17「イクシード対ギガアウラウネ(2)」
ギガアウラウネは、巨人から怪獣へと姿を変えた。
付近に設営しているテント上の現地対策本部では、
対策室が、ドローンを使ってモニター越しにこの状況を確認している。
そしてミオは、
「これはまずいわね……」
六華が怪獣を分析して、
「これは現状の戦力では対処が難しいでしょう。
一旦冒険者たちを引かせて、体勢を立て直したほうがいいかもしれません」
「確かに、その方がよさそうだな。」
と言って、チェルシーが現場にいる戦闘要員の職員を介する形で、
冒険者に一旦引くように指示を出した。するとミオは、
「澄玲にも、戻ってくるように言わないと」
ドローンからの映像で、ミオは澄玲が現場にいることを知っていた。
そして対策本部に戻ってくるように連絡を入れつつ、
彼女が対策本部は立ち去った後に設営したので、
具体的な場所も教えてないので、スマートフォンに情報を送る。
連絡を終えたミオは、
「もうちょっと戦力を用意できないのかしらね」
「自衛隊の魔法科連隊は災害派遣で、こっちに来れませんし、
ロボット部隊も例の機体が使えないとの事で、
あと警察の魔法隊も、市内で起きている事件で、手が回らないようですし……」
とにかく魔法攻撃以外では、対処できないという現状が、
枷となっていて、機関の人員を含めたとしても戦力不足という状況だった。
一応冒険者ギルドに連絡を取って、
魔法使いによるボランティアを呼び掛けているし、
職員の増員も行っているが、直ぐは集まらない状況。
ここでチェルシーが、
「結界の準備に入れ、時間稼ぎするぞ」
どれだけ持つか分からないが周囲に強力な結界を張って、
敵を抑えて置き、その間に体勢を立て直す事にした。
「準備ができたら、連中に呼びかけろ」
もちろん、魔法少女たちと赤い怪人もそこに含まれている。
ただ、推定される怪獣の強さを考えても、
結界を張るには時間が掛かる。
それまではどうにか足止めをしてもらわなければいけない。
そんな中で、ミオは
(今は、魔法少女たちに頼るしかないのか……)
魔法少女たちの力は、並の冒険者、守護神機関の戦闘要員よりもずっと強い。
冒険者たちが一旦、その場を離れる中、残るのは魔法少女達と赤い怪人
彼女たちに頼らざるを得ないという状況に、
ミオは自分たちの無力さを感じて、苛立ちを覚えていた。
それと同時に、
(何なの、あの赤い怪人は……)
ミオは不良たちの間で、過去にお菊番長とその舎弟たちを、
ボコボコにしたという噂が流れているのを聞いていた。
そして触手を振り回しているのを思い出し、
(あれは、間違いなく『イーブン』よね。一体何者なの?)
という疑念を抱きつつも、
「イーブン」は超能力なので、細胞が散らばっているじゃないかと、
不安を抱いた。ただギガアウラウネへの攻撃と、
その直後の音波攻撃の際の混乱もあって、うまく呼びかけが出来ていない。
撤退命令と同時に、赤い怪人への呼びかけも行うのだった。
さて第二形態となったギガアウラウネは強力で、
触手がさらに増えて、その攻撃が激化した。なお後から増えた触手は太く、
先端が爬虫類の口のようになっていて、絡みつくだけでなく噛みつきそうである。
さっきの触手に比べ数自体は多くない。
なお元の触手は特に変化はなく、赤い怪人のお陰で球になったままであるが、
もし解けるような事があれば、ますます状況は悪化するだろう。
また触手だけでなく、怪獣は植物的であって、筋肉が隆々で、
手足も太い。触手と共に重たい拳で、イクシードに殴りかかる。
しかも、動きは素早く避ける事が出来ず、受け止める事に、
「!」
イクシードは、かなり重い一撃を受け止めたのか、衝撃が全身に走るが、
耐えきり押し返し、反撃として光線のような物を撃つが、
ギガアウラウネも口から光線のようなものを吐き、相殺する。
しかし怪獣の攻撃はそれだけ留まらず、新たに現れた触手も、
同じような光線、中には炎や電撃を放射したりもしてきて、
見た目だけでなく能力的にも触手は強いようだった。
そして触手たちの一斉攻撃に対し、イクシード以外の魔法少女と、
赤い怪人は回避するが、イクシードは、回避行動こそとっているものの、
その巨体故に、回避しきれずに、数発ほど被弾している。
ただ見た目的には、ものとしてない様に見えた。
そのままイクシードは格闘戦に移行し、プロレスの様な技をかけていく。
ただ触手による攻撃もあるが、第一形態時の触手の様に、
動きが精密で、勝手に絡まり合うような事はないみたいだが、
さっきのとは違って、ここに独立した意思を持っているようなところがあり、
うまく引き付ける事が出来た。
そこで魔法少女と赤い怪人によって、攻撃を引き付けた。
ただ新たな触手はイーブンの効果で、神経を麻痺させることはできないので、
ひたすらダメージを与えるだけだった。
途中、赤い怪人に向けて撤退の呼びかけがあった。
「こちらは守護神機関、君の攻撃は、怪獣の細胞を拡散させ、
新たな怪獣を生み出す危険性がある。即刻引きなさい」
呼びかけてきたのは魔法使い風の男性で、守護神機関の職員のようで、
それは、イーブンが細胞を無力化する事を知らないであるが故の事だったが、
因みに、ギガアウラウネが魔法以外の攻撃が厳禁なのは、
冒険者ギルドを介して、ボランティアの冒険者には伝えられているし、
勝手にやって来た人々向けに、アナウンスもしている。
細胞の無力化を説明しようにも、
信用させるのが難しいので、
「俺の攻撃は、一応魔法なんです」
攻撃を避けつつもそう返した。更にメタルマギアが、
「本当です。赤い怪人の攻撃は、魔法なんです」
と助け舟を出した。「イーブン」については、
修一だけでなく、この場にいる魔法少女にもリュミエールは伝えている。
それは事情を知らないと、赤い怪人を止めようとする可能性があったからだ。
なお魔法少女達は、正体不明の存在ではあるが、信頼はあるので、
以降職員は、呼びかけて来ることはなかった。
あとこの時、守護神機関の呼びかけで、冒険者たちは撤退していたが、
イクシードが引かないのと、それ以前に、この湖での戦いが、
周囲への影響を考え都合がいいので、他の魔法少女と赤い怪人は、
引かなかった。それにイクシードとプロレスをしながらも怪獣は、
街の方を向くので、放っておいたら、街に進行しそうに思えたからだ。
そして第二形態以降の触手は、性能は上がっているものの、
先の触手に比べて、切り落としやすかったり、
破壊しやすく、魔法少女の攻撃、
メタルマギアのビームソードや、鬼姫の刀による斬撃、
切り落とし、フェイブルのマスケット銃による銃撃で、破壊し、
またイーブンによって、素手で引きちぎることができた。
ただ再生力は強力で、破壊されても瞬時に再生するので、
状況の変化が見慣れなかった。
それと余談であるが、鬼姫の刀は魔法によって生成されているので、
一見、物理攻撃だが扱いは魔法攻撃なので、ミューティの細胞は無力化できている。
破壊されても瞬時に再生するので、なかなか減らない上、
(なんだか増えて来てるような……)
少しずつだが、触手の数が増えている。触手自体の攻撃に、
本体の方も、イクシードとプロレスのようなことをしながら、
口から光線を撃つだけでなく、パンチやキックが衝撃波を伴っていたり、
目や体のあちこちから、光線を撃ってくる。
(危なっ!)
あまりの猛攻に避けるのがかなり大変だった。
これらの光線は、常時撃ちっぱなしではないので、
ましだったが、衝撃波は頻繁に来るし、
触手の口からの攻撃も頻繁なので周囲への被害も大きくて、
大変で事前にリュミエールが危惧していた激しい戦いとなりつつあった。
この時、冒険者たちが、一旦身を引いているが、
もし残っていたら、かなりの被害が出ていたに違いない。
そんな中、赤い怪人は引き続きプロレスを続けるイクシードを見て、
(大丈夫、何だろうか……)
接近攻撃をしている関係で、衝撃波は常時だし、
体から放たれる光線は避けきれていなくて、
何発か被弾している。その為、体の鎧のようなものが、
ボロボロになりつつあるが、動き自体は変化がない。
攻撃を物ともしていないようにも見えるが、
しかし見た目的なこともあり、一抹の不安を感じていた。
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