聞こえなかった。
するとハンカチの上に五芒星が浮かび上がる。
その状態がしばらく続くと、五芒星は消えて、
「これで修一の大体の位置が分かった」
と亮一は言い、
「今回の依頼料はただでいい」
「それは、悪いですよ」
と言う秋人に
「親友の息子の危機に、金はとれない」
そう言うと奥の部屋に入っていき、扉を閉める。
扉の向こうからは、女性の声で、
「桜井君の息子が……私の事は良いから、行ってあげて」
という声が聞こえると、部屋から革ジャンを着た亮一が現れ、
「俺は、これから現場に向かう。お前らは……」
三人の顔をじっと見た後、
「行くか?」
と聞いてきたので、
「行きます」
と答え、春奈も麻衣も同意する。
その後、集合住宅を出て、入り組んだ通路を通った後、
屋内駐車場にやって来る。そこに止めてある亮一の車、バンに乗り込んで出発した。
なお秋人達は、後部座席に乗り込んだ。
ただ車内に女性ものの香水のにおいがするのと、
避妊具らしきものが置いてあるが、秋人があえて見ない事にした。
そして運転する亮一に対して、
「あの千里って人と何かあったんですか」
すると亮一は、
「お前らは奴が宇宙人だって事は?」
「知ってます」
「そうか……」
と答えつつ、
「あれは、俺が高校生の頃、ちょうど今のお前たちと同じくらいの歳の頃だ」
当時、亮一と、修一の父親である涼一の通う学校に、
教育実習生として、千里耕史はやって来た。
「イケメンだし、誰にでも優しいから男女とわず人気は高かった。
俺や涼一、あと先生も、奴に胡散くささを感じていた」
「功美さんが……」
「そして涼一が姿を消した」
亮一は今回と同じ術を使い術を使い、居所を割り出した。
「あの頃は使い慣れてなくて、だいぶ手間どったけどな」
そして、亮一と知り合いたちが、救出を行った。
その際に、耕史が宇宙人だと知ったという。
ここからはどこか誇らしげに、
「一番すごいのは亮一さ、アイツは俺たちが助けに行くまでの間、
千里の誘惑に、頑として突っぱねていたんだから」
救助された時も、余裕な様子だった。
「突っぱねられた千里は、地球から去って行った。去り際『また来る』と言ってた。
その時が来たみたいだな」
そのまま目的地に向かい車を走らせるのだった。
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