22「一方その頃」

 その頃、修一が突然消えたので、


「あれ、修一君は?」


離れた場所にいた春奈たち、寄って来るし、

同じく離れた場所で見ていた澄玲とミオもやって来た。


「まさか、転移……」


と言う秋人、状況はそうとしか考えられなかった。

秋人を含め、この場もいた全員が、彼を見ていて、

目を離してなどいなかったからだ。


 恐らく耕史の仕業だと皆が思った。結局、護衛は無駄に終わったのだった。

そして秋人達が愕然とする中、ミオが、


「彼は私たちの方で探すから、貴方たちは学校に行きなさい」

「でも……」


と秋人が食い下がるが、


「私たちが、彼を探すのは仕事の内だけど、

貴方たちは、学生なのよ。学生の本文は学業なんだから、早く学校に行きなさい」


と言われ、秋人達は、渋々ながらも、


「分かりました。でも何か分かったら、教えてください。

守護神機関なら、少なくとも僕の連絡先は分かりますよね」

「ええ……」

「じゃあ、頼みます」


と言ってミオたちに後を任せて学校に向かった。


 しかし学校に着いたら着いたで、かなり大騒ぎとなっていた。


「何が起こって……」


学校では、学内のコンピューターがすべてダウンしたり、

水漏れがあちこちで起きたり、火災警報機が誤作動を起こし、

スプリンクラーから消火剤をあちこちに振りまき、

また窓ガラスが割られるなど様々な被害が出ていた。

この為、授業どころではなくなり、 臨時休校となったのだった。


 学校が休校になったので、別の学校に通う千代子を除いた秋人達は、

修一を探せるようにはなったが、手がかりは全くない状態なので、

何処をどう探せばいいか分からない状態。ひとまず、学校から出た所で。


「取り敢えず、瞳さんと言うかリュミエールさんに、連絡を入れた方が良いね」


と言っても秋人は連絡先を知らないから、

春奈が連絡を入れるが、時間的に授業が始まりそうなので

アプリで、メッセージだけ送っておいた。


 さて連絡は入れたものの、


「どうしようか……」


先も述べた通り探す当てはない状況。ここで麻衣が弱弱しい声で


「あの……拝み屋さんに……頼んだらどうかな?」

「拝み屋?」

「私が知っている人で、九龍にいるんですけど……

陰陽術で人や物を探せるって……」


九龍と聞いて思い当たる節があった。


「もしかして龍宮って人?」

「そう……有間君も知ってるの?」

「話を聞いたことがあるだけ、でもお世話にはなったかな」


そうサキュバスの一件の時だ。


「大丈夫なの、拝み屋なんて……」


と拝み屋の術は、超能力や魔法が当たり前のこの街でも、

得体のしれない物なので、不満そうな春奈だが、


「腕は確か……」


と言う麻衣に、秋人も、


「その力は、間違いないと思いますけど……」


でも話じゃ、女たらしという事だから不安があるが、

今は、他に当てが無さそうなので、女たらしと言う部分は隠し、

結局、その拝み屋である龍宮亮一に会いに、九龍に向かうのだった。

ちなみに学校での騒ぎが、

耕史が引き起こしている事だとは秋人達はまだ知らないし、

それと同じ現象が光弓学園でも起きて、

そっちも休校になっていることも知らなかった。






 一方、ミオと澄玲は、スマホのような物を取り出して


「よし、残滓を確認したわ」

「後は時間との勝負ですね」


実は最初の侵入の後に、調査をしていた六華が

未知のエネルギーの残滓を確認していた。


「これは、転移残滓に似てますね」


超科学のおける転移の場合。長距離に限られるが、

痕跡を残していく。それが転移残滓と呼ばれ、

目には見えないので、機械的な物で確認する必要が有る。

その転移残滓は分析すれば、転移した場所まで特定可能。


 しかし残滓が見つかった時はみんな、まさかと思った。

建物に施された「転移除け」は、魔法だけでなく、

超科学の転移も防ぐからだ。しかし状況から見て転移しか考えられない。

同じように、追跡ができそうだったので、それを行った。


 しかし転移残滓は、長くは残らない。反応は追跡の途中で無くなり、

結局、敵の元に辿り着けなかった。先の戦いでは、

ギガアウラウネの事で手いっぱいであったので、

確認した時には、殆ど追跡は出来なかった。


 今回は、まだ消えたばかりだから間に合うと思った。

二人は近くに止めてあった車に乗りこむ。

運転席には、ミオが乗り込み。助手席には、澄玲が乗る。

そして先ほどの端末を車内の機会に接続する。

するとナビゲーターに転移残滓からの追跡の状況が映し出された。


「さあ行くわよ」


車のタイヤが変形し水平になると、空へと浮かぶ。

その車は空飛ぶ車だった。


 そしてナビゲーターに従い、移動するが、


「ちょっと、スビード出し過ぎじゃないですが」

「急がないといけないでしょ!」

「でも急いだからって、結果がすぐ出るわけじゃないんですよ」


ナビに映し出される状況を急いで負ったところで、たどり着けるわけじゃない。

時間との勝負と言うのは、あくまでも機械的な事。

今回使っている装置は、

これまでの魔法や超科学による転移の追跡に使われていたものに、

侵入者が残した残滓の情報を組み込み強化したもので、

従来品よりも早く結果が出るようになっている。


 しかし、実際に使うのは今回が初めてなので、

追跡を完了するのが先か、反応が消えるのが先かの勝負であった。


 ただミオは妙に焦っているようなので、


「ミオさん、少し焦りすぎですよ」

「………」


確かにミオは焦っていた。

ここ最近は、イクシードにおんぶに抱っこの状態が続いていた。

対策室は怪獣に関する調査、分析、作戦提案など、

あくまでも後方支援が目的で、対処は戦闘向けの職員や

自衛隊、警察、冒険者たちなど、第三者に任せる事が多いものの、

そう言う人々は、素性がハッキリとした存在だ。


 しかし今でこそ、全員の素性は知ったものの、

魔法少女は、これまでは得体のしれない存在で、

ミオにはそう言うのに頼るのは、どうなのかと言う気持ちがあった。

しかも、イクシードこと瞳に関しては、宇宙人の憑りつかれているという状態で、

未だ、得体のしれない存在でもある。


 だからミオは、今回、そう言った存在に頼らずに、

事態を解決したいという強い思いを抱いていた。

それ故に、焦りのようなものが出ていた。


「少し、落ち着いてください。焦っても何もならないんですから」

「わかってるわよ!」


澄玲に、宥められても焦る思いを抑える事が出来ずに、


「今度こそ、私たちの手で解決するのよ……」


とそんな思いを強く抱くのだった。







 さて九龍に向かう事を決めたものの、


「人探しには……その……写真と普段、桜井君が持っているものが必要なの」


と麻衣が言うので、

写真は秋人が、前にみんなで撮ったものをスマホに保存しているが、

亮一は、おそらく顔を知っているのでいらないと思われる。

持ち物の方は当初、学校から上靴を持ち出そうと考えていた。

学校は今、混乱状態なので、持ち出すのは容易であるが、

物を盗むみたいで、気が引けた。

 

 そして、再び学校に戻ろうとすると、


「貴方たち、今から帰るところ?」


と声を掛けられた。


「桜井さん……」


と春奈が言う。そこに居たのは修一の母親である功美だった。

何故ここに居るかは定かではないが、


「休校って事みたいだけど、なんだか大変そうね」


学校は電話回線も使えない状況で、教師たちが各自のスマホを使って、

学校を出る前に、保護者に連絡を入れている姿を、秋人達は見ているので、

それで知ったのと思われる。


 そして


「秋人君、修一は一緒じゃないの?」


と聞かれ、ダメもとで、秋人は


「修一君の持ち物を貸してくれないでしょうか?」


と尋ねた。すると、


「修一の身に何かあったのね?」

「ええ……」


事が事だけに説明しづらかったが、功美は特に何も言わず、


「わかったわ」


とだけ答え、全員一旦、修一の家に向かう。


 家に着くと


「ちょっと待ってて」


といって功美だけが家に入っていき、ハンカチを持って出てきた。


「修一が愛用しているハンカチの一つだけど、どうかしら?」

「行けると思うよ……」


と麻衣がいい、


「ありがとうございます」


と秋人が受け取り、頭を下げる。


「こっちこそ修一の事、頼むわ」


と言われ、秋人達はその場を後にして、駅へと向かい九龍行きの電車に乗った。

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