第13話「空想特撮な日々」

1「怪獣と光の女神」

 メカニサルヴァ以来の怪獣が現れた。

それは休日の事だった数は二体、一体は街中、もう一体は郊外だった

修一は、そのうち一つには郊外の方には関わったが、

もう一つの街中の方は、深く関わることなく夕方のニュースで事の顛末を見た。

どちらの怪獣は50mくらいで、街中は四足歩行、

郊外の方は二足歩行で、どちらも、その見た目は


「どちらも、これでもかってくらいの怪獣だな」


と夕食時、家にて、テレビでニュースを見た時、

そのように修一が称するほど、どちらも凶悪な顔で、

四足歩行の方は、全身が岩みたいな装甲に覆われていて

動く岩山と言う感じだった。

なお尻尾はないが、特撮に出てきそうな怪獣である。

そして口から火を吐いたり、周囲に岩のような物を飛ばしたりして、

大きな被害をもたらした上に、装甲の硬さに苦戦したものの、

冒険者や、魔法少女たちを含めた正義の味方の総力戦で倒した。


 郊外に現れた方は、固い装甲に覆われて無くて、生物的だったが、

全体的にはグロテスクで、 全身が筋肉質で、

尻尾は刺々しく鞭のようにしなる。

こちらも特撮に出て来る典型的な怪獣と言う感じだった。


 郊外の方は、街中の怪獣が先に出現したこともあって、

対応に遅れていたが、郊外なのと思いのほか早く事が済んだので

被害は少なかった。


「それにしても、あの光の女神は一体?」


と修一はテレビを見ながらつぶやいた。


 最初の怪獣が出た時、修一は母親からのお使いで、

郊外にいた。母親の知り合いに届け物をしたのだ。

その帰り、ゲート警報が発令し、

その後、防災行政無線で怪獣出現の一報を聞いた。


 街中に現れた怪獣は、何時ものようにゲートから出現した。

修一は、自家用車は功美が使っていたから、電車を使ってきたので、

怪獣出現につき、ストップしてしまい。


(しばらく足止めだな)


駅にて、その旨を聞いて、そんな事を思った。

なお赤い怪人やそれが呼び出すバイクを使う気になれず、

自販機でジュースを買ってベンチに座って飲みながら、

事が終わって電車の再開を待った。


 そんな中だった。大きな揺れが辺りを襲った。


「地震!」


と声上げる修一、なお緊急地震速報はない。

そして山の方を見ると煙が上がっていた。


「まさか、爆発か……」


その直後、


「グォォォォォォォ!」


と言う雄叫びのような声が聞こえた。

丁度、煙が上がっている方からだった。


「まさか……」


と修一は呟く。そして彼は、いつもの好奇心と言う病気で襲われ、

急いで現場の方に向かった。そして山に入り遠目であるが、第二の怪獣を確認した。


「やっぱりか……」


ゲート警報は出ていないものの、

あの雄叫びから、怪獣がいると思ったのだ。


 引き続き、好奇心に駆られた修一は、全てを記録すべく、

スマートグラスを身に着け、そこについているカメラを起動させた後、

更に現場に使づくが、


「げっ!」


思わず身を隠す。彼は現場に走っていく創月瞳の姿を見たからである。

恐らく、魔法少女として怪獣退治に向かう途中なんだろうが、

彼女に関わりたくない彼はとして、身を隠してやり過ごそうとした。


 そして彼女は、修一に気づいていないのか、

もしかしたら気づいていても、彼なら大丈夫と思ったのか、

足を止めて、例のステッキ上の変身アイテムを取り出すと、

左胸に当て、


「マジカルジュエル……」


と言いかけたその時、修一の目の前が真っ赤になった。

赤い光に包まれたような感じだ。

何が起きたかは分からない。


 そして光が収まると、


「何が……」


周りを見渡す修一、ただ周囲に砂ぼこりが漂って、視界が悪い。

やがて晴れて来ると、


「何だあれは?」


そこには第二の怪獣と、立ちふさがる銀色の巨人がいた。

その巨人の体型は女性的で、顔も女性のようで、

髪の毛のようなものもある。当然瞳が変身したイクシードではなかった。


「まるで、光の女神だ」


思わずそんな事を口走っていた。


 その光の女神は怪獣と戦いを始めた。

怪獣と取っ組み合いとなった後、格闘戦を始める。

女神は、怪獣の攻撃を回避とかはせず、全て受け止めているが、

全くものともせず、だからと言ってされるがままではなく、

こちらも、パンチやキックや繰り出す。


 戦いは激しさを増す。怪獣は本能に赴くままの戦いであるが、

女神の方は、なかなか洗練された動きで、

以前のイクシードの戦いをほうふつさせる部分があるが、


(戦い方は、イクシードに似てるが、向こうの方が上と言うところか)


と修一は思った。

そして、以前と同じように特撮を見てるようで

妙にワクワクを感じる修一。


 そして、強力な蹴りで怪獣を吹き飛ばした後、

両手を前に伸ばし掌を交差させる。

その掌に光が集束する。


(おいおいまさか!)


彼の想像通り、女神は怪獣に向かって光線を撃った。


 その光線は、まっすぐと怪獣に向かっていき命中。

怪獣は苦しみながらも、抗うように女神の方へと向かっていく。

そんな怪獣に向かって、放たれている光線は、更に強く輝く。

怪獣は余計に苦しそうにし、やがて動きが止まると、

怪獣は爆散した。


 この状況に、修一は思わず。


「すごい……」


と言う。怪獣が倒されると、光に包まれ女神は姿を消した。


「消えた……」


と修一だが、ここでハッとなったように、周りを見渡し、


「ここは一体?」 


そう最初に、居た場所に違うように思えたからだ。

もちろん初めて来る場所だから、気のせいとも思えたが、


(さっきの赤い光に包まれて、違う場所に転移した?)


とそんな事を感じていた。


 その後、山は複雑な道じゃないのと、

帰る途中、同じように怪獣を見に来ていて、

帰って行く野次馬もいて、人々についていく形で、

山を下りていき、下山したところで、


(そういえば、創月は?)


あまり関わりたくはない相手であるが、

あの時、近場にいたはずなのに、姿が見えないので、

気になった。加えて彼女は変身しようとしてたのに、

変身することなく、現れたのは別の存在だったことも、

引っかかっていた。


 ともかく気になった修一は、急いで山に戻ろうとしたが、

山に入るタイミングで


「創月……」

「………」


瞳とばったり会った。しかし彼女は、無表情と言う感じで、


「桜井修一……こんにちは……」


と挨拶してきたので修一は思わず、


「こんにちは……」


と返す。すると彼女は、以降何も言わず、

修一の横を通り過ぎ去っていった。


 その様子に、


「んっ?」


と修一は声を上げる。


(なんだかいつも違うような)


彼女は、会うたびに意地の悪そうな笑顔であるが、

今日は、そんな表情ではなくて、雰囲気も別人みたいだったが、


(また変なことを考えるんじゃないだろうな)


修一の病気も出ていないし、それ以前に、

彼女には、あまり関わりたくないので、

追いかけて、話を聞くというようなことはせずに、

そのままにして、修一は駅に戻った。


 そのまま、電車が再開されるのを待っていたが、

途中で、母親の功美から電話があり、


「今、どこにいるの?」


と聞かれ、まだ郊外の駅にいることを伝えると、


「じゃあ、迎えに行くわ。電車もバスもしばらく動きそうにないから」


という事で、功美が迎えに来て、そのまま家に帰った。


 家に帰る道中、修一は助手席に座っていたのであるが、


「修一は、怪獣と巨人は見た?」

「もう話題になってるの?」


と聞くと


「ネットは早いわよ」


恐らくすぐに、消されるであろうが、ネット上に怪獣と、

巨人と言うか光の女神の動画が上がっていた。

修一以外にも、あの様子を見ていた人間がいるのだ。


「それで、どうだった?」


と聞く功美に、


「どうと言われても、特撮を見てるみたいで、

凄かったとしか……」


と答えるだけだった。


「それにしても、今日は大変な日ね。

街中と郊外に同時に怪獣が現れるなんて」


なお修一を迎えに来た時点で、街中の方の怪獣も、

ボランティアの冒険者と、正義の味方達によって、

倒されていた。ただその余波で、

交通機関はまだストップしたままだったが。


 そして功美は、


「しかし、郊外に現れた巨人は、味方か、

あるいは敵なのかしら」


と言うので、


「俺は、味方だったらいいな」


と修一は答えた。


 その後は、家にまっすぐ帰り、その日は功美が夕食を作った。

そう夕食時、テレビで今日の怪獣に関するニュースを見た時、

功美もいたのである。


 同じように夕食を食べながらニュースを見ていた功美は、


「ネットで見たんだけど、今日は郊外にはゲートが発生してなかったのよね」


過去のゲートの発生の記録は、把握されてる限りであるが、

発生場所や時間が記録されている。


「あれだけの怪獣や巨人が現れたのなら、大きなゲートが発生したはずだから、

記録が残っているはずなのよね。それはなかった」


実際、怪獣出現の前に郊外にはゲート警報が発令していない。


「まあ、怪獣の方は肉片が回収されてるから、

そこからゲート反応が出るかもしれないけど」


修一は、真剣な面持ちで、


「母さん、何が言いたいの?」

「もしかしたら、怪獣も巨人もゲートから来たんじゃないって事?」

「それじゃあ、どこから?」

「それはわからないわ」


功美は両手を広げ、分からないのポーズをとる。


 功美の言葉を聞いて修一は、


(ゲートから来たんじゃないとすると……)


あの時の事を思い出す。怪獣が現れた時は、地面が揺れて、

煙が上がっていた。爆発が起きたのは間違いない。

しかし爆発の原因は何か?


(まさか、空から……)


修一はその瞬間を見ていないから、推測であるがそう思った。

直ぐに、ネットの情報からそれが事実であることを知る。

それは怪獣だけでなく、光の女神も同じである事。

そしてこのことをきっかけに、起きる出来事に、

修一は巻き込まれていくことになるのであった。

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