15「対決、サキュバス(2)」
一旦間合いを取った後は、先ほどと同じく。
少しの間、サキュバスは動かなかったが、突如として、
その手に巨大な剣が出現し、それを手に襲い掛かってくる
「!」
三人は、最初に一撃を避ける。剣は巨大であるが、サキュバスは軽々と振り回す。
避けてから反撃に移ろうと思っていたが、
相手は、攻撃を止めずに連続で斬りかかってくるから、
修一達は、避けるだけで精いっぱい
(こいつ……またさっきより強くなってないか?)
さっきも遠距離攻撃に切り替えただけじゃなく、
力自体が強くなっている様に感じた。
さっきは宙に浮いているだけで、ほとんど動かなかったから分からなかったが、
今は、明らかに最初よりも動きが速くなっており、 また攻撃力も増していた。
更にようやく隙見て、修一達は遠距離攻撃を仕掛けたが、それも剣戟で弾いていく。
「まさか俺たちの力を吸って強くなっているのか」
「そうだと思うよ」
ただ、幸いと言っていいのか、
さっきまで使っていた光線や属性攻撃は使ってこなくなった。
しかし、その分、剣戟が凄まじいから、状況が悪くなっているのは確か。
(アレも、剣戟で弾く可能性があるな)
更に、秋人は、
「もしかして、コイツの僕の……」
と言いかけて、
「いや、僕はここまで強くない……」
とつぶやいた。それを聞いた修一は、
(そういや、秋人は、剣道が得意だったな)
秋人に嚙みついてから、剣を使うようになったことを考えても、
噛みついた人間の力をコピーするとも考えられるが、
ただ修一は、実際に竹刀をふるう所は、見てないので、何とも言えないし、
(俺は、気弾は使えるけど、あんな攻撃はまだ使えないぞ)
ただ、一度衝撃波を使っているので、修一も同じ事が出来るから、
もしかしてという思いはある。
そして敵の斬撃を避けながら、
(いや、俺たちの生命エネルギー的なものを食って、
強くなっているのと、攻撃パターンを変えてるだけだ)
と思う修一。
加えて秋人が不安気な表情を、浮かべていた。
敵が強いからと言うだけじゃなくて、
(魔王の鎧が出て来るのを恐れてるのか)
このまま秋人が危機的状況になれば、魔王の鎧が彼を守るために出現する。
修一は知っているから、問題はないが、
しかしナタリアに、秋人が当代の「鎧の魔王」だと知られてしまう事になる。
あまり魔王である事は、人様に知られたくない事だから、
秋人は、不安を感じてるようだった。
(まあ誰が何と言おうと、俺は秋人を勇者だと思ってるけどな)
と修一は、そんな事を思うのだった。
そして、サキュバスの剣がナタリアに迫り、
彼女の両腕からは刃物のような物が飛び出してきて、
それで、剣を受け止めたが、辛そうにしている。
この状況に、秋人の魔法攻撃の援護の元、
修一はメタモルブレードを、本来の剣形態に変形させ、助太刀しようとした。
だがサキュバスも転移で姿を消し、次の瞬間、修一の側に現れ、
剣を振り下ろしてくる。
(!)
修一はメタモルブレードで剣を受け止めた。
金属がぶつかり合う音がする。受け止めたものの敵の剣は重く。
かなりきつかった。だがここで、
「加勢するでぇ」
とナタリアがやって来て、腕から飛び出た刃物で、サキュバスを切りつける。
更に、秋人の攻撃魔法による援護攻撃が行われる。
なお、弱点属性はまた変わったのか、水系の魔法が、効きづらくなっているようで、再度、弱点属性を攻撃をしながら、探っているようだった。
サキュバスは、秋人とナタリアの援護を受けても、
中々怯むことはなく、修一とは鍔迫り合いをする状況が続いた。
「クッ……!」
先も述べたが、きつい状況は益々ひどくなっていく。
そんな時だった。分析の結果が出たのである。
(えっ、失敗……)
分析の結果自体は、失敗だった。完全分析が出来なかったのだ。
でも代わりに、時間は掛かったものの能力名が分かった。
(ジェミニ……)
つまり、このサキュバスは、誰かの分身、ジェミニと言う事になる。
ただ、麗香もジェミニを持ってるから、彼女のものと言う可能性もある。
更に直後、
【『ジェミニ』解放】
という言葉が頭に響き、
「何やこいつ!」
「超人!」
とナタリアと秋人が口々に言った。
突如として、マスク姿の大柄でムキムキの女性が現れた。
その女性の格好は腕と足は白、胴体は赤いぴっちりとしたボディースーツを纏い、
両手には、ピンク色の手甲に、同色の鉄製に見えるブーツ。
顔にマスクを着けているのは前述の通りだがそれは白く、
鋭い目を思わせる部分があるというデザインでマスクの後ろからは、
長い髪のような物が見えた。
(なんだか、女子プロレスレスラーだな)
と思う修一だった。
その超人は、サキュバスをぶん殴った。
するとこれまで、秋人、ナタリアの攻撃でも怯まなかったのに、
今回は、大きく怯んで、
「キシャァァァァァァァァァァァ」
と声を上げながら、吹っ飛んだ。そして超人は、向かっていき追撃として、
接近し、その拳で、ボコボコにいていく。
秋人は、
「何なんだ。あの超人は……」
「………」
修一は何も言わないが、彼には、本能的にわかっていた。
あれが自分のジェミニであることを、
なおジェミニは、一目でそれだと分かる者はなく。
本人は、修一の様に本能的に分かることが多いが、
中には本人でさえも分からないと言う場合がある。
ここで修一は、
「なあ、ジェミニを破壊すると本人に何か影響は出るか?」
「しばらく使えなくなるくらいで、それ以上の影響はないけど」
と秋人は答えつつ、
「何でそんな事を、聞くの?」
と聞いてきたが、返事をせずに、
(じゃあ、遠慮はいらないな)
と思った修一は、ジェミニに離れるように念じた。
なおジェミニのコントロール方法は、本能的にわかった。
そしてサキュバスの方に手を向け、
「バーストブレイズ……」
だが
「えっ?」
何故か発動しなかった。
代わりに、ジェミニがサキュバスの方に手をかざし、
バーストブレイズを放った。
放たれたバーストブレイズは、かなりのダメージを与え、
サキュバスは苦しそうに、
「キシャァァァァァァァァァァァ」
という咆哮を上げるが、その威力は、以前に使った時よりも、
強く感じだ。
「なんや、あの超人、すごいなぁ」
とナタリアは驚嘆の声を上げるが、
「なんで、あの超人、バーストブレイズを」
秋人も驚きつつも疑問を感じているようだった。
「なんでだろうな」
と呟く修一、惚けているわけではなく、本気で分からなかった。
サキュバスは、剣を手放し、再び地面に膝をついた。
なお以前よりも、ボロボロである。
(よし、今度こそ)
ジェミニに攻撃を任せている間に、準備を整えていた。
その一環として修一の手にはDMXが握られていた。
「その銃は?」
と秋人は言う。彼はDXMを見るのは初めてだ。
急ぐので、説明している暇はなかった。さっきまでの様に、誰かに噛みつかれたら、
またやり直しの様な気がしたのだ。
(既に必要な弾丸に設定している……)
逸る気持ちがある中、修一はサキュバスに狙いを定め、引き金を引いた。
発射された弾丸ぼんやりと輝いていて、
真っすぐにサキュバスに飛んでいき、丁度胸のあたりに命中した。
するとサキュバスはピンク色のオーラに包まれて、
大きく口を開けたが、咆哮を発することは無く、
一瞬、別の女性の姿になったと思うと、そのまま消滅した。
すると、ナタリアは、
「何や、今の?つーか、そんな武器があるなら、何で、はよ使わんかったんや!」
「弱らせなきゃ、意味がないんだよ。普通に撃っただけじゃ、
大したダメージがないしな」
ここで、秋人は
「今弾丸は、一体?」
と尋ねたので、修一は答える。
「あれは除霊弾、怨霊を倒すための弾丸だよ」
実は亮一から聞いた方法と言うのが、
この除霊弾でトドメを刺す事だった。亮一は、
「普通に倒しただけじゃ、魔物化した人間は救えない。
だけど、除霊弾でトドメを刺せば、生きたまま人間に戻すことができる」
亮一は、DXMの事、それを修一の家にある事を知っていて、
その弾丸はDXMから発射できること、
この事実は偶然発見したことを聞いた。
「もし、相手を殺すことにためらいがあるなら、
それを使えばいい。ただ命は助かるが……」
完全に無事と言うわけにはいかないとの事。
ただ相手が、消滅したのを見て
(相手は、魔物じゃなくジェミニだったな)
トドメは除霊弾でと、考えていたせいで使ってしまっただけで、
実際は意味がなかったと思われた。
ここで秋人がハッとなって、
「結界が消えそうだ。元の姿に戻った方がいいよ」
「せやな」
元の姿に戻るナタリア、変身体は、変身露出狂として、
有名になってしまったので、隠す必要があった。
そして、今度はナタリアがハッとなったように、
「さっきの超人は?」
「そういや居ない」
と言って周りを見渡す秋人。すでにジェミニは解除しているので、
その姿はどこにもなかった。
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