6「その名はリュミエール」
瞳を問い詰めると決めたものの、得体のしれない状況にあるので、
春奈と麻衣に、修一、蒼穹も加わり、
同じ魔法少女の千代子と明菜も来てもらう事にした。
なお魔法少女絡みなので、正体を知らない者は誘えない。
メイは、明菜の事は知らないので呼べない。
そして予定の調整が必要となったので、週末になった。
それまでの間、怪獣こそ出現しなかったが、
イクシードの出現はあった。場所は、ファーストやスラッグが現れた郊外で、
やってくる度にリカバー光線あちこちに撃ち、去っていくというもの。
それを週末まで不定期に行っていた。
その事をやはりスマホの画面で知った修一は、
(一体何やってるんだ?)
とは思った。
待ち合わせ場所は、駅前で、春奈、麻衣、千代子、明菜。
遅れる形で、修一と蒼穹が一緒にやって来た。
なお他の面々に比べて遅れてはいたが、約束の時間には間に合っていので、
携帯等で連絡は入れていない。
ただ二人がそろって遅れてきたので千代子が、からかう様に、
「なんや、二人仲良く遅刻かいな」
と言ったので、蒼穹は顔を赤くして、
「偶然だから!偶然よ!」
蒼穹とは対照的に修一は冷静に、
「今そこであったんだ」
と言って、それぞれ遅刻した理由を話す。
蒼穹は、里美を誤魔化しきれず、一緒について来ようとしたので、
撒くのに手間取ったことを話した。
修一は、
「実は、対策室の二人と出くわしたんだ」
家を出て、少し歩くとミオと澄玲の二人と会った。
「ちょうどよかった。今あなたの家を訪ねるところだったのよ」
とミオが言った。
「この前の女神の事で、もう一度話が聞きたくて」
澄玲は申し訳なさそうに、
「何度もごめんね」
と言う。修一は、
「今日は、用事があるんで」
ミオは、
「時間は取らせないから……」
とは言うが、なんか長話になりそうな気がして、
「すいませんが、時間がないんで、用事があるなら事前に連絡ください。
俺は逃げも隠れもしませんから、
家を知っているなら連絡先も知っていますよね?」
「えぇ、それはわかっているけど……」
「それでは、日を改めて……」
そう言って、その場を後にしたが、その後、視線を感じ、カーブミラーで確認して、
(付いてきてるな……)
なおミオと澄玲は探偵じゃないし、人間の捜査は専門じゃないから、
尾行は下手であったので、直ぐに気づく事ができた。
途中で撒こうとしたのだが、気づかれやすかったものの、かなりしぶとく、
修一は、撒くのに手間取ってしまい。約束の場所に遅れたのだった。
修一の話を聞いた春奈は、
「連中が桜井君を疑っているって事?」
「隠し事をしていることに気づかれたんだろうな」
すると麻衣が、
「守護神機関の方も、その……気を付けないと……」
ここで明菜が、気まずそうな表情を浮かべたので、
「明菜さん、どうかしました?」
と尋ねる蒼穹、
「いやなんでもないわ。とにかく行きましょう。
守護神機関や、里美ちゃんに見つからないうちに」
そして瞳の家へと向かう。
何事もなく、瞳の家に着いたが、
「いいとこ住んでるな……」
と修一は言う。
瞳は光弓学園の一般生であるので、富裕層の人間。
故に、その家は立派であった。この街に来たばかりの修一は、
その辺の話は聞いてはいるが、
未だに光弓学園の一般生が金持ちと言うイメージがない。ただその家を見て、
(益々、あのアニメのヒロインみたいだな)
と思う修一だった。
春奈がカメラ付きのドアホンを鳴らすと、インターフォン越しに、
「今行く……」
と返事があり、玄関が開いて真顔の瞳が姿を見せた。
一応、今日行くことは伝えている。
「どうぞ……」
と皆をリビングへと案内する。
家の中は広く小綺麗だったが、人の気配はしなかった。
リビングに向かう途中で、修一は、
「ところで、家族は?」
「一人暮らし……」
とだけ答える瞳。すると春奈は、
「瞳の両親は、仕事で家を空けている日が多いの」
「じゃあ、ウチの親と同じか」
と修一は言い、蒼穹も、
「私も似たような物ね」
と言った。
リビングに行くと、全員ソファーに座り、瞳がお茶を出してくれた。
「それで、ご用件は……?」
と言う瞳。今の彼女の口調だけで、すでにおかしい事で、
その事を含め、問い詰めたいのであるが、
いざ本人を前にすると、みんな尻込みをしているようだった。
先陣を切ったのは修一だった。
「いつまで、変な演技をしてるつもりだ?」
すると瞳は、
「演技?そんな事はしていない。ボクはいつも通り……」
ここで春奈が、
「瞳は、自分の事を『ボク』なんて言わない。
これが演技じゃないなら、あんた誰なの?」
すると瞳は、全員の顔を見渡すと、少し考え込むような仕草をした後、
「まあ、君たちは信頼できるみたいだけど」
と淡々とした口調で、
「ボクの名は、リュミエール。この創月瞳と一体化している」
ここで蒼穹が、険しい顔で、
「まさか、異星人っていうじゃ……」
なおこの街では、異星人も住んでいるが、
数がいなく珍しいうえに、人間にとりつくという話はない。
蒼穹の質問に対しては、
「そうだよ」
すると千代子が笑いながら、
「変な冗談やめてや、いくら変身した姿が宇宙人みたいやからって……」
「ボクは、冗談は苦手だよ。この場を寒々しくしたいなら、
いくらでも披露するけど」
その一言に、険しい表情になる千代子。
そしてここで修一が、
「異星人だとして、君は俺の名前を知っていたのは何故だ」
光の女神が消えた後で、会った瞳は修一の名前を呼び挨拶している。
あの時点から、様子がおかしかったから、一体化していた可能性がある。
「一体化すると、嫌でも相手の記憶を知ることになる」
と彼女が答えた後、修一は確信を突くように聞く。
「君は、光の女神なのか?」
「この星の人間が勝手に読んでいる名前だね。そうだよ」
といった後、
「それにしても君が無事でよかった。桜井修一」
「無事?そういう事だ?」
「降着の際に、慌てていて、君を巻き込みそうになって、転移させた。
咄嗟だったから、うまくいったかは不安だったけどね」
ここで、あの時の転移が、光の女神ことリュミエールの
仕業であることが分かったが、同時に、
あの時リュミエールがいた場所に自分がいたという事。
そして降着時の状況はネットで見て知っているので、
あの場にいたら命がないと思ったので、修一は肝が冷えた。
だが同時に、あの時、側には瞳がいた。それに、彼女が一体化と言っていた。
「まさか創月は……」
その言葉に対し瞳は淡々とした口調で、
「巻き込んだ」
その言葉に、この場はざわつき、
「それじゃあ、創月さんは……!」
と蒼穹が声を上げると、
「今、治療中だよ。その為に、ボクは一体化している」
ここで、修一が、
「罪滅ぼしか?」
と尋ねたので、
「この星の物語とは少し違うよ。まあそういう気持ちもあるけど、一族の掟だよ」
「掟?」
と修一が聞くと、淡々とした口調のまま
「任務の際、戦闘時はやむを得ないとされるけど、
それ以外の時は関係ない高度生命体を殺すなっていう掟だよ」
高度生命体に人類は該当するとの事。
「故意でないにせよ。命に係わるけがを負わせた場合は、
即座に保護して治療しないといけない」
ちなみに治せる度合いは、魔法や超科学を駆使しても治せない手遅れな状態。
場合のよっては肉体が消滅した状態からも治せるという。
もちろんあくまで治療なので、消滅して時間が経つと治すことはできない。
ここで修一は疑問に感じて、
「けど、俺の転移はできて、何で創月の転移はできなかったんだ?」
「咄嗟だったから、転移は一人しかできなかった。
あとボクは女性であるから、同性の方が治療速度も速い」
あとかなり面倒ではあるが、複数人の治療も出来るという。
ここで、蒼穹が
「ところで、アンタが異星人だとして、何の目的でこの地球に来たの?」
「ミューティを、郊外に現れた怪獣を追って来た」
郊外に現れた怪獣、ミューティは宇宙を股にかける凶暴な怪獣。
そして彼女の一族は、特撮ヒーローの如く、
宇宙の平和を守っていて、それを乱す存在なので追っていたという。
「でも怪獣は倒したんだから、アンタの役目は終わったんだよね」
すると気まずそうな表情にする瞳、
「どうして、また戦ってるわけ、
あの蛞蝓とミューティって奴とは関係ないはずでしょしかも、他人の体を使って」
「………」
瞳はうつむいて黙り込む。ここで明菜が
「貴方たちの星ではどうか分からないけど、少なくともこの星では、
その仕草は、やましい事があるって言ってるようなものだけど」
とどこか問い詰めるように言うと、小さな声で
「しくじったんだ……」
と瞳は言う。その声は小さかったが、修一には衝撃的に聞こえた。
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