4「真実を知るために」

 月曜日が来て、先日の事があるから、

秋人と恵美は妙にぎくしゃくした感じになっていた。

席が隣同士だから、それがよけいに目立った。


 そして昼休みの事、屋上にて秋人は、先日聞けなかったことを聞いた。


「鳳介君は、妙に恵美さん肩入れしてる気がするけど、何か知ってるの?」


すると、彼は、


「知ってるというよりも、推測だ……」

「推測?」

「確証はないし、得るためには、手間がかかるし……違っていたら、

相手にかなり失礼なことになる……」


と言うので、


「間違っていても、文句は言わないから教えてくれないかな、その推測を」


と秋人は言うが、鳳介は、


「俺が話したことで、失礼な行動をとられたら……

俺も責任を感じざるを得ないから、言えない……」


と言って、頑として言わず、


「とにかく、今は、おとなしく待つことだ。桜井は必ず帰ってくる……」

「でも……」


と納得できてない様子だったが、


「お前、言ってたよな……誰にでも秘密があるって……

それに、何か問題でもあるのか……?」

「えっ?」

「例えば、彼女が、正体を暴いて、裁きを下すほど悪いことをしているのか……?」

「いや、そんなことは……」

「むしろ、人を助けてるんだろ……」


赤い怪人の事や、浮島に関わる事は抜きにしても、

魔獣軍団との戦いなど、恵美の活躍については、鳳介は聞いていた


「だったら、お前のやってることは、いたずらに秘密を暴いているだけだ……」

「!」


その一言を受けて、驚いた顔をして、何も言えなくなる。

秋人にだって、自分が鎧の魔王であることは、探られたくはないし、

鳳介の言う通り、探らなきゃいけないほどの悪事をしてるわけでもない。


 そして鳳介は再度、


「とにかく、今は、彼女の言葉を信じて待て……」


念押しする様に言った。


「わかったよ……」


と言って以降、恵美の事は話題にしなかったが、

納得ができているわけじゃなかった。

秋人が知りないのは、下賤な好奇心からじゃない。

あくまでも修一や、敷いては恵美を心配しての事。

二人を想っての事であるからだ。


 この後、鳳介と別れて、廊下を歩いていたが、


「有間君」

「蘭子さん……」


突然、木之瀬蘭子に声をかけられた。この時、イノも一緒にいた。

そして秋人には、風も吹いていないのに、

蘭子の前髪が、靡いているように見えた。


「ねぁ、あなた、桜井君の事、気になるわよね?」

「ええ、まあ……」


すると彼女は、不敵な笑みを浮かべ、


「だったら、確かめてみましょう?今晩、天海さんの家に集まりましょう」


どうして、天海蒼穹の元に集まるのかわからなかったが、

一応、桜井修一の家でもあるから、何かあるのかと思い、了承した。


 その日の夜、玄関先で、


「こんなに、人が来るなんて、聞いてないわよ」


と不機嫌そうに言う蒼穹に、蘭子は


「いえ、予想外に増えてしまいまして」


この時、蒼穹の元に、蘭子、秋人、零也、メイ、イノ、

現視研の部長(パワードスーツなし、口にマスクを着用)、

愛梨、春奈、麻衣、真綾が来ていた。

蒼穹は、蘭子から事前連絡は受けていたが、

これだけの人数が来るとは思わなかったのである。


「ところで、あなた達には声をかけてはいないのですが」


やってきた面々は蘭子が誘ったのだが、

愛梨以下の四人は、声をかけてさえいなかった。


「あーしは、アンタを信用してないから、しかもスーツを着てくるなだし」


と愛梨は、蘭子を睨みながらいう。春奈たちは、


「私たちは、長瀬さんに誘われて……」


そして真綾は、


「私は、零也から話を聞いて」


因みに蘭子は、零也の連絡先は、知らなかったので、

秋人に頼んで連絡を入れている。

そして連絡を受けた時、零也と真綾は一緒にいて、彼から話を聞いていた。

なおこの時二人が何をしていたかは定かではない。ともかく話を聞いた彼女は、

桜井修一の従姉である恵美に、興味を抱き付いて来たのであった。


 取り敢えず、蘭子たちは中に入り、二階に向かう。すると、


「お客さんがいっぱいだね」

「「創月!」」


二階には里美の他、創月瞳の姿があったので、

思わず声を上げる零也と真綾。

蘭子たちが来る前に、突然やって来たという。


「あら、あなたは呼んだ覚えはありませんが」


と言う蘭子に対し、


「いやあ、面白い話をきいてね。来ちゃった。

私も桜井恵美には興味があるんだよ~」


一方、


「気を付けてたのに~」


と悔し気な真綾。恐らくは零也と真綾の会話を聞かれたものと思われる。


 さて瞳がやって来たことに蘭子は、


「まあ、いいでしょう」


と受け入れるも、蒼穹は、


「ところで蘭子、この二人誰?」


部長と愛梨とは、初対面なので尋ねると、


「桜井君が所属する部活の部長と、副部長です」


二人を紹介した。すると零也が、


「部長って事は、貴女が鋼のスケ番!」

「いま、その名で呼ばないで……」


と顔を赤くし、弱弱しい声で言った。今いる現視研の部員と、

蘭子以外は、びっくりしていた。

なんせ、パワードスーツを着ている姿しか見たことが無いからである。


 ただ大勢の人に正体を、ばらす結果になったので、


「ちょっと、アンタ!」


と蘭子に向かって怒号を上げる愛梨。


「いいの……蘭子ちゃんは、間違った事は言ってない。

私は現視研の部長で、愛梨ちゃんは副部長……」

「そうだけど、正体が……」

「私はいいから、こんなところで、騒ぎを起こさないで……」


と怒る愛梨をなだめ、


「全く、部長は蘭子ちゃんに甘いんだから……」


と愛梨はいったん矛を収めた。


 そして、蘭子は、


「じゃあ早速、長瀬さん、お願いしますわ」


メイは頷き、床をジッと見つめている。ここで真綾は、


「サーチを使ってるわね」


すると蘭子は、


「さすがサイボーグですわね。わかりますか?」

「まあね」


と言いつつ、


「サーチで恵美って奴の動向を探るわけね」

「はい」


と答える蘭子。そして、以前、この家でメイがサーチを使い、

倒れていることを知っている真綾は、


「エラーを起こさない様に気を付けなさいよ」

「大丈夫……」


とだけメイは答えた。


 そして、


「お風呂に入った。今がチャンス……」

「では行きましょう。皆さん」


蘭子に促され一階に向かう一同。この時、蒼穹は嫌な予感がしていた。

そして一階につくと、居住空間への鍵のかかっているだろう扉を前にして、

メイは、ピッキングをしようとした。


「ちょっと、待ちなさい!」


蒼穹が制止し、メイはあっさりとやめるが、


「開いてる……」


彼女の制止に従ったわけではなく、必要なかっただけだった。


「では急ぎましょう」


と言って部屋に入っていく蘭子。無言で入っていくメイ。


「ちょっと待って、蘭子ちゃん!メイさんも!」


と声を上げる部長だが、今の彼女には止められないイノは、


「蘭子さん、まずいですよ」


と言いつつも、追っていく。


「木之瀬さんに、仕切られるのは癪ですが」


と言いつつ部屋に入っていく里美。


「待ちなさい里美!」


蒼穹は止めよう里美を追う。


「急がないとね」


と言いながら、入っていく真綾。


「おい!真綾!ちょっと待て」


制止しようとするも後を追って入っていく零也。


「なんだか楽しそうだねぇ~」


と言って入っていく瞳。


「ちょっと瞳!」


止めようとあと追う春奈と麻衣。そして覚悟を決めたような表情で、

先の面々に続いて、部屋に入っていく秋人。


 そして、入って行った面々は、恵美の秘密を探るという名目で、

彼女が風呂に入っている間に、一階の物色を始めた。

そして止めようと入って行った面々も止めようとするも、居住空間に入った状態。

この時、居住空間に入らず、廊下にとどまったのは、部長と愛梨だけだった。





 一階を物色している里美は、


「ここ奴の部屋ですね」


と修一の部屋に入っていく。中は無人で綺麗にかたずけられている。


「止めなさい。里美、早く戻るわよ」


と言いつつも部屋に入っていく蒼穹、

口では止めようとしているが、内心は彼女も恵美の事知りたいと思っていた。


(こんな事をしても青い怪人の事は分からないけど)


と思いながらも、部屋の捜索を始める里美を見ていた。

その時、偶然机の上に乗っているカードに気づいた。

気になって、それを手に取り、じっと見る。


「えっ!」


と声を上げる蒼穹。そのカードには恵美の真実が記されていた。

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